ビジネスパーソンが転職を考える時、その多くは現状に不満を抱いています。
それ自体は仕方のないことなのですが、単純に不満を解消するためだけに転職しようとすると、大抵の場合は失敗してしまいます。
物事には一定の法則性というものがあり、転職に失敗する人にはいくつか共通点があるものです。
その中の一つが、人の考え方・判断が狭い範囲で完結してしまうという意味での「視野狭窄」です。
視野が狭くなると、思考の柔軟性が失われてしまい、自分が似たような失敗をしていることに気付かなくなります。
そこで、転職を決断した段階で、わたしたちには視野を広げるトレーニングが求められます。
また、視野が本当に広がっていて、自分にとってメリットの多い職場で働けるかどうか、客観的な視点から確認するためのポイントも理解しておく必要があります。
この記事では、過去に転職で痛い目を見た人向けに、視野を広げるための具体的なトレーニング方法と、職場で幸せに働くためのポイントについてご紹介します。
わたしたち一人ひとりに見える世界は、ストレートに表現すれば右目と左目から見える世界がすべてであり、それ以上のものは脳で想像するほかありません。
つまり、想像力をどれだけ豊かにすることができるかが、転職の満足度を決めるといっても過言ではないでしょう。
しかし、時に人間は思考を自分本位にゆがめてしまうため、真剣に想像しているつもりでも残念な結果を引き寄せてしまう場合があります。
まずは、わたしたち人間が誰しも陥りがちな「視野狭窄」の罠について、少しずつ紐解いていきましょう。
仕事で成功したいなら、まずはとにかく努力することが大切だと考える人は多いと思います。
しかし、実際のところ、成功につながる努力の性質というものは、職種・業種・適性・性格などに応じて変わってくるものです。
例えば、子どもの頃に「サッカー選手になりたい」という気持ちが芽生え、サッカースクールなどで一生懸命練習しても、残念ながらレギュラーになれない子どもはたくさんいます。
理由としては、サッカースクールの教え方が悪かったのかもしれませんし、あるいは球技以外に適性があったのかもしれません。
にもかかわらず、努力を強要されて育ってきた人は、努力すれば何でも叶うとありもしない妄想にひたってしまいます。
結果、いくら努力しても結果が得られず、毒親を殺害するような悲しい事件が生まれてしまうのです。
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また、努力という概念を悪用するような企業も、残念ながら日本には一定数存在しています。
人間の判断力は、睡眠時間の減少、食べ物の不満足、多大なストレスによってどんどん失われていきますが、これらの状況を意図的に作り「努力が足りないから」と従業員に錯覚させるような環境では、経営者以外で幸せになれる人はいないでしょう。
ここであげた例は極端なものですが、大なり小なり日本人はこのような傾向に悩まされたことがあるのではないでしょうか。
これこそが、日本のビジネスパーソンが陥りがちな視野狭窄の最たるものの一つであり、自分に見える世界がどんどん狭まることで、転職に際しても選択肢が限られてしまうのです。
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視野狭窄は、時に自分自身の判断に自信がある場合でも起こり得ます。
それがたとえポジティブな動機であったとしても、その動機が自分の認知の偏りによって起こっている可能性があることを、転職時は気に留めておく必要があります。
良かれと思って他者に手を差し伸べることが時に迷惑となるように、自分の思い込み・偏った常識によって非合理な判断を下してしまうリスクは、どんな人も避けることが難しいものです。
このような傾向を認知バイアスといい、自分が客観的に情報を集めているつもりであっても、実際には何らかの偏りが生まれていることを想定しておかなければ、転職後に「いつか見たような風景」があなたの前に広がることでしょう。
転職において認知バイアスに陥ることを避けるポイントは、業種・職種・企業の情報を分析にするにあたり、現段階で自分に見えている範囲がすべてではないことを自覚することです。
もう少しかみ砕いてお伝えすると「他者の目やネガティブな評価も含めて、総合的に評価する」スタンスを養うことが大切です。
具体的には、企業の口コミ情報をあたる・複数の転職エージェントから得られた情報を分析する・似たような業種に転職した友人や元同僚から率直な意見を聞くなど、できれば耳をふさぎたくなるような情報も頭に入れる努力をすることです。
