安定した立場・給与を得られる公務員は、多くの人にとって憧れの職業の一つに数えられます。
その一方で、公務員の職場が持つ独特の雰囲気につらさを感じて、退職を検討している人も珍しくありません。
民間企業に比べて収入・仕事内容が安定している分だけ、何か新しいことをクリエイトするような機会が少なく、勤務者の適性によっては強い閉塞感を覚えてしまうことも。
人間関係も流動性が少ない傾向にありますから、極端な話、定年まで仲の悪い人と一緒に働くことになるかもしれないのです。
とはいえ、民間企業で公務員の経験をそのまま活かせる職場は少ないため、公務員からの転職には戦略が求められます。
この記事では、人生の選択肢を増やすという観点から、公務員から転職する際の注意点についてご紹介します。
公務員は、応募者が受験の条件を満たしている限り、様々な職業を選ぶことができます。
家族・親族も公務員というケースは珍しくなく、警察官・消防士など憧れの対象となる職業も多いことから、一度採用されたらなかなか辞めようと思わないのは当然かもしれません。
しかし、転職希望者がまったくいないというわけではなく、年代問わず一定の人数が離職している現実もあります。
まずは、公務員の転職について、事情を紐解いていきましょう。
一口に公務員といっても様々な職種があるため、一概には言えませんが、総じて公務員の離職率は男女ともに低い傾向にあります。
一例として「令和元年度 一般職の国家公務員の任用状況調査」の数値をチェックすると、在職者が281,427人なのに対して辞職者が4,981人となっていて、離職率は約2%という驚異的な数値を記録しています。
一般企業の離職率が概ね10%以上であることを鑑みると、圧倒的に公務員の離職率は低いことが分かります。
数字だけを見れば、公務員出身の民間企業勤務者は、非常に少数派であると言えそうです。
民間企業からの転職同様に、公務員を辞めて民間企業に転職しようと考えている人もまた、転職の難易度は年齢やスキルによって左右されます。
特に、アラフォー世代になると、公務員の勤務体制に身体が慣れてしまっていることもあり、民間企業のフレキシブルさについていけないリスクが発生します。
働き方改革によって、勤務時間自体は緩やかになりつつあるとはいえ、その分だけ質の高い仕事が求められるようになります。
一般的なオフィスワークと異なり、組織ごとに職域が異なる公務員は、必ずしも民間企業で即戦力になれるとは限りません。
スムーズに転職を成功させたい場合、士業などの国家資格や、簿記・大型免許のように民間で評価されている資格の取得など、民間で働ける実力をアピールする必要があります。
また、自分ひとりだけで転職のプランを考えず、転職エージェントなどプロの目線でスキルを評価してもらうことも大切です。
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総じて離職率が低い公務員ですが、20代以下に限定すると、一部転職に積極的なケースも見られます。
年齢次第では、民間企業でも第二新卒扱いで働ける可能性が出てくるため、企業の中にも「公務員試験に合格できるだけの実力がある」と評価する採用担当者は少なからず存在しています。
公務員の仕事は、一般企業に比べると固定化しがちなため、そこに堅苦しさを感じている20代なら民間企業を選ぶのも一手です。
ただし、公務員以上の激務・シビアな能力評価に振り回されるおそれもありますから、会社選びは慎重に行う必要があります。
総じて公務員からの転職事例が少ないこともあり、企業担当者・転職エージェントの側でも、公務員採用に及び腰になってしまうケースは十分考えられます。
よって、自分のポテンシャルをどうアピールできるかが、転職の成功につながります。
公務員の立場を捨てて、民間企業等に転職を検討する人は、どのような悩みを抱えて決断に至るのでしょうか。
以下に、公務員から転職したくなる理由について、主なものをご紹介します。
一般的に、公務員は「定時で帰れる職種」というイメージが強いと思います。
しかし、実際の労働状況は職種や勤務先によって異なるため、激務のセクションに回されることもあります。
職場によっては、仮眠含む24時間勤務のシフトが設けられているケースもあります。
