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弱いつながりが強い未来を創る|転職で会社の外に目を向ける重要性

転職のため、現在働いている職場を離れる決意をしても、仕事の忙しさや他の社員に迷惑がかかることなどを考えてしまい、決断が先延ばしになってしまう人は多いかもしれません。

こうした職場の人間関係など、強いつながりは時に人生を生きる上での大きなモチベーションになりますが、一つの企業・業界にとどまったまま人生を終えてしまうリスクもあります。

新しい体験・経験をしたいなら、会社の外に目を向けて、弱いつながりから強い未来を想像する覚悟が必要です。

この記事では、転職を検討しているものの周囲に配慮して決断できない人に向けて、弱いつながりと強いつながりの違いや、会社の外に新しいつながりを作ることの重要性についてご紹介します。

弱いつながりと強いつながり、転職ではどっちが有利?

同じ職場で信頼関係を構築し、末永く働こうと考えるのであれば、できるだけ周囲の人たちと強いつながりを保っておいた方がよいと考える人は多いでしょう。

しかし、例えば近所で暮らすお隣さんや、週に1度通うパーソナルジムのトレーナー、行きつけのバー・スナックで出会うお客さん・ママとのやり取りもまた、人生の大切なエッセンスとなります。

そして、こういった会社の外で生まれる弱いつながりには、ビジネスパーソン独特の打算がからむケースが少ないため、意外にも新しい転職先を見つける際に役立つことがあるのです。

まずは、転職における弱いつながり・強いつながりとはどういうものなのか、弱いつながりがなぜ転職において重要なのか解説します。

人脈には、弱いつながりと強いつながりがある

スタンフォード大学の社会学者、マーク・グラノベッター(Mark Granovetter)氏は、1973年に「弱いつながりの強さ」に関する論文を発表しています。

ここで言う「つながり」とは、人と人との「関係性の強弱」のことです。

具体的には、以下のように強弱を分類できます。

  • 弱いつながり:関係性が弱い人脈(名刺交換だけの会って間もない関係、匿名でやり取りするSNSなど)
  • 強いつながり:関係性が強い人脈(家族、近所の住民、学校のクラスメイト、会社の同僚など)

わたしたちは、強いつながりができれば、お互いの信頼関係も強くなるものと考えがちです。

ビジネスを始めるなど、利害関係がからむ場面では、強いつながりを持つ組織は活発に活動しやすくなります。

しかし、必ずしも強いつながりの構築が最上の人間関係につながるとは言えず、相手を大切に思うからこそ言いたいことが言えない状況に陥ってしまうリスクがあります。

そんなとき、弱いつながりでのコミュニケーションを活発化することにより、発想の転換や新しい可能性の発見が期待できます。

転職を考えることは、これまでのつながりを捨てること

現在の仕事内容に満足していて、これからも同じ職場で働きたいと考えているなら、強いつながりを重視するのは自然な発想と言えます。

自分を支えてくれている他の社員や会社の面々に対して、持てる力を使い貢献することが、そのまま自分へのリターンとなるからです。

しかし、これまで働いてきた職場を離れるということは、個人的なつながりを除いて同僚・上司・部下との関係が継続しない可能性が高いことを意味します。

年賀状やメール・SNS上でのやり取りはあるかもしれませんが、少なくとも同じオフィスでコミュニケーションをとる機会は退職によって失われます。

そして、新しい職場のスタッフとの関係を深めていく努力も求められますから、人間関係も自然と変化していきます。

転職とは、古い強固なつながりを捨てて、新しくも弱いつながりに未来を託す行為なのです。

新しいつながりを「会社の外」に求めるのは自然

転職先が現職の子会社であるなど、グループ会社への紹介などを除いて、転職後は「これまで働いてきた職場との縁が薄い企業」で働くことになる可能性が高くなるでしょう。

また、どの企業でも社員には自社での職務に集中して欲しいものですから、副業はともかく転職活動を表立って認める企業はまずないものと考えるべきです。

複数の企業・職場を見定めるタイミングでは、仮に採用に至らなくてもお互いに負担とならないような、弱いつながりをたくさん持っていた方が有利です。

例えば、自分が働いている企業と直接関係がない企業を友人が紹介してくれた場合、不採用になっても将来の人間関係のダメージになる可能性は低いからです。

転職エージェントによっては、採用後に転職者との交流ができるようなアフターサービスを用意しているところもあり、転職を同時期にした「別の会社にいる同期」とつながることができます。