それらのネガティブな情報を頭に入れてもなお、あきらめきれないモチベーションがあるのなら、そこで初めてゴーサインを出すといった具合です。
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どんな人でも、昨日よりも今日・今日よりも明日の方が成長しているはずですし、多くの社会ではそうあるべきだと考えられています。
それゆえに、テクノロジーは進化を続け、新しい業種や職種・ライフスタイルが定期的にスポットを浴びています。
転職についても同様であり、今までの手法や考え方をなぞるだけでは、自分の理想の転職は実現できないでしょう。
転職にあたり知識・思考をアップデートして、その上で効果的な判断を下せるようになることが、現職よりも満足のいく転職を成功させる近道です。
そのためには、まず現状を把握した上で、そこから視野を広げられるよう努力することが不可欠です。
視野を広げるためには、業界における能力値・別の環境における可能性など、幅広い視点から自分の立ち位置はどこなのか・今の自分に欠けているものは何なのかを自問自答して、時に受け入れ時に改善しながら、じっくりと答えを探すスタンスが求められます。
転職を機に視野を広げようと試みた場合でも、そうでない場合でも、自らの視野を広げて今後の行動に活かすことには、多大なメリットがあります。
以下に、主なものをご紹介します。
身の回りのことだけに集中していると、どうしてもその中で思考が完結してしまい、新しい世界に目を向けにくくなります。
逆に、自分とは違う考え・価値観を理解しようと試みると、少なくともその範囲内では他者を尊重しやすくなります。
管理職クラスを経験した人の中には、自分のスタンスや成果を出した手法を、つい部下に強要してしまった経験のある人も多いのではないでしょうか。
こうした働き方は部下の反発を招くだけでなく、時にパワハラに発展するおそれもあるため、生産性が高くなるかどうかは疑問が残ります。
しかし、部下の事情を察しながら自分の意見を述べることができれば、部下が自分の伝えたいことを理解してくれる可能性は高くなります。
そのためには、自分が部下だった頃を思い返すのではなく、今いる部下を知ろうとする心構えが大切です。
仮に部下が20代であれば、現代の20代がどのような価値観で仕事に向き合っているのか軽くリサーチしておくだけでも、面談などの場面で本人の考え方とのニュアンスのすり合わせがしやすくなるでしょう。
課題解決に向けた目標設定・評価方針を定める際にも、どの点にフォーカスすればモチベーションを高められるのか、判断がしやすいはずです。
忙しい毎日を送っていると、自分の人生を振り返る機会はそれほど多くありませんが、時に過去の出来事を振り返ると、懐かしさとともに楽しい思い出が頭に浮かぶかもしれません。
一方で、過去の失敗を思い出し、つらい記憶が呼び覚まされることも珍しくありません。
わたしたち人間は、できることなら悪い記憶をできるだけ忘れ去ろうとしますし、精神衛生上それは理にかなった行動・考え方と言えます。
しかし、それらの記憶には主観が少なからず含まれており、時に記憶の内容が事実から大きく離れてしまうこともあります。
過去を現在・未来に活かすためには、過去の行動を「自分にとって大切な経験」としてとらえる感性が必要です。
視野を広げて物事を考えられるようになれば、感情だけで物事を判断することなく、過去に起こった出来事から多くのことを学べるようになるでしょう。
同じ問題に遭遇した人から、どんな気持ちでつらい状況をやり過ごしたのか・自分なりに解決するためどのような行動をとったのかなど、色々と話を聞くだけでも、自分とは違うアプローチが学べます。
一人の世界で悶々と考え込むのではなく、開かれた世界に知恵を求める姿勢が、明日の自分を救ってくれるはずです。
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考え方・判断基準などをアップデートできると、自分の思考にも多様性が生まれます。
このように、何かを学んだり考えたりする時に、今ある問題から少し視野を広げて考えていくと、より効率的な方法が見つかる場合があります。
これはビジネスでも同様で、現在起こっている問題だけにフォーカスするのではなく、そもそもそんな問題が起こる原因は何なのかを把握した方が、根本的な解決に近づいていきます。
