ニューノーマルのサラリーマンの生き方指南

上司が尊敬できないから辞めたい?そんな40代は転職前に田中角栄から学べ!

戦争を経験された方々は、命の尊さ・戦うことのむなしさを知り、敗戦後にゼロから日本を復活させた尊敬に値する存在です。

戦争で亡くなられた方々の無念を心に刻み、泣き言を言わずに日本を経済大国に成長させてきた、

いわば「人生の上司」と言えます。

しかし、夜の街を見渡せば、上司や部下の愚痴・芸能人のゴシップで一日が終わるような、残念な人を見かけたことがあるかもしれません。

仕事を進める上ではガス抜きも必要ですが、中には「上司が尊敬できないから辞めたい」などとうそぶいたり、そのような理由で転職を考えたりする人も少なからず存在しています。

一歩引いて見れば、自分以外のすべての人が尊敬すべき対象となっておかしくないはずなのに、人間は浅はかにも自分のものさしで物事を判断しがちです。

もし、あなたもそのような日常に嫌気が差したことがあったなら、一度「田中角栄」という人物について、あらためて調べて欲しいと思います。

田中角栄は、おそらくは戦後最大の人気を誇る政治家であり、1947年に初当選した後は党幹部・閣僚を歴任し、1972年に第64代内閣総理大臣に任命されました。

ある時は国民の代弁者として、ある時は国民に寄り添って、様々な政策を実現した人物として知られています。

残念ながら、疑惑だらけのスキャンダル「ロッキード事件」によって、その政治家生命を絶たれる結果となりましたが、その人柄・能力は誰もが驚嘆するところです。

この記事では、そもそも「上司が尊敬できないから辞めたい」という理由が正当なものなのかを検討しつつ、稀代の政治家・田中角栄氏にスポットを当てて、上司が原因で会社を辞めたい40代がビジネスパーソンとして知っておきたい考え方をご紹介します。

上司に限らず、会社・部下などへの不平不満から転職を考えたことが一度でもある方は、ぜひお読みください。

「上司が尊敬できないから辞めたい」という意見は正しいのか

会社員として一つの会社でキャリアを積んでいくと、ある段階から誰かの上司になる機会が与えられます。

事業規模や組織体制によっては、必ずしもそうなるとは限りませんが、まったくチャンスがないケースは少ないでしょう。

しかし、それよりももっと早い段階で、会社員は「上司」という存在に悩まされるものです。

時には、上司の存在がストレスで体調を崩してしまうこともありますから、上司が尊敬できない・信用できないから辞めたいと考えるビジネスパーソンがいても、それ自体は決しておかしなことではありません。

一方で、上司に対する尊敬うんぬんだけで退職を検討することは、視野の狭い考え方だという意見もあります。

まずは、この点について、それぞれの意見を少し掘り下げて考えてみましょう。

  

正常な対処法だと考える意見

2019年に株式会社ワークポートが行った「上司との関係に関するアンケート調査」によると、およそ70%の人が現在の上司を尊敬できないと回答しています。

具体的なエピソードとしては、以下のようなものがあげられます。

  • 上司が話を聞いてくれない(部下の意見を聞かない)
  • 自分の保身しか考えていない(自己中心的)
  • 気分によって態度が変わる(感情的)

それを踏まえて、上司が尊敬できないという理由から会社を辞めることを肯定する意見としては、以下のようなものがあげられます。

  • 常に心の中で反抗しながら仕事をしなければならない
  • 思いを言葉にできないストレスと戦いながら、日々を過ごさなければならない
  • 結果的に働く意欲を失い、体調を崩してしまうおそれがある
  • 上司の失敗について、いつか自分が責任を負わされるリスクがある

つまり、上司の存在によって自分が何らかの損失をこうむる前に転職した方が、自分の人生をトータルで見た時にプラスに働く、というわけです。

組織としては、やはり相応のキャリアがあるからこそ特定の人物を役職者として選任するわけですが、人間には個性がありますから、すべての人にとっての最適解にはなり得ません。

