企業・応募者ともに、転職の現場で少しずつ浸透しつつあるオンライン面接ですが、対面でのやり取りに慣れている40代・50代にとっては、距離を感じる方法と言えるかもしれません。
人によっては、オンラインでのやり取りが普及した職場環境を避けるなど、志望動機そのものを左右する重要な問題になるものと推察されます。
2020年10月28日に発表された、エン・ジャパン株式会社の「オンライン面接」実態調査によると、オンライン面接を導入していない企業は56%と半数以上を占めています。
また、オンライン面接を導入していない理由として、
という回答が多く見られ、面接における心理的・物理的な距離の重要性が浮き彫りとなっています。
しかしながら、新型コロナウィルスの影響などを考慮すると、将来的にオンライン面接が普及する流れを止めるのは難しいでしょう。
40代・50代が未来を見据えて転職を検討する場合、もはやオンライン面接は避けられない問題となりつつあります。
ただ、応募者はオンライン面接を毛嫌いする必要はなく、むしろオンライン面接だからこそ得られるメリットを正しく理解することによって、効果的なアピールが期待できます。
志望動機や自己PRなど、自分をより良く知ってもらうための時間を有効に活用する点では、オンライン面接の方が有利になる場合もあります。
この記事では、オンライン面接時代に採用を勝ち取るための志望動機の考え方・伝え方について、文章の作り方・理由の探し方・面接官の思惑に触れつつ解説します。
記事の内容を踏まえた上で、実際にオンラインレッスンを受けると、本番に向けて盤石の体制を築けるはずです。
一概には言えませんが、40代・50代を採用する場合、企業側は将来的に役職を用意することも想定して採用活動を行います。
組織全体のことを考えて貢献できる人材かどうか見極めたいという思惑もあることから、面接官は志望動機についてもシビアに判断するものと考えておいた方がよいでしょう。
応募者が面接を受けるにあたり意識しておきたいのは、入念な企業研究はもちろんのこと、求人情報を深く理解した上で志望動機を構築することです。
具体的には、以下のポイントに着目して志望動機を考えることが、面接官の興味をひくことにつながります。
面接官に志望動機を伝えるとき、40代・50代が念頭に置くべきことは、企業側が「どんな人材を求めて求人情報を掲載したのか」について掘り下げてイメージすることです。
イメージするにあたり、必要な情報すべてが求人情報に掲載されているとは限らないため、コーポレートサイトや四季報などから幅広い情報を集めることが大切です。
特に、企業の事業内容・コーポレートメッセージ・ビジョンなどは、今後社員として働く上でコアになるものですから、志望動機の中で共感する部分に触れておく必要があります。
待遇・年収にとらわれず、自分を企業のために役立てるという目線を持つことが、面接官に訴える志望動機を構成する上での最低条件です。
また、直接自分が担当する業務に関係しない情報も、可能な限り志望動機に盛り込みましょう。
例えば、バックオフィス要員として働く場合であっても、企業の主力商品・サービスに関する興味を示すことで、より積極的な印象を面接官に与えられます。
オンライン面接は、対面時に比べて言葉のキャッチボールが難しい傾向にあるため、自分が話す順番を意識して、制限時間を使い切るイメージで志望動機を伝えることが効果的です。
途中で話すことが途切れないよう、ネタは豊富に用意しておきましょう。
志望動機の中で、企業に対する興味や貢献したい気持ちをアピールする場合、もっともらしい理由を外から持ってくるだけでは不十分です。
人事担当者は、うわべだけの志望動機を数多く振り落としているものと考え、応募先のことを「自分事」としてとらえる意識を持って志望動機を構成しましょう。
具体的には、志望動機の中に「応募者自身の人生」を織り交ぜる手法が効果的です。
異業種の場合は特に、一見自分の培ってきたキャリアとは関係なさそうに見える部分を補強する意味でも、なぜ自分の人生に応募先が魅力的に映ったのか明確に説明できると、面接官に対して説得力のあるアピールができます。
仮に、営業部門から畑違いの法務部に転職することを決意した場合、そこには並々ならぬ理由があってしかるべきですし、面接官にそれを認めさせるだけの動機がなければ採用は難しいでしょう。
営業部門のコンプライアンス強化に携わった・社内の不正防止に向けて法整備に協力した・プライベートで訴訟を経験したなど、法務とどのようなつながりがあったのか、納得できる理由を述べたいところです。
同業種の場合は、キャリアとの関連性をアピールすれば、ある程度説得力のある志望動機にはなるでしょう。
