新型コロナウィルスまん延の影響を受けて、対面することなくやり取りができるオンラインツールのニーズは高まり、面接をWeb上で行う「オンライン面接」を取り入れる企業の動きが活発化しています。
同時に、既存の環境と異なる中で面接を行う状況に違和感を持ち、以下のような不安を感じている応募者の声も聞かれるようになりました。
これらの疑問に対する答えは、応募する企業や面接官の考え方によって変わってきます。
しかし、企業活動の一環としてオンライン面接が行われる以上、実施回数が増えるにともない、ルール・マナーが培われていくのは必然のことです。
この記事では、新たに生まれた面接方法の一つ「オンライン面接」について、挨拶の流れ・質問内容・注意事項・事前準備といった、応募者が気になるポイントを解説します。
カメラを使って自分の顔を撮影しながら面接官と話すオンライン面接は、対面型の面接と比べて自由度が高く、それが応募者にとって負担に感じられることがあります。
対面との印象の違い・面接にふさわしい環境の演出・一般的に当たり前と思われているマナーとの違いなど、不安要素は数多く存在します。
しかし、一般常識に照らし合わせて考えると、基本的にはオンライン面接も対面型の面接と変わりなく、面接官に良い印象を与えられるかどうかがポイントになります。
まずは、オンライン面接の挨拶に関する基本マナー・ルールについて確認していきましょう。
自宅や会議室など、落ち着いた環境でパソコン越しに会話をするオンライン面接では、気心の知れたクライアントと会議を行うケースを想定すると、マナーが分かりやすいでしょう。
具体的には、以下のポイントを押さえて会議に臨むと、お互いに負担なくやり取りができます。
オンライン面接は、カメラ越しに相手の姿を見ることになるので、原則として立つ動作は不要です。
よほど体育会系の企業であれば、立ってお辞儀をすることで好印象を与えられるかもしれませんが、必須ではないと考えて構いません。
その代わり、お辞儀は普段よりも丁寧な所作を心がけましょう。
素早く頭を下げ、2~3秒ほど頭を止めてから、ゆっくりと頭を戻します。
服装に関しては、社風によってスーツ・オフィスカジュアルなどの違いはあるものの、スーツが無難です。
カメラの角度によっては、下半身の姿が見えてしまうこともあるため、上下ともにスーツを着用しましょう。
オンライン面接は、面接官と応募者との間に「オンラインツール」をはさみます。
そのため、オンラインツールの設定にあたり、企業側の指示を正しく理解して設定を行う必要があります。
基本的には、企業側が指定するツールを使用して面接を行うケースが多いため、指定されたツールの使い方は事前にリサーチしておきたいところです。
可能であれば、本番で通常通り通信できるよう、接続上の不安要素をあらかじめチェックしておきましょう。
ツール設定を行う際、自分のスマホ・パソコンを使うなどして事前準備を行うと、音のとらえ方や顔の見え方をチェックすることができます。
予行練習として、オンライン面接レッスンを受けておくと、自宅やパソコンの環境・不具合を事前に確認できますから、安心して本番を迎えられるはずです。
本番を迎えたら、5分~10分前には席に着き、対応できるようスタンバイしておきます。
ここまでの流れをしっかり進められるだけでも、面接官の心象は良くなるはずです。
対面と違い、ボディランゲージや第一印象などの情報が少ない中で採用を勝ち取るには、どれだけ面接官に自分の思いを明確に伝えられるかが重要です。
よって、オンライン面接を成功させるには、外してはいけない質問に対して、的確な答えを用意することが大切です。
少なくとも、以下にご紹介する4つの項目に関する質問については、妥協のない答えを用意しておきたいところです。
応募者に対して特に聞きたい項目がない場合、多くの面接官は自己紹介または職歴についてたずねます。
直接的に「自己紹介をお願いします」と言われる場合もあれば、自己紹介と同義で「経歴を説明してください」と促される場合もあります。
面接官がスタートの段階でこの内容を確認する理由は、まず応募者のキャリア・性格などを一通り把握したいという思惑からです。
会話の中で、どの部分を掘り下げれば自社にとって有益な人材と判断できるのか、見定めるために情報収集をしている段階です。
応募者側が自己紹介・経歴紹介を試みる場合、このような面接官の意図を理解した上で、端的に・ハキハキと情報を伝えるのが基本戦略です。
自己紹介で応募者に対して何らかの可能性を感じた場合、面接官の質問にも熱が入りますから、入念にシミュレーションして面接に臨むことをおすすめします。
関連記事:40代~50代のオンライン面接における自己紹介・職歴紹介のポイント
自己紹介が一通り終わった段階・もしくは自己紹介の流れの中で、自己PRが求められます。
面接官側が自己PRを確認したい理由は、応募者の経歴を通して「どの部分が自社とマッチングできそうか」を知りたいからです。
特に、複数の職種を同時募集している企業のケースでは、もともと応募者が志望している職種以外にも可能性があると判断した際、面接官に別職種への応募に切り替えるよう促される場合があります。
また、1つの職種に絞っての応募であれば、応募者がきちんと企業研究を行っているかどうかの判断基準にもなります。
自己PRを行う際は、強みだけでなく弱みも伝えることで、誠実さ・説得力を説明に付加できます。
心理学では「両面提示」と呼ばれ、信頼関係を醸成する際のテクニックとして知られています。
応募者側が採用を勝ち取るためには、企業研究の結果を踏まえた上で、応募企業・業種・職種にふさわしい自己PRを考える必要があります。
ここをおろそかにすると、面接官のモチベーションに少なからず影響を及ぼすため、十分注意しましょう。
関連記事:40代・50代の転職者がオンライン面接で自己PRする際は「ジコチュー」に注意!