新しい職場の人間関係に支障をきたすリスクを減らしつつ、悩み相談や情報交換ができるので、転職後の精神的負担を不分散することにもつながります。

転職を想定した場合、新しいつながりを会社の外に求めるのは、とても自然なことだと言えます。

そして、可能な限り弱いつながりを多く持っておくことが、転職の可能性・転職後の充実度を高めるポイントになるでしょう。

  • 転職で役立つ「弱いつながり」について、過去の日系企業の傾向や人間関係について触れつつ、メリット・構築方法・転職への活用法などをお伝えした記事も投稿しています。

会社の外で弱いつながりを構築して得られるメリット

現在勤めている会社の外に弱いつながりを構築することは、自分について複数の観点から見直しをかけることにつながり、ひいては自分の人生にも良い影響を与えてくれます。

以下に、会社の外で弱いつながりを構築することのメリットについて、主なものをご紹介します。

予測不可能な未来にアプローチできる

転職を検討する際、例えば同僚や古くからの友人が味方してくれることは、非常に心強いことです。

しかし、転職先を紹介してもらう場合、「自分の今までの能力」に基づいた評価から転職先をチョイスするケースがどうしても多くなるため、意外性に欠ける点は否めません。

例えば、これまで人事職を担当してきた人の同僚・友人は、やはり「人事もしくは労務」といったイメージで、転職先を紹介しようとするでしょう。

能力や経験に沿って提案しようとする限り、誰しもその能力を活かそうと考えるのは自然なことなので、自分と関係が深い人ほど、これまでの実績と大きく変わらない職業・職場を提案しがちです。

これに対して、会って間もないタイミングの知人や、仕事ぶりについてはよく知らないプライベートでのつながりでは、紹介する側の主観・要望が先に働く場合が多くなります。

人が足りない居酒屋の店長代理の案件を紹介してくれるかもしれませんし、たまたま近所で知った介護職員の求人情報を教えてくれるかもしれません。

もちろん、すべての求人が自分にフィットするものばかりとは限りませんが、現在の仕事に違和感を覚えている状況であれば、そういった提案が新鮮に感じられるはずです。

弱いつながりにアプローチすることで、自分が思ってもみなかった未来が開けるチャンスがあるのです。

打算ではなく価値観をベースにしたつながりを得られる

強いつながりは、共通の知り合いがたくさん存在する中でやり取りをするため、コミュニケーションで得られる情報が近い関係の中で完結しがちです。

しかし、弱いつながりの場合、自分たち以外に共通の知り合いがいないケースも珍しくなく、知り合いの知り合い・友人の友人を通して面識のない人とつながれるチャンスが生まれやすくなります。

例えば、将棋が好きという理由から、SNSで交流を深めている相手がいるとしましょう。

そして、その相手もまた別の相手とコミュニケーションをとる中で、将棋好きの誰かにあなたを紹介する機会があったとします。

そこから、直接面識のない人があなたのアカウントにコメントを残してくれたことをきっかけにして、新しい関係がスタートするかもしれません。

その相手が経営者もしくは人事担当者だった場合、自分がその会社に希望を感じて転職を検討していることを伝えた際、面接まで進む可能性は十分考えられる話です。

このケースにおける弱いつながりとは、例えば転職市場の打算をベースにしたつながりではなく、自分の価値観をベースにしたつながりのことです。

仕事面での相手についてよく知らないからこそ、相手は自分との弱いつながりの中から提案することになるので、結果的に自分にとって新鮮な選択肢を選ぶことにつながります。

コミュニケーションのハードルが低くなる

一概には言えませんが、たまたま相席した人と話が合い、話し相手の悩みに真剣に答えてしまうようなことを経験した人は、意外と多いのではないでしょうか。

筆者もカプセルホテルに宿泊した際、大浴場で見ず知らずの人から転職後のコミュニケーションについて相談されたことがあり、戸惑いつつも真剣に回答したのを覚えています。

お互いについてよく知らない間柄でも、自分の利害と直接関係しない範囲であれば、丁寧に答えようとする人は意外と多いのかもしれません。

インターネット上でも、不特定多数が悩みを相談したり答えたりするナレッジコミュニティサービスは数多く存在しています。

自分のことをよく知らない相手との弱いつながりは、コミュニケーションにあたってお互いの共通理解が少ないため、どうしてもそれぞれの知識・経験をベースに話をすることになります。