どのような場面においても、自分が見える部分よりも少し先を見据えて考えることが、より理想に近い結果を引き寄せてくれるはずです。
ここまでお伝えしてきた視野を広げるメリットは、転職にも言える話です。
以下のようなイメージを探りながら転職に臨む場合、特に有効に働きます。
応募先や転職理由について想像する力は、業界分析や自己分析などを通じて、視野を広げることで鍛えられます。
転職を通して、今の自分よりも少し上・少し先のステージに行きたいと思うなら、意識して視野を広げる習慣を身に付けることが大切です。
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視野を広げることのメリットをお伝えしてきたところで、続いては「どうすれば転職に際して視野を広げられるのか」について、具体的なトレーニング方法をご紹介します。
すべてが自分にフィットする方法とは限りませんが、転職活動が停滞している状況なら、いずれの方法も現状を改善するのに役立ってくれるはずです。
世の中には、自分がしたくてもできなかったことを実現した人や、自分がまったく興味を示さないことに熱中する人がいます。
自分が常識と思っていることが、誰かにとっては非常識であるケースも、広い世界ではよくある話です。
そういった人々の話を聞くと、自分がこれから遭遇するであろう出来事以外を、情報として頭に入れることができます。
実際に自分が同じ状況に遭遇したらどうなるだろうかと、想像を膨らませることもできます。
例えば、一般的に大学院は大学の過程を卒業してからでなければ入学できないと考えられていますが、実際には高卒の学歴でも入学することが可能です。
参照記事:ロンブー田村淳さん、慶應大学院生になっていた。理由は「死者との対話」を学ぶため
もちろんそれは誰でもできることではありませんし、いわゆる「レールから外れた生き方」の一つに数えられますが、それでも実践している人の話は貴重なものとなるはずです。
特に、同年代でイレギュラーを経験している人の話は、大いに参考になります。
それがポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、色々な話を聞いてみましょう。
東京から大阪、北海道から沖縄など、現在暮らしている環境とは大きく異なるところで暮らそうとした場合、たくさんの障害に見舞われることが予想されます。
電化製品のヘルツの違いから方言まで、実に様々なハードルを想定しながら、住まいや仕事探しを行わなければなりません。
海外ともなれば、ありとあらゆることが日本と違いますから、イレギュラーを前提としてプランを練る必要性に迫られるでしょう。
ただ、実際にやった人が一定数存在している以上、環境を変えることは決して不可能なことではありません。
ただ「やらない」もしくは「やる必要がない」から経験しなかっただけで、必要に迫られれば経験できることかもしれないのです。
例えば、都内にどうしても良い企業が見つからなかった場合で、大阪に理想に近い条件を満たす企業が見つかったとします。
仮にその大阪の企業から内定をもらえた場合、チャンスを活かせるかどうかを分けるのは、突きつめると自分が「引越しできる」と思うかどうかだけです。
いきなり現地に引っ越すことを想像できないなら、一度旅行に出かけて雰囲気を味わうなど、少しずつハードルを上げる方法もあります。
もしできなかったとしても、今までの自分の枠を超えた選択肢を真剣に考える機会は、きっと大切な経験になります。
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ドキュメンタリー・ノンフィクション・自伝・エッセイなどは、他者の人生を知る貴重な方法の一つです。
本・テレビ・ラジオ・映画などで、偉人・芸能人・犯罪者問わず様々な人物の考え方・生き方に触れることにより、自分の立場や考えを再確認できます。
何気なく書店で見つけた一冊の本が、後の自分の人生を大きく変えてしまうこともあります。
例えば、探偵に興味がなかった人が、たまたま立ち読みで探偵に関する本を読んだことで、探偵事務所に転職してしまうことも十分考えられる話です。
筆者の場合、将棋そのものに強い興味はありませんが、棋士の考え方・生き方に惹かれる部分があります。
一般的に考えられる全盛期を過ぎて名人となったと言われる米長邦雄氏や、史上初の永世七冠となった羽生善治氏などの考え方・生き方は、非常に魅力的に感じられます。