また、自分が上司になった時、すべての部下を平等に見ることが難しいのも、当然と言えば当然のことです。

そういったミスマッチを解消する上で、確かに転職は手っ取り早い解決策の一つではあります。

ただ、すぐに転職を判断するのではなく、他の選択肢も視野に入れた上で決定すべきところではあります。

  

不適切な理由だと考える意見

上司が問題で転職するという考えを良しとする意見がある一方で、逆に「上司の存在を転職のモチベーションにするのは不適切だ」と考える意見もあります。

具体的には、以下のような意見があげられます。

  • 新しい会社に転職しても、自分と合わない人間は必ずいる
  • 環境主体ではなく、自分主体で転職を考えるべき
  • 自分が上司の全体像を把握できているわけではない

これは、役職者同士の関係でも同様に言えることで、下の役職から上の役職の全容が見えるわけではありませんから、その点においてこれらの意見は的を射ているかもしれません。

また、こちらも株式会社ワークポートが行ったアンケートになりますが、上司の立場だったら自分は優秀な部下だと思うかという質問に対しては、およそ65%が「いいえ」と回答していることが分かっています。

そのように思う理由としては、以下のようなものがあげられます。

  • 目標を達成できていない(仕事の成績や成果)
  • 上司の言うことに常に従っているわけではない(上司との関わり方)

このことから、上司のことを責めていながらも、自分自身は優秀な部下ではないという自覚を持っている会社員は、比較的多いということが分かります。

すべてのケースで当てはまるわけではないものの、上司だけに責を求めるのは、あまり賢い判断とは言えないのかもしれません。

  

自分にも同じ質問を投げかけてみる

会社員としてのキャリアが長くなるにつれて、自分のやっていることを疑う機会は少なくなってくるものです。

勤続年数の長い会社員は、キャリアを重ねるうちに「誰かの上司であり、誰かの部下である」状況を経験するため、身動きが取れない状況に遭遇します。

40代以降になれば、会社のしがらみから抜け出すのが難しくなることも十分考えられます。

そのような中で、退職・転職という判断に至ることは、果たして正しいのでしょうか。

自分が課長・係長クラスの役職者だとして、次長・部長のやり方が気に入らないから転職するという考えを持ってしまうことは、20代で会社に見切りをつけることとは意味が違います。

年齢を重ねてから、上司に対する不満を理由に転職する場合、慎重に判断すべきです。

特に、部下を複数人持っている人は、どうしても周囲の評価や市場価値を高く見積もってしまうおそれがあります。

転職エージェント・キャリアアドバイザーなど、第三者の意見を受け入れる体制をととのえておかなければ、後々になって後悔するかもしれません。

上司との人間関係から転職を検討する際は、自分にも同じ質問を投げかけてみましょう。

自分が部下としてふさわしいか、上司としてやるべきことができているか、しっかり自問自答した上で決断すべきです。

  

上司が尊敬できないだけで転職するリスク

上司を理由に転職を検討することは、つまるところ「目の前にある問題を解決しようとするため」に転職すると言い換えることもできます。

そのような考え方の是非はともかく、単純に上司が尊敬できないだけで転職することには、それ相応のリスクもあります。

以下に、考えられるリスクをいくつかご紹介します。

  

おそらく「尊敬できない上司」はいたるところにいる

多くの人が上司に不満を持っているということは、どの会社に移ったとしても、何らかの形で上司に不満を持つ可能性が高いことを意味しています。

また、自分自身がすでに上司であるなら、部下に何らかの形で不満を持たれていることを疑った方が賢明です。

結局のところ、今いる環境に対してNOを突きつけたつもりでも、自分自身が新たな環境に満足できるとは限りません。

上司とのやり取りで不満・ストレスを抱えた時の対処法を編み出そうと試みるなど、自分なりに努力した上で関係改善が見込めないことを自分が認識していなければ、また同じ失敗を繰り返すかもしれません。

自分も相手も同じ人間であり、いつでも相性の良い相手と巡り合えるわけではありませんから、上司に尊敬を求めること自体が難しいのが現実です。

パワハラ・モラハラなど、無視できない何らかの実害が生じた場合を除いて、人間関係を主とした理由をベースに転職を考えない方がよいでしょう。

  