面接官が、応募者の本気度を確かめる上で参考にしているのが「志望動機」です。
数ある会社の中でどうして自社を選んだのか、どんな部分に魅力を感じて応募したのか、面接の中で見極めたいと考えているからです。
志望動機は、応募者を差別化する重要な要素のため、中途半端なメッセージを伝えるのは逆効果となります。
極端な話「この応募者は合格できればどこでもよいのだろう」と邪推されるおそれもありますから、求人情報・コーポレートサイトなどの情報には必ず目を通し、誤解・失望を招かない回答を用意しておきたいところです。
かといって、企業研究ばかりに時間をとってしまうと、レポートのような画一的な内容になってしまうため、自分の考えは盛り込まなければなりません。
自分が仕事を進める上で大切にしていることを軸にして、説得力のある志望動機の構築を意識しましょう。
関連記事:40代・50代の転職における、オンライン面接向けの志望動機の考え方・伝え方
面接の終了間際になり、面接官から聞かれる質問の一つが「何か質問はありますか?」という逆質問です。
逆質問に対する回答の判断は、考慮するかどうか企業で分かれるものですが、面接官に気を遣って何も質問しないのはよくありません。
真剣に入社を考えているなら、これから働こうと考えている企業に対して、何かしら疑問が生まれて当然です。
興味があるなら、入社後に取り組むであろう案件・ともに働くスタッフの詳細など、聞くべきことは多岐にわたるはずです。
面接官が上席であればあるほど、質問する内容も込み入ったものになるでしょう。
よほど失礼な質問をしない限りは、逆質問の内容が結果につながる可能性は低いですから、働くにあたって自分が重要と思う部分は確認しておくことが大切です。
関連記事:オンライン面接で戸惑わないための「逆質問例」を考える
パソコン越しに声を届けるオンライン面接では、対面型の面接で考慮しなかったポイントを意識して会話することが求められます。
面接時は、以下の注意事項を押さえた上で、面接官との意思疎通をはかりましょう。
カメラを通して会話するオンライン面接では、自分がどんなに明るく振る舞おうと心がけても、撮影場所の雰囲気に印象が大きく左右されてしまいます。
例えば、パソコンの画面を見やすくするため暗い場所にカメラを設置すると、当然ながら相手には暗い印象を与えるおそれがあります。
窓の近くなど、比較的明るい場所を選んだとしても、天気が悪く影ができてしまうかもしれません。
できるだけ照明は明るくして、表情が相手に見えやすいよう工夫しましょう。
見え方の問題でもう一つ注意したいのが、カメラの角度です。
パソコン・スマホのいずれを使う場合でも、机に置いてレンズ部分を見下ろす形になると、相手に圧迫感を与えてしまうかもしれません。
できる限り、カメラと自分の目線の高さを一緒にして、悪い印象を与えないようにしましょう。
スノコや箱・本などを使って、高さを調節するのがベターです。
オンライン面接時、自分の見え方を工夫するのと同時に気を配りたいのは、マイクの性能です。
ヘッドセットなどの性能によっては、マイクが十分に自分の声を拾ってくれない可能性があります。
自分の声が大きい分には、面接官側で音量を下げて調整できますが、小さいと聞き取りにも限界があります。
声が小さくて聞き取れないことは、ただでさえ不慣れなことが多いオンライン面接の中で強いストレスを面接官に与えますから、普段よりも意識して大きい声で話しましょう。
目安としては、いつもの2割増しの明るさ・声の大きさをイメージするとよいでしょう。
元気よく振る舞うことは、自分の印象を良くするための大切なポイントです。
オンライン面接を経験した人の中には「会話のキャッチボールがイメージ通りに進まなかった」と話す人がいます。
これは、インターネット通信を経由して会話を行うことに由来する問題で、いわゆるタイムラグと呼ばれる現象によって引き起こされます。
ニュース番組などで、遠く離れた国のキャスターと衛星通信を行った際、声が遅れて聞こえるケースを目にしたことがあると思います。
そこまで極端なケースは考えにくいものの、オンライン面接でも同様のことが起こるため、面接官・応募者それぞれにとってはそれなりのストレスになります。