「自分にとっては消化試合でも、相手にとって重要な対局であれば、相手を全力で負かす」という米長哲学は、少なくとも将棋界で八百長がない大きな理由の一つであり、将棋界全体に広く普及している考え方として知られています。
これについて米長氏は過去に「ある対局の結果が第三者に影響を及ぼす場合、自身の勝敗にかかわらず第三者への悲喜の総量は変わらないため、最終的に自分が全力を尽くしたかどうかだけが問われ、悪い結果は自分にとってマイナスにしかならない」という趣旨の考えを述べています。
転職活動にも似たような性質があり、自分以外にも他の誰かが応募していることを想定しつつも、その人たちの生活よりも自分のことをアピールする機会を優先しなければならない場面に遭遇します。
つまるところ転職は、自分と他の求職者との勝負の場ですから、米長哲学や棋士の考え方が大いに参考になるはずです。
転職のため、自分の視野を広げるトレーニングを続ける中で注意したいのは、トレーニングが一定の効果をあげるかどうかは、実際に転職先を選んでみなければ分からないことです。
一度でも「この仕事に決めよう」と思ってしまうと、多くの人はそこから視野狭窄が始まってしまいます。
そこで、サイエンスライターである鈴木祐さんの著書・科学的な適職 の中から、「仕事の幸福度を決める7つの徳目」についてご紹介するとともに、具体的な幸せに働くためのポイントについても触れていきます。
鈴木氏は著書の中で、数ある研究の中でも「自由」ほど仕事の幸せを左右する要素はないと述べています。
1380人の労働者を集めた台湾の研究において、以下のようなポイントをもとに被験者が働く会社の自由度を調べました。
すると、職場の自由度が高くなるほど被験者の仕事への満足度は上がり、離職率も下がったそうです。
また、鈴木氏は、転職先を探す場合は以下のポイントは必ずチェックすべきだと述べています。
労働時間や仕事の配分について、できるだけ自分の思うような形で進めていけることが、働く上での「自由」になるものと考えてよいでしょう。
ただ、これはあくまでも「働き方」の問題であって、例えばフルコミッションで働くことを目指せ、と言っているわけではありません。
自由と引き換えにリスクの高い働き方を選ぶことが、万人にとって向いているわけではありませんから、あくまでも「ある程度の制約がある中で自由が担保されること」が、幸せに働くポイントになるものと推察されます。
関連記事:選択の自由を無駄にしない!幸福感は他者との比較ではなく「自分の選択」が決める
著書の中で鈴木氏は、小さな達成が仕事のモチベーションを大きく左右することについて触れています。
ハーバード大学が「仕事のモチベーションを高める最大の要素とは何か?」という疑問に答えを出すべく行った調査で、研究チームは7つの会社から238人のビジネスマンを集め、全員のパフォーマンスの変動を12,000時間にわたって記録し続けたそうです。
その結論は「人間のモチベーションがもっとも高まるのは、少しでも仕事が前に進んでいるとき」とまとめられており、それが仮に錯覚の達成感であっても、モチベーションは高まるものと紹介されています。
ただ、達成感・小さな達成が職務の中にどれだけあるのかについて、求人情報の中から紐解くのは難しい部分があります。
そこで注目すべきポイントとして鈴木氏は「フィードバック」をあげており、具体的には適職探しの段階で以下のポイントをチェックしておくべきだと述べています。
この点を実際に転職活動で確認するためには、求人情報による会社紹介だけを参考にするのはリスクが高いかもしれません。
なぜなら、求人情報内の情報は会社側の求職者に対するアピールであって、社内の実情を正確に反映しているとは限らないからです。
実際に確認を試みるとすれば、面接官に評価制度等を確認するなど、会話の中から紐解いていく必要があります。
逆に言えば、求人情報の中でフィードバックの重要性に触れている企業があるとしたら、幸せに働けるかどうかを判断する点では非常に有効だと言えるでしょう。
鈴木氏は、適職探しにおいて性格テストの類は当てにならないと述べつつも、適職探しに唯一有効なテストの存在についても触れています。
それは「制御焦点」という考え方で、その中で人間のパーソナリティは、以下の通り「攻撃型」と「防御型」の2タイプに分かれています。
<攻撃型>
・目標を達成して得られる「利益」に焦点を当てて働くタイプ
・競争に勝つのが大好きで、金や名誉などの外的な報酬に強い影響を受ける
・つねに大きな夢を持っており、仕事を効率的に進める意志が強い
・基本的にポジティブだが、その分だけ物事を突きつめて考えず、準備不足のまま事を進めようとするのが難点