しかし、他の応募者と差を付けたいなら、プライベートに踏み込んだ志望動機を考えると説得力が増します。
上記のように、ネガティブな状況を改善するための転職であることを伝えられれば、面接官も好感を抱くはずです。
誰しも、よそよそしい雰囲気を感じさせる人より、血の通った意見を述べる人に少なからず興味を抱くものです。
過去を振り返りつつ、未来を見据えて志望動機を語る応募者となり、面接官の心をつかみましょう。
自分の人生は、他の誰にも任せることはできません。
仕事や家事は誰かに頼めても、自分の心身をどう働かせるかは、誰もが自分で決断しなければなりません。
だからこそ、志望動機に書く内容は「真に迫る」ものを意識して考えましょう。
応募者が、自分自身を「その他大勢である」と認めてしまうと、面接官は「他の人でいいか」と判断するおそれがあります。
しかし、応募先のことを考え抜いて、自分事として構成した志望動機を聞かされると、面接官は少なからず心を動かされるものです。
一例として、自動車ディーラーに転職する場合を想定すると、以下のような視点から動機を構成するだけで、面接官に与える印象が大きく変わります。
オーバーに言えば、あなたにとって応募先が「かけがえのない存在」であることを志望動機に加えると、強いオリジナリティが生まれます。
愛車に乗っていて事故に遭ったが五体満足だった・家族との思い出を作ってくれたなど、ご縁があったことを強く意識しながら、自分だけのエピソードを考えてみましょう。
40代・50代の時点で転職を志した際、自分の希望とドンピシャの案件が見つかることは、残念ながら少ないものと考えておいた方が賢明です。
志望動機を自分事として構成するのが有利とはいえ、中にはどうしても自分と企業との関係性を見出すのが難しい場合もあるでしょう。
そんなときは、自分の現在の立場から一歩引いてみて、企業貢献をベースにシンプルな動機を考えるのも一手です。
自分事をからめて考えるのではなく、あくまでもその企業が求める実績・スキルに沿う形で、志望動機を構成していきます。
ただ、シンプルにまとめるといっても、タイムラグが生まれやすいオンライン面接において、沈黙は対面以上に目立ちます。
1分半~3分程度の制限時間を想定した上で、自分のペースで話ができるよう、頭の中に十分なボリュームの台本を用意できると安心です。
数ある企業の中から特定の応募先を選ぶ以上、そこには何らかの魅力があるはずです。
しかし、企業側はたくさんの応募者の中から、自社にマッチする人材を見極めようとします。
社風次第で評価は分かれるものの、やはり働いてもらう以上は、企業が自社に少なからず好感を抱いている・興味を抱いている人材を採用したいと考えるのは自然なことです。
だからこそ、応募者は「あえて選んだ理由」を明確にした上で、面接官に自分の意志を伝えましょう。
もちろん、理由は自己本位なものに終始せず、企業に対してどう自分が貢献できるのかを踏まえた上で、動機を考えなければなりません。
自己PRを考えるのと似た部分はあるものの、目的はアピールではなく「その企業を選んだ理由」ですから、似たような表現にならないよう注意が必要です。
参考までに、労務経験者が労務担当のいない企業に役職者として転職するケースを例にとり、自己PRと志望動機の文面の違いを確認してみましょう。
<自己PR>
○○社にて、労務職として10年の勤務経験がございます。 勤怠管理・給与計算・社保・年末調整などの実務に加えて、部下育成に携わった経験を御社で活かせるものと考えております。 <志望動機> ○○社にて、労務職として10年勤務しております。 各種実務・部下育成に携わり充実感を抱く中、自分が部門の中枢で働くことに強い興味を抱くようになり、今回志望致しました。
自己PRでは、どんなスキル・経験を活かせるのかを説明するにとどまっていますが、志望動機では応募者自身の考えも反映されています。
このニュアンスの違いを理解した上で、それぞれを区別することが大切です。
現職を離れる理由・退職した理由を志望動機の中で述べる場合、本音ベースで話をするのは、内定をもらってから、もしくは入社してからの方がよいでしょう。
ごくまれに、経営者が採用を前提として退職理由を確認するケースも考えられますが、基本的にはタテマエを重視して伝えた方が安心です。
面接における「採用される確率が高い人材」は、端的にまとめると以下の2つの特徴を持っています。
具体的にどのような部分が魅力・要素につながるかは、企業により判断が異なります。
ただ、ある程度共通しているのは、仲間との関係を「ポジティブにとらえる」性質があるかどうかです。