人によって成長の度合いは違う

転職して間もないのか、それとも勤続10年以上なのかなど、勤続年数はキャリアを確認する上で多少は参考になる情報です。

ただ、同じ年数の中で経験できる職務は、残念ながら平等ではありません。

同じ40代を例にとっても、片方は役職者・片方はヒラというケースは往々にして存在しています。

時に、同僚や部下の心ない一言から、自分の無力さを感じることもあるでしょう。

しかし、人間の成長はある年齢から止まってしまうものではなく、年代を問わず努力次第で成長は可能です。

ケンタッキーフライドチキン(KFC)の創業者であるカーネル・サンダースは、1952年にKFCをフランチャイズ化した時、なんと62歳でした。

関連記事:40歳を過ぎてから大成功した24人…GAP、カーブス、森ビル、KFC、ハフポストもそうだった 

あなたにせよ、上司にせよ、部下にせよ、同僚にせよ、どこで花咲くかは誰にも分かりません。

今の自分から見て残念な上司であっても、ある日あなたにとって欠かすことのできない恩人になる可能性は、0%ではないのです。

もちろん、あなたが上司から尊敬される立場になるかもしれません。

今の状態から他者を評価するよりも、自分の成長に集中した方が、後悔は少ないはずです。

  

会社全体の人間関係に問題があるなら別の話

自分と上司との間の人間関係に問題があることを認めながらも、その他の面では順調に物事が進んでいるなら、転職を再考する価値はあります。

しかし、上司も含め「部署・会社全体の人間関係」に問題があると判断した場合、近いうちにその会社から離れることを選択した方がよいでしょう。

比較的事業規模の大きな会社で働いていると、一部に「組織に守られている」社員を見かけることがあります。

一般常識から考えると明らかにアウトでも、長年その会社で働いているアドバンテージによって、それが「個性」として容認されている場合が該当します。

さすがに、現代では法整備が進んでいることもあって、露骨なパワハラ・セクハラは避けられる傾向にあるものの、中にはまだ、頭の中が古い時代で止まっている残念な社員が見つかるかもしれません。

比較的若年者が中心の会社であっても、企業風土によってはパワハラ・セクハラが事実上容認されているケースもあることから、あまりに現代の事情とかけ離れている社風の企業だと感じているようなら、早めに離れることをおすすめします。

 

もし「田中角栄」だったら、どう考えるだろう

上司の存在「だけ」で転職を考えることは、必ずしも自分にとって有利に働くとは限りません。

その一方で、上司と時間を共有することで、人生の損失があまりにも大きく感じられるようなら、いったん距離を置ける方法を模索した方がよいでしょう。

ただ、自分が苦手とする上司と仲良くやっている人がいるとしたら、その人が持つ性質を学ぶことには価値があります。

人との接し方・距離の取り方・人生哲学など、自分にはないものが見つかるかもしれません。

もし、自分の近くに参考にできそうな人物がいない・尊敬するに値しない人物しかいないと考えてしまった人は、あえてもっと遠くに視点を飛ばしてみましょう。

高等小学校卒業という学歴ながら、幾多の艱難辛苦を乗り越えて総理大臣となった田中角栄氏に目を向ければ、ほとんどの人がどこかしら自分にないもの・尊敬できるものが見つかるはずです。

続いては、書籍・田中角栄新名語録より、田中氏の人に対する考え方・物事のとらえ方について、ビジネスパーソンに役立つであろうものを抜粋してご紹介します。

人を大切にするという観点から見れば、田中氏からは日本人として最高レベルの知見を学べるはずです。

 

とにかく「人」を大切にしていた

田中氏の人柄を一言で表現すると「情に厚い」人物だと言えます。

党派を超えて協力し合うところは協力し合い、助けるべきと判断したら迅速に行動していました。

田中氏は、若手議員によく以下のようなことを言っていたそうです。

何事も相手に対して手を抜くな。誠心誠意、全力投球で向き合うことだ。それが最大の気配りということだ。真の信頼関係はそうした中から生まれる。

※出典元:新田中角栄名語録

これはもちろん言葉だけではなく、田中氏は実際に行動に移していました。

初当選を果たした代議士が、当時の自民党の各派閥にあいさつに回ったところ、他の派閥があいさつだけに終始したにもかかわらず、田中氏の派閥ではあらかじめ用意した調査表をもとにいろいろな質問を受けたそうです。