・作業がうまくいかないと、すぐに気落ちする傾向もある
<守備型>
・目標を「責任」の一種としてとらえ、競争に負けないために働くタイプ
・自分の義務を果たすのが最終的なゴールで、できるだけ安全な場所に身を置こうとする
・失敗を恐れる傾向が強いため、仕事ぶりは正確で注意深く、ゆっくりと着実に物事を進めていく
・最悪の事態を想定して動く傾向が強く、時間の余裕がない状況ではストレスが激増する
・分析や問題解決力が高い
この考え方については、主にコロンビア大学などの研究で、仕事のパフォーマンスアップ効果が証明されています。
ただし、この考え方を正しく応用するためには、自分がどちらのパーソナリティに属するのかについて、普段の考え方をよく自己分析する必要があります。
日本人の場合、どちらかというと守備型に偏るのではないかと考えられますが、一概に決めつけるのも難しい部分があります。
また、攻撃型・守備型の傾向がハッキリ分かれるとは限らず、バランスの取れた考え方をしている人もいるかもしれません。
今までに積み重ねてきたキャリアが事務系だったなど、たまたま守備型に近い仕事内容だったが、実際の自分の性格・行動を思い返してみると攻撃型だったというケースも考えられます。
よって、今までのキャリアと折り合いを付けながら、パーソナリティに合った仕事を探すためには、職種そのものを否定するのではなく、自分のパーソナリティを活かせる職場かどうかをチェックした方が建設的だと言えるでしょう。
具体的には、年々新しいことに挑戦している会社なのか、老舗として長らく地域経済を支えてきた会社なのかなど、会社の性格が自分のパーソナリティに近いかどうかで判断した方が無難と言えるかもしれません。
なお、本格的にモチベーションタイプを判断したい場合は、著書の中で質問表(テスト)が用意されていますから、気になる方はぜひ一度書籍にも目を通してみてください。
鈴木氏は書籍の中で、「信賞必罰とタスクの明確さ」を事前に確認することが、採用面接・転職エージェントとの面談などで重要だと述べています。
スタンフォード大学が228件の先行研究を精査したメタ分析において、信賞必罰が明確でない企業では社員の死亡率・精神病の発症率が上がるという、ショッキングな内容が報告されています。
また、日系企業・中小企業などではよく見られがちな光景だと思われますが、以下のような傾向が見られる職場では、働く人の幸福度は大きく悪化するとも述べられています。
南フロリダ大学のメタ分析によると、このようなタスクの明確さが見られない職場では、寝ても疲れが取れず、頭痛・胃痛などの症状にも悩みやすいとのことです。
その上で鈴木氏は、求職者の立場でこれらのリスクを回避するためには、以下のポイントをチェックすべきだと述べています。
これらの意見はもっともなもので、求人情報はもちろんのこと、面接・転職エージェントとのやり取りの中でも、しっかりと確認を入れておきたいところではあります。
一方で不安なのは、それが本当に社内で実践されているかどうか、不明瞭なケースもままあることです。
良い情報だけに惑わされないためには、もう少し「外側」から企業を見つめる必要があります。
時間と手間はかかりますが、口コミサイトの情報を丁寧にチェックしたり、SNSやBBSなどの情報をリサーチしてみたりと、より実情に近い情報を集められるようにしたいものです。
逆に言えば、あまりにも高い評価ばかりが集まっている職場の場合、経営陣が意図的に悪い評価を消し込んでいる場合もあります。
企業規模がそれほど大きくないはずなのに、変に高い評価だけがクローズアップされている場合は、評価に注意が必要です。
書籍の中では「宝くじで1億円を当てようが、夢に見たポジションに昇進しようが、長くても1年ほどで幸福度は過去と同じレベルに戻ってしまう」と説明されています。
これは心理学において「快楽のウォーキングマシン」と呼ばれる現象で、人間はどのような変化にもすぐに慣れてしまう性質があることを示しています。
これを解消するためには、日常の仕事でどれくらいの変化を感じられるかが重要だと、鈴木氏は述べています。
具体的には、以下の2つの条件を満たしている職場ほど、満足度は高くなります。
要するに、スタッフの飽きを減らせる仕組みが整っているかどうかが重要だというわけです。
しかし、このような試みはどの企業でも大変に難しいもので、戦略として採用するのも経営者にとっては勇気がいる判断です。