それがかえって、自分にはない発想・価値観を学ぶきっかけとなるため、転職においても構築した関係性が役立つ可能性は決して低くありません。

道を聞かれたら真剣に答えようとする人が多いように、人間は、基本的には誰かに頼られると嬉しく感じる生き物です。

自分や周囲の人の力だけに頼るのではなく、これまでの自分が培ってきた人間関係以外に活路を見出すことで、新しい自分の未来を見つけるきっかけになるはずです。

会社の外に新たなつながりを作る3つのポイント

弱いつながりを作るメリットが分かったところで、続いては、会社の外に新たなつながりを作るために重要な3つのポイントについてご紹介します。

以下のポイントを意識してコミュニケーションをとるだけでも、今までの生活では得られなかった新しい発見があるはずです。

現職と関係ない人間関係を作る動線を用意する

仕事が忙しいと、自宅と会社の往復で平日のスケジュールが終わってしまうことも多いでしょう。

しかし、そのままの生活を続けていると、会社以外の人間関係を構築する機会が失われてしまいます。

そこで、多少無理やりにでも、現職と関係ない人間関係を作るための動線を用意することをおすすめします。

帰宅途中でジムに通うなど、普段の帰り道で寄り道できる動線を作るだけでも、不特定多数と接する機会が増えることになります。

ポイントは、普段の暮らしの中で無理なく通える・過ごせる環境の中に身を置くことです。

せっかくの休日を使って習い事に参加するような過ごし方は、かえって体調を崩す原因にもなるため、自分にとって負担にならないよう注意しましょう。

SNSでゆるく他の人とつながってみる

これまでにSNSを始めたことがない人は、一度SNSを操作してみて、自分のアカウントを作ってみましょう。

最初のうちは、自分が興味のある投稿をチェックするなどして、他アカウントへの積極的なアプローチは行わなくて構いません。

そのうち、自分がやっている仕事のことや、昔は趣味としてやっていたことなどを発信して、反応があった人に回答してみましょう。

そういったやり取りを続けていくことで、いつの間にか多くの人とつながる機会が得られるはずです。

注意点として、SNSは不用意な発言が大問題となるケースが多いため、事前にSNS上のマナーを勉強しておくとよいでしょう。

一見誰も傷つけていない投稿に見えても、表現次第では一気に炎上することも珍しくありませんから、まずはInstagramなど写真・動画をベースに投稿するものからスタートすることをおすすめします。

  • 転職活動にSNSを活用する記事を投稿しています。ぜひ参考にしてください。

疎遠になった人に連絡をしてみる

学生時代に仲が良かった友人など、気が付いたら疎遠になってしまっている人がいたら、折を見て連絡してみるのもよいでしょう。

同窓会など、多くの旧友が集まる機会を逃さないのもポイントです。

転職経験者なら、前職でお世話になった人にメール等を送ってみるのも一手です。

そこから「戻ってこないか?」などとアプローチを受けるかもしれませんし、逆に会社を立ち上げるから手伝って欲しいという提案を受けるかもしれません。

十数年会わずにいる人の中には、過去のイメージとまったく違う生き方をしている人もいるはずです。

大きな変化に至った経緯を聞くだけでも、自分の人生にとって刺激になることでしょう。

おわりに

転職は、これまで培ってきた強いつながりを捨てて、弱いつながりに将来を賭ける一面があります。

失敗したときのことも考えて、ゆるくつながれる人脈を複数持っておくと安心です。

SNSのアカウントを作ったり、ジムに通い始めたりするだけでも、何かしらの新しい発見が期待できます。

現段階で転職を考えている人はもちろん、現在勤めている会社に不満がたまっていると感じている人も、将来を見据えて「会社の外の人脈」に注目してみましょう。

この記事を書いた人
オンラインスキルマーケット「Coconala(ココナラ)」にて各種ライティングに携わる。会員登録後半年で確定申告を検討するほど収入が増え、1年後には個人事業主として登録。経理職として幅広い業種への転職経験があり、人事系コラムの執筆も行っている。

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