また、田中氏は野党からの信頼も厚かったため、それが政治力の増強につながったという意見もあります。

一例として、社民党代議士・大出俊氏のエピソードをご紹介します。

田中氏は、郵政大臣として不祥事の処理にあたっていた頃、処分を必要とするとはいえ優秀な人材を放っておくのは惜しいと考え、懲戒免職となった大出氏に声をかけます。

しかし、誘いを受けた当初、大出氏は筋を通して断りを入れます。

その後、大出氏は社民党の代議士となり、田中氏と対立する立場となります。

しかし、実際には大出氏の夫人が亡くなられた通夜にも田中氏が顔を出すなど、恩讐を超えた付き合いをしていたことが知られています。

これを、上司と部下の関係に置き換えたとき、どちらかがどちらかの立場を理解しつつも尊重しようと心掛けたなら、ひょっとしたら関係は徐々に変わっていく可能性もあります。

嫌だと感じているうちは、そもそも本気で相手と向き合っていないことの証拠なのかもしれません。

  

人情とロジックのバランス感覚

情に厚い田中氏ですが、同時に合理的な考え方をすることも大きな特徴の一つとして知られています。

数字に強くずば抜けた記憶力を持ち、しかも考えをスピーディーに実行できることから、いつしか田中氏は「コンピュータ付きブルドーザー」と呼ばれるようになりました。

人はどうしても、人間関係の中で培われた情に振り回されてしまいがちですが、AIを人類が受け入れた以上、将来的には感情と理性のバランスを高いところで取らなければ生き残れない時代が到来することでしょう。

田中氏は、この点についても貴重な言葉を残しています。

大体、どんな難しい話でも、ポイントは1つか、多くても2つくらいなもんだ。そこをより分けるには、数学的にドライに処理していくのが一番いい。物事を簡潔に処理できないリーダーというのは、あり得ない。

※出典元:新田中角栄名語録

多くの人が陳情に訪れ、野党・派閥との争いを戦い抜く中で、問題を先延ばしにせずさばいてきた行動力の背景には、迅速な判断力があったわけです。

果たして、上司との関係に長年悩んでいる人は、悩みのポイントを正しく押さえているのでしょうか。

とどのつまり、単純に「嫌い」とか「生理的に受け付けない」とかいう意見で片づけてしまう人がいたとしたら、それはあまりにも幼稚な考えだということが分かるはずです。

嫌い・苦手・尊敬できないと考える理由を、1つもしくは2つに絞った上で、許容できる部分・妥協できる部分はないかどうか、感情を交えずに考えてみましょう。

  

公と私の概念

人の判断基準は様々ですが、多くの日本人は他者のことを優先するようにして、物事を決断する傾向にあります。

このことは、日本人がよく知り・よく守る「道徳」という単語の意味からも推察でき、社会生活を営む上で「一人ひとりが守るべき行為の基準」を、多くの日本人が大事にしていると考えられます。

そのため、公私混同を避けようとした際に、なかなかそれが難しいような場面に遭遇することが日本社会では多いものです。

もっとも、飲みにケーションのような習慣を敬遠する人も増えてきていることから、少しずつ社会にも変化が生じているのかもしれません。

しかし、人と人との距離が近かった昭和の時代において、田中氏はこのような言葉を残しています。

政治家・リーダーというものは、最後は51%は公に奉ずるべき、私情は49%に止めておくべきだ。公六分で決断した場合、仮に失敗しても逆風をかわすことができる。私情優先では、同情の生まれる余地はない。

※出典元:新田中角栄名語録

自分自身のことだけを考えていても、周囲がそれを認めてくれるとは限らないのは、現代の組織にも通ずるところがあります。

自分の責任をきっちり果たした上で、上司が変わらないのなら、キャリアアップを目指して転職することを検討してもよいでしょう。

ただ、上司への尊敬ありきで物事を進めることは、公六分とは言えないのではないでしょうか。

上司の存在を転職の動機とするならば、自分の役割が正しく果たせないと思った場合に限り、検討した方が賢明です。

そうすれば、退職を決断する前の段階で、事態が好転するかもしれません。

  