就業者の人数次第では、十分な休みが取れないこともあるため、心身に不調を感じて退職を検討する人も。
毎年の予算の中から給与が決まるため、収入が頭打ちになり、残業代が支払われない職場もあるようです。
こういった事情から離職を検討することは、決して不思議ではありません。
職場にもよりますが、公務員は人員の流動性が少ない傾向にあり、部署というくくりで見れば少数での仕事が主体となるケースも多く見られます。
また、施設内で長年働いている職員も多いことから、他の職員と一度仲が悪くなってしまうと、定年までその関係を引きずるリスクがあります。
身近に嫌な人間がいても離れられず、相談することもできない状況では、そのうち仕事へのモチベーションも失われてしまうことでしょう。
新天地に憧れを抱き、求人サイトを見て考える時間が増えるのも、十分考えられる話です。
逆に、不特定多数がやってくる窓口を担当する場合は、理不尽な対応を求めるクレーマー市民とのやり取りが負担になるかもしれません。
一度クレーマーに顔を覚えられてしまうと、しつこく話をされ精神的なダメージが蓄積してしまいますから、早急に職場を離れたいと考えるのは必然でしょう。
公務員に限った話ではないものの、組織内ではいわゆる「組織の論理」が適用される場面が多く、総じて組織が個人よりも優遇される傾向にあります。
例えば公安系公務員の場合、限られた人員を施設内に配置する都合上、スケジュール外の休日が認められないことも珍しくありません。
ワークライフバランスを優先する想定で公務員を選んだ人は、そこで理想と現実のギャップを埋められず、転職を検討するかもしれません。
年功序列の雰囲気が残る職場も少なくなく、転勤が多い幹部クラスは、ベテラン職員との間で人間関係の調整を求められることもあるでしょう。
職場によっては、勤務外のコミュニケーションも重要になり、プライベートが犠牲になることも。
公務員の仕事をスムーズに進めるためには、良くも悪くも人間関係が重要になりますから、固定的な人間関係でのコミュニケーションに苦手意識がある人は、転職に希望を見出そうとするはずです。
給与・待遇面で安定している公務員ですが、自治体によっては給与が低いケースもままあります。
一例として、東洋経済オンラインの『「公務員の年収が低い」自治体ランキング』を見る限り、離島や地方などでは一般企業よりも年収が低い地域が数多く見つかります。
また、若年層はどうしても年収が低くなりがちで、高給を得るには40~50代まで待たなければなりません。
若年層の公務員が、同世代で稼いでいる友人・知人を横目に見て、転職を検討するのは致し方ないことでしょう。
諸々の事情から、公務員を辞めて民間企業等へ転職しようと考えているなら、まずは自分にどのようなニーズがあるのかを知り、転職の選択肢を増やすことが大切です。
以下に、転職する前の段階で準備しておきたいことを、いくつかご紹介します。
公務員が転職する場合、民間企業への転職以外にも、自分のキャリアを有利に活用する方向性がいくつか存在します。
具体的には、大きく分けて以下の4つの方向性が考えられます。
現在の職場からは離れたいが、できれば次も公務員として働きたいという場合、他の職種を選んで転職することも可能です。
年齢的に問題がなければ、通常の採用枠で受験することもできますし、経験者採用を行っている自治体等もあります。
公務員から公務員への転職は、これまでの公務員経験を活かせるだけでなく、職種によっては初任給が多くもらえることもあります。
経済的負担がなく、自分が望む働き方を実現できると思えるなら、他の職種を選ぶことには十分なメリットがあると言えるでしょう。
ただ、書類選考・面接等では、採用担当者に「前職と同じような理由で辞めてしまうのではないか」という不安を与えないよう、退職理由の伝え方に配慮する必要があります。
「前職になかったものが応募先にある」ことを明確に伝え、採用担当者に不信感を与えないようにしましょう。
安定性を捨ててより良い待遇・給与を得たいと考えているなら、民間企業で経験を積むのも一つの方向性ですが、民間企業の採用基準はシビアな一面もあり侮れません。
限られた職域・環境でしか働いた経験がない人材につき、諸手を挙げて採用する企業は、基本的に少数派だと考えておいた方がよいでしょう。