ただ、選択肢が0というわけではなく、例えば面白法人カヤックのようなユニークな会社もありますし、ベンチャー企業や立ち上げ間もない企業を選べば幅広い職務に携わることができるでしょう。
先述したパーソナリティの問題もありますから、業務のバリエーションに関しては、自分が選べる範囲で探すのが無難かもしれません。
わたしたちの職場環境は、つまるところ人間関係が大きなウエイトを占めています。
書籍の中に「友人が3人以上いれば仕事のモチベーションは700%上がる」という、衝撃的なフレーズがあるほどです。
給料の多さ・仕事の楽しさといった要因と関係なく、社内に良い友人がいるだけで人生が幸福になるというのは、想像がつく反面驚きも大きいのではないでしょうか。
しかし、確かに人間関係を目に見えて変化させるのは難しいものですから、人間関係は転職における永遠の課題と言えるかもしれません。
ただ、これは「どうやってでも友人を職場の中に作れ」という意味ではなく、困った時に自分を助けてくれる同僚がいると、楽しく働ける可能性が大きく上がるという意味合いで用いられた表現と推察されます。
つまり、新しい職場に「仲良くなれそうな人がいるかどうか」をイメージしながら転職活動を行うことが、適職選びのポイントの一つとなります。
書籍の中では、仲間を重視して転職先を探す際に注目するポイントが、以下の通り端的にまとめられています。
この点について、企業に応募する際にチェックを入れるとしたら、社風や企業概要について確認するとともに、面接などで会社を訪れた際に社員の服装や様子などをチェックするとよいでしょう。
私服勤務となっているなら、それだけ自由度の高い職場であることが予想されますし、逆にシチュエーションを問わずスーツ姿というのが一般的なら、規律はやや厳格な部類に入るかもしれません。
どちらが良い・悪いというわけではなく、自分の場合はどちらの傾向に近いかを想像した上で、フィット感を確かめるのがよいでしょう。
シカゴ大学のリサーチによると、高い満足度を得やすい職業のトップ5は以下の通りとなっています。
これはアメリカの文化に根付いた結果であり、日本人にそのまま当てはめるのは難しいですが、仕事の幸福を考えるのに役立つ特有の共通点があると鈴木氏は述べています。
それは「満足度が高い仕事とは、他人を気づかい、他人に新たな知見を伝え、他人の人生を守る要素を持っている」という点です。
また、鈴木氏は、他者への親切によって人間が満たされる欲求を、以下の3つに分類・紹介しています。
鈴木氏によると、こうした親切による幸福度アップの効果を「ヘルパーズ・ハイ」と呼ぶ一部の学者もいるとのことです。
このことから、他者貢献の要素を職業選択に求めることは、職業選択の満足度に大きな効果をもたらす可能性があります。
実は、転職においてこの視点をもつことは、非常に大切なことです。
どんな仕事でも、会社・組織・社会に貢献できていることは疑いのない事実なのですが、その事実を働く人が可視化できる職種は限られています。
この点にフォーカスした上で、転職時にリサーチしておきたいポイントとして、どんな業種・職種であっても、サンクスカードのような「感謝を他の社員に伝えられる仕組み」が機能しているかどうかをチェックすることがあげられます。
他には、社内アプリでのコミュニケーションを積極的に活用しているかどうかなど、社員同士で連携を密に取っている社風かどうかを確認してみましょう。
お互いが感謝の気持ちを素直に伝えやすい職場環境であれば、やりがいも生まれやすくなります。
一気に業種・職種を転換するのも一つの方法ですが、堅実な方向性で転職を考えるなら、まずは貢献が可視化される環境かどうかに注目することをおすすめします。
転職に向けて視野を広げると、自分が今まで思ってもみなかったことに気付けますし、職場を選ぶ基準にも変化が生じてきます。
また、視野を広げるためのトレーニング方法は、例えば外国語や数学を学び直すレベルとは違い、比較的日常に取り入れやすいものばかりです。
転職後の未来を柔軟に見つめ直す意味で、視野を広げることには大きなメリットがあります。
この記事を最後までお読みいただいた方には、自分が今まで取り組んできた転職のやり方・物事のとらえ方を見直しながら、幸せな転職を実現して欲しいと思います。
視野を広げる努力は、業種・職種問わず必要なものです。
にもかかわらず、努力自体はそこまで難しいものではありませんから、取り組むだけで他の人に差を付けることができるはずです。
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