人間はみな「出来損ない」

田中氏の情の深さは、以下の言葉に込められています。

人間はやっぱり出来損ないだ。神様みたいな人は少ない。皆、失敗はする。その出来損ないの人間を愛せるかどうか。

※出典元:新田中角栄名語録

この言葉を聞いた時、頭では分かっていても、なかなかそれを実現できないという人は多いはずです。

人間はどうしても自分の感情を主体として考えがちで、どんなに優秀とされる人材であっても、時に論理を忘れてしまうことがあります。

また、田中氏はロッキード事件のために、どうしてもお金のイメージが付きまとう部分がありますし、実際にお金の使い方にも戦略があったことは、田中氏の周辺にいた人たちも認めるところではあります。

しかしながら、根本的な部分で愛情を持って人を見ていたからこそ、多くの人が行き詰まるようなお金の問題を解決できる知見を備えていたとも考えられます。

また、田中氏は自分に対する批判をかわせるだけの哲学を持っていました。

私の人気が悪くなってきたら、ああ田中は仕事をしているんだと、まァこう思っていただきたい。

※出典元:新田中角栄名語録

どんな風に仕事をしていても、何か新しいことを始めれば、既存権益を持つ人間や対案を持つ人間から批判されてしまう。

田中氏の言葉は、そのまま自分が改革を断行していることのあらわれでもあります。

これがもし無策を貫き通すようなことであれば、やがてその姿勢は批判され、権力の座を失うことでしょう。

会社でも同様であり、ある程度の昇進は経験できたとしても、その後は窓際・リストラ候補となってしまう可能性が高くなります。

同じ環境で仕事をする以上、合わない人間は一定数存在すること。

その上で、自分が妥協できる範囲を探ること。

上司の仕事ぶりを冷静に観察すること。

これらに一度取り組んでみて、その上で妥協点がまったく見つからないなら、そこで初めて転職を考えても遅くはないはず。

モチベーションを他者に求めるのはやめて、まずは協力できるスタンスを探りましょう。

  

「上司が尊敬できない」という前に、振り返って欲しいこと

上司が尊敬できないから辞めたいと考えている時、もう一つ考えたいのは、自分が「上司から嫌われる行動をとっていないかどうか」です。

これは自分が部下を持っている場合も同様で、部下の信頼を失うようなことをしていないかどうか、一度確認してみるとよいでしょう。

実のところ、田中氏がライバルも含めて幅広い人の心を掌握できたのは、人間関係の基本を愚直に守り通したからかもしれません。

もう少し、田中氏の名言を紐解いていきましょう。

  

人の悪口は一人で・トイレで言う

田中氏は新人議員に対して、以下のような言葉を言い置くことが多かったと言います。

「一人の悪口を言えば、十人の敵を作る。よほど信用している相手でも『君だけには言っておくが、実はアイツは……』とやれば、一日経たないうちに知らぬものなしとなる。それは政界、社会もまた同じだ。プラスになることは一つもない。どうしても悪口を言いたければ、一人でトイレの中でやれ」

※出典元:新田中角栄名語録

様々な自己啓発書で、この手のアドバイスを確認できますが、本当にそれができている人は一握りです。

筆者の体感としても、この世から悪口というものがなくなることは、おそらくないと思います。

そして、上司を尊敬していない人は、おそらく悪口を誰かに話した経験があるはずです。

こうした行為が、積もり積もって自分の身を苦しめていることを、上司を批判する前に考えておきたいところです。

敵は、ひょっとしたら上司ではなく同僚・部下かもしれないと考えると、少しゾッとするかもしれません。

  

約束を守る

田中氏は豪快なイメージの強い人ですが、一方でささいな約束事をしっかり守っていた人物として評価されています。

主張の違いはあれど、譲る部分は譲り、引けない部分は引かず、約束した部分はきちんと守っていたそうです。

私よりも公を優先させたことも一因だと考えられますが、やはり多くの約束事を守り続けるというのは、かなりの人間修養が必要だと思われます。

自分自身が過去に約束を守れなかった・結果を出せなかったことを上司のせいにしているのなら、もう一度自分に責はなかったのかどうか考えてみてください。

他者よりもまず、自分にフォーカスしてみることで、上司の立場を考える余裕が生まれるかもしれません。

  