そのため、お互いのターン(話す順番)を守りつつ、話す・聞くのコミュニケーションを意識することが、円滑なやり取りにつながります。
面接官の表情・口元を読み取りながら、自分のペースで会話を進めることのないよう意識しましょう。
実際にオンライン面接を進める上で避けて通れないのが、環境整備です。
直接企業を訪問する対面型と違い、オンライン面接では、自宅もしくは別の場所にパソコン・スマホを設置して、面接官と話ができる環境を整えることが求められます。
事前準備がしっかりしていると、その分だけ面接が有利に進みます。
以下に、事前準備の際に押さえておきたいポイントをご紹介します。
パソコン・周辺機器の性能は、オンライン面接において面接官とのコミュニケーションを左右する重要なファクターです。
ハイスペックであれば、その分だけ処理能力は高くなりますから、タイムラグや通信中断のリスクも低くなります。
先方の都合で通信が途切れる分には仕方ありませんが、応募者側の環境が原因で面接が進まないというのは、非常にもったいない話です。
相手方に負担をかけないためにも、できるだけスペックには余裕を持たせたいところです。
特に、管理職・ハイクラスのオンライン面談では、そもそも「応募者側の準備が万全であるのは当然」と面接官側が判断する可能性もあります。
若年者ならスマホでのやり取りも許されるかもしれませんが、オンライン面接では基本的に年齢相応の環境整備が求められることを押さえておきましょう。
可能であれば、通信に問題が生じてしまった場合を想定して、バックアッププランも準備しておくとよいでしょう。
オンライン面接での印象を良くするには、照明を使って顔を明るく見せるのが効果的です。
自分の後ろ側にパーテーションを置けば、自宅でもオフィスのような雰囲気を演出でき、面接官に見せたくないものを隠すことができます。
声を面接官に届けるには、マイクを使った方が効果的ですし、逆に面接官の声が聞き取りにくいケースを想定してヘッドセットを使う方法も考えられます。
希望する年収・条件で内定をもらうことを考えると、周辺機器への投資は安ければ10,000円以内で済みますから、投資効果は十分と言えます。
周辺機器は、話し相手との距離を縮める大切なツールですから、導入にあたっては手を抜かないようにしたいところです。
オンライン面接を成功させるために、もう一つ注意しておきたいのが、静かな場所を選んで接続することです。
誰でもかんたんに想像できる話ですが、仮に自宅でやり取りすることを許可されたとしても、自宅の近くに線路や道路があれば、電車・自動車の走る音が通信を邪魔することでしょう。
近所に公園があれば、子どもの話し声が耳障りになるかもしれません。
工事現場が近いと、騒音で面接どころではないはずです。
円滑に面接を進めるためには、必要に応じてコワーキングスペース・会議室を借りるなど、静かな環境を探す必要があります。
お祭り・イベントなど、面接当日になってから騒音が生まれる可能性がある場合も想定して、あらかじめスケジュール調整・場所選びを行っておくことが大切です。
第一印象は、面接の出来を左右する重要なポイントになります。
オンライン面接の場合、意識してポジティブな印象を演出できる反面、準備が不十分だと面接官にネガティブな印象を与えるおそれがあります。
また、会話のキャッチボールを進めるにあたり、通信状況によってはテンポよく話をするのが難しい場合が想定されるため、自分のターンで伝えたいことは確実に言い切ることを意識しましょう。
自己PR・志望動機を話す場面においても、できるだけエピソードを盛り込み、自分の性格を良い印象にリフレーミングする意識が大切です。
周辺機器や環境に投資すれば、自分が思っている以上の結果につながるかもしれません。
対面型の面接と比較するのではなく、オンライン面接の長所にフォーカスして準備を進めていきましょう。
オンライン面接は、自分で環境を整えられるのが大きなメリットです。
周囲に相談しながら、もっとも良い印象を与えられるアングルを研究するのも、攻略法になるはずです。