企業の採用担当者は、利益を追求する職場環境に馴染めるかどうか、スピード感を持って仕事に臨めるかどうかをチェックしています。
自分が培ってきた能力に一定の自信があり、難しい仕事にも挑戦したいと考えるようなバイタリティがなければ、民間企業に転職しても早期退職する可能性が高いでしょう。
勝率を高めるには、自分が経験したポジションでの仕事の詳細や、転職理由を具体的に説明することが重要です。
応募先のキャリアとかみ合わない部分は、関連する資格の取得なども含め、アピールポイントを増やしましょう。
公務員からの転職は検討しているものの、民間企業のスピード感に合わせられるかどうか心配な人は、団体職員・特殊会社への勤務を考えるのも一手です。
団体職員と特殊会社の例としては、以下のようなものがあげられます。
<団体職員> ・財団法人 ・独立行政法人 ・医療法人 ・農協 ・NPO法人 など
<特殊会社> ・NEXCO ・JR ・日本政策金融金庫 など
団体職員は、ミッションが営利目的でないという点で、公務員と似たような性質を持っています。
勤務体系が近い分、馴染みやすいメリットがあります。
特殊会社は、利益は追求するものの公共性が高い事業を行っているため、組織の内情も公務員と似通った部分があります。
よって、公務員のキャリアを活かしやすいでしょう。
転職よりハードルが高いものの、公務員を辞めて企業を志すという方法も選べます。
一例として、税務署職員は一定年数以上の勤務経験があれば、税理士試験の税法・会計学に属する試験科目が免除されます。
また、国家・地方公務員として行政事務に携わった経験がある人は、行政書士の資格取得が認められます。
その他、自分が趣味で行っていたことがコンクール・競技会等で良い結果を出せた場合は、その分野で起業を考えることもできるでしょう。
実際にノウハウをどう蓄積するかは、職種によって変わってくるため、すぐに起業を検討せず、事務所等に転職することからキャリアをスタートさせる方法もあります。
いずれにせよ、公務員として長年勤務する中で得られる資格もありますから、転職のタイミングは慎重に考えることをおすすめします。
実際に転職先を探す、あるいはエージェントに探してもらう場合、自分が「なりたいもの」を目指すだけでは不十分です。
仮に、公務員から営業職に転職したいと考えているなら、自分のどういった部分が営業職向きなのか、現職でどんなことを任された結果そう考えたのか、具体的なロジックが必要です。
同じ職種で転職した人の体験談を読むだけでも、イメージがつかみやすくなります。
これから本格的に転職活動をスタートさせるなら、自分の希望はいったん脇に置いて、自分が転職先で貢献できることを考えましょう。
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これから転職を考えている分野と、自分が働いてきた環境とを比較して、その職務の違いを痛感することもあるでしょう。
しかし、そこであきらめることなく転職を成功させたいなら、まずは現職で働きながら必要な実力を身につけることが肝心です。
例えば、現場仕事を辞めてオフィスワークに従事したい人は、その職場で求められる能力が何なのか把握することが第一です。
経理職なら簿記になるでしょうし、人事職なら社労士やメンタルヘルスマネジメント、法務職ならビジネス法務検定などの資格などが有利に働くでしょう。
自分が努力した成果をアピールできれば、応募先も前向きな人材として評価するはずです。
現状の自分に不足があることを謙虚に認めつつ、新しい選択肢を増やす意識を持ちましょう。
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以上、公務員から転職する際の注意点について、人生の選択肢を増やす観点からいくつかご紹介してきました。
公務員から転職後のキャリアについて検討する場合、長期的に稼げるキャリア構築が重要ですが、営利目的でない公務員の立場でキャリア構築を学ぶのは難しい部分があります。
もし、キャリア構築の観点から不安があるようであれば、以下の記事をお読みください。
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