「分かったように」ならない

現代は、各種メディアで様々な言葉が飛び交っていますが、その中で際立つ「自分の言葉」というものが少なくなってきています。

この点について田中氏は、以下のような言葉を秘書に残しています。

いいな。分かったようなことは言うな。気の利いたことを言おうとするな。そんなものは聞いている人は一発で見抜く。世間は甘くない。借りものはダメだ。“自分の言葉”で全力で話してみろ。そうすれば、初めて人は聞く耳を持ってくれる

※出典元:新田中角栄名語録

例えば、1996年のアトランタオリンピックで銅メダルを獲得した有森裕子さんの「初めて自分で自分をほめたいと思います」という言葉は、多くの人の胸を打ちました。

しかし、その後はナイター中継や結婚式の会場などで、似たような言葉を聞いた記憶がある人は多いのではないでしょうか。

「上司が尊敬できない」という言葉は、多くの人が使っている、言わば「使い古された言葉」です。

そこにはオリジナリティはなく、自分がなぜ嫌いなのか、その詳細が見えてきません。

あなたから「上司が尊敬できない」と聞いた人は、諸々の上司像・職場像・業界像を思い浮かべると思いますが、それらは相手の想像に任せるしかありません。

明確に悩みがあって、それを相談しているのならまだしも、愚痴に近いことばかりが続いていると、聞く相手もうんざりしてしまいます。

上司の人間性・仕事ぶりを徹底的に分析する中で、今の職場に居続けることが、今後のキャリアに間違いなくダメージを与えることが分かっているのであれば、そこから自分の言葉が出てくるはずです。

「○○プロジェクトの成功実績を横取りされた」
 
「部署内で最も面倒な仕事を押し付けられた」
 
「自分の部下のフォローが上司のせいでできない」
 
「入社した時に信じていた人間性が、セクハラ・パワハラで裏切られた」
 

具体的な事例にまで掘り下げて考えられるようになると、今後は未来についてもイメージすることができます。

反面教師として上司の退陣まで待つのか。

別の部署に異動を申し出るか。

求人サイトで現職と同じような年収・待遇の会社を探すのか。

転職エージェントに登録して、プロに現状を相談するのか。

何事も「分かったように」ならず、一つひとつ現状を分析していけば、自分なりの答えが見つかります。

また、アプローチの順番も考えやすくなります。

人事に相談した上で期限を決め、その中で思ったような結果が出ない時に、転職を考えるという方法もあります。

つらい時だからこそタイムリミットを設けて、自分の言葉が出てくるまでは、上司が尊敬できない理由を探ってみることをおすすめします。


田中角栄について学べる書籍を紹介します。いずれも Kindle Unlimited の会員の方は「読み放題」で読書できます(2021年6月26日現在)。会員の方はぜひチェックして下さい!

大宰相 田中角栄 ロッキード裁判は無罪だった 

田中角栄の人を動かすスピーチ術   

  

おわりに

嫌いな人間・尊敬できない人間が近くにいると、どうしても悪い方向に考えが凝り固まりがちです。

理由はささいなものであっても、それが自分をむしばんでいるなら、できる限り早めに離れたいと思うのは当然のことです。

しかし、上司も一人の人間であることを理解した上で、関係性を改善しようと試みることは、仮に失敗しても次のステップにつながります。

田中角栄氏の人間性について研究することは、人間関係を改善する上で、大いに参考になる部分があるはずです。

「人の振り見て我が振り直せ」という言葉があります。

他の誰かのために自分の貴重な時間を犠牲にせず、むしろ相手を利用するくらいの気持ちを持ちましょう!

◎関連書籍

この記事を書いた人
オンラインスキルマーケット「Coconala(ココナラ)」にて各種ライティングに携わる。会員登録後半年で確定申告を検討するほど収入が増え、1年後には個人事業主として登録。経理職として幅広い業種への転職経験があり、人事系コラムの執筆も行っている。

プロフィールURL:
SNSでフォローする