この点を判断するにあたり、面接官が重視するのは、現職以前の職場の退職理由です。
本音を言えば、誰しも何かしら思うところがあるからこそ退職を決断するわけですが、それを率直に伝えるのは好ましいことではありません。
退職理由は、基本的に前向きな理由で構成し、ネガティブな要素はどうしても言わざるを得ない部分だけにとどめましょう。
愚痴とは、言っても仕方がないことを延々と嘆くことをいいます。
そして、転職市場は愚痴を許容してくれる環境ではありません。
自分を商品として見立てたとき、その口から無益な言葉ばかりが並べられるとあらかじめ分かっていたら、買い手がつかないであろうことは容易に想像できます。
応募者は、今以上の状態になりたいと願い転職を考えるわけですから、面接で愚痴をこぼす時点でステージを間違えています。
もちろん、直接的に現職あるいは前職の愚痴を言う応募者はいないでしょうが、企業や他スタッフに責任をなすりつけるような他責的な志望動機を考えてしまうと、面接官はそれを聞かされた段階で脈ナシと判断します。
オンライン面接は、対面と同じスピード感で会話が進まない分、自分の発言に注目が集まりやすい傾向にありますから、愚痴ととらえられるようなネガティブな発言には十分注意が必要です。
続いては、オンライン面接に臨む面接官側の心理について考えていきましょう。
志望動機を聞く側の面接官は、応募者が求める人材像に即しているかどうか判断するため、少しでも多くの情報を面接で引き出したいと考えています。
よって、面接官のスタンスに協力的な態度を示すことが、好印象を与えることにつながります。
転職市場では、若年者不足にともなう採用難が続く中で、多くの企業が自社を知ってもらおうと努力しています。
それは中途採用においても同様で、即戦力を求める動きは今後も強まることでしょう。
よって、企業側としては、応募者に対して不用意に圧迫感を与えないよう心掛け、自社に興味を持ってもらうのが、採用活動における基本スタンスとなります。
緊張を和らげるためのアイスブレイク・求人に至った背景の説明など、人事担当者も優秀な人材を確保するため努力します。
面接官も、企業にとって良い結果につなげるため、少なからず緊張しています。
まして、慣れないオンライン面接に臨むとなると、緊張が表に出ても不思議ではありません。
この点について応募者が理解していると、採用する側の思惑を想像しやすくなるはずです。
面接官を理解する上でもう一つ押さえておきたいポイントが、質問内容です。
基本的に、採用に積極的な企業ほど、質問の内容は濃くなる傾向にあるからです。
例えば、退職理由について深く知りたいと考えているなら、応募者が志望動機を伝えた後、面接官から以下のような掘り下げた質問が飛んでくるはずです。
このような質問を浴びせられると、応募者は自分に対して不信感を抱いているように見えますが、実際には逆であり、面接官が興味を持っているからこそ質問が鋭くなるわけです。
質問が鋭くなってきたら、オンライン面接で生まれる会話の間をうまく使って、自分のペースで真摯に回答しましょう。
オンライン面接では、通信状態や環境によって、自分の表情や声が伝わりにくくなるおそれがあります。
普段の会話と違う状況が生じただけで、会話の流れがギクシャクしてしまうこともありますから、対面以上にコミュニケーションには気を遣いたいところです。
そこで、画面上で面接官と向き合う際は、言葉以外の情報を積極的に伝えることを意識しましょう。
具体的には、目線・声の強弱・会話スピード・しぐさなど、身体で意思を表現する「ノンバーバルコミュニケーション」を少しオーバーに行います。
相づちを打つ際のうなずき加減・例を出して説明する際の手の動きなど、面接官に与える印象やイメージに配慮した動きを意識するだけで、評価にも違いが生まれます。
オーバーリアクションをとる必要はありませんが、普段よりもほがらかな印象を与える工夫をしましょう。
40代・50代にふさわしい志望動機を考えるためには、今までのキャリアを踏まえつつ、面接官が納得できる要素を盛り込むことが大切です。
また、オンライン面接という環境で志望動機を伝えるにあたり、面接官の立場に理解を示すことも、採用される確率を高めることにつながります。
自分本位でない志望動機を文章化できれば、あとはそれを適切に伝える技術を学ぶだけです。
事前にオンライン面接のレッスンなどを通して、印象を良くするための動きを学ぶことをおすすめします。
オンライン面接だからといって、過度に緊張する必要はありません。
面接官の思惑を理解して、ポジティブに志望動機を伝えましょう!