現在働いている会社に対して何らかの不満があったり、自分の将来に漠然とした不安を感じたりした場合、そのままの生活を続けていても状況は改善しません。
そのことに気付いていても、今の生活を変えることに抵抗を感じて、転職に向けて最初の一歩が踏み出せない人は多いものです。
転職活動は、最初の一歩・スタートダッシュをかける段階が、最も難しいポイントの一つです。
自力で転職活動を始めようとしても、どう進めていけばよいのか・誰に相談すればよいのか分からず、気付いたら無駄な時間を過ごしてしまうのです。
それ以前の段階であれば、うまくいくかどうか分からない転職活動に対して、時間を費やすことそのものをあきらめる人もいるかもしれません。
計画を立てたことはあっても、過去に計画倒れに終わってしまった経験が多い人なら、きっと「どうせ計画通りに進まないなら計画しない」と考えてしまうのもよく分かります。
しかし、人生も病気と同じように、悪い部分を放っておくと大きな問題に発展するおそれがあります。
現状に不満・不安を抱えているなら、結果はともかく「動き出す」気持ちが大切です。
この記事では、
「転職を何度か検討したことがあるけど、実際に行動を起こすことができない」
「転職を計画したものの、結局計画倒れに終わった」
人に試して欲しい、転職の技法をご紹介します。
日本人は、総じて計画を立てる「真面目・勤勉」な国民性といわれています。
よくよく考えてみれば、小学生の夏休みなどで、自由研究や宿題・日記など、様々な形で時間を決めて取り組むべき課題が用意されていました。
児童・生徒たちの取り組みを見ていると、毎年きちんと課題を提出する子どもがいる一方で、夏休みの終わりになって頭を抱える子どもも少なくありませんでした。
筆者もまた、前者だった時もあれば、後者だった時もあります。
実際のところ、まったく計画を立てない・自分がする必要性を感じないという理由で、自由研究や宿題を放っておいた人は少数派だと思います。
どちらかというと、夏休みの初日・もしくはその前の段階から計画は立てていたものの、次第に予定外のことが起こって投げ出してしまうケースが大半だったのではないでしょうか。
マサチューセッツ州・ウェルズリー大学の心理学者、ジュリー・K・ノレム博士は、人間のメンタリティーを以下の2つに分類しています。
防衛的ペシミストは、どちらかというとネガティブな傾向を示すメンタリティーで、何事も納得いくまで調べて入念に準備をする傾向にあります。
何事にも、しっかり段取りを組んで臨み、成功に近づいていきます。
これに対して戦略的オプティミストは、あまり根拠のない中でも自信を持ち、すぐに動き出す傾向にあります。
何事も試しながら成功に近づいていく、トライ&エラー型のメンタリティーと言えるでしょう。
この2つのメンタリティーを比較した際、おそらく「転職するならどちらのメンタリティーの方が成功しやすいか」という疑問が生まれると思います。
結論から言えば、どちらが優れているというわけではなく、それぞれに適した転職活動の方法があるので、一概に転職向きのメンタリティーについて述べることはできません。
ただ、総じて日本人は防衛的ペシミストに属する人が多い、という意見もあります。
よって「動きたいのに動けない」状況に悩んでいる人の多くは、まず防衛的ペシミストの傾向が強い可能性を疑った方がよいのかもしれません。
ただ、潜在的に戦略的オプティミストの傾向を持ちながら、それを抑えつけてしまっているケースも考えられます。
自分の現在の傾向だけでなく、過去にどのようなチャレンジを行ってきた経験があるのかも踏まえながら、いずれのメンタリティーが強いのかを分析する必要があります。
色々と考えすぎて動けない自分を動かすためには、防衛的ペシミストのメンタリティーについて理解した上で、具体的な行動をとった方が効率的です。
逆に、過去にトライ&エラーを繰り返した経験から転職におっくうになっているなら、戦略的オプティミストとしての自分を取り戻す必要があるでしょう。
まずは、防衛的ペシミスト・戦略的オプティミスト、それぞれのメンタリティーに適した転職への取り組み方についてお伝えします。
しっかり下調べをして、段取りを組むことで安心できるメンタリティーを持つ防衛的ペシミストは、気になる部分を一つひとつ調べていく方法が向いています。
将来的に自分がどうなりたいのか、具体的な理想像をイメージした上で、ゴールから逆算して何をすべきなのか予定を立てていく形です。
一方で注意したいのが、段取りの組み方・計画の立て方について、正しい方法を知ることです。
戦略的オプティミストの傾向を持つ人でなくても、物事を進めるにあたり「計画が思い通りに進まない」ことを経験した人は多いはずです。
もともと、誰の心にも、一度計画を立てたなら必ず達成させたいという心理(一貫性の法則)があります。
これは、普段から続けている習慣・人に宣言したことをそのまま続けようとする気持ちにもあらわれており、人は無意識のうちに自分の行動・発言・態度を貫き通そうという心理にもとづいて行動しています。
しかし、計画を立てたことがある人なら分かると思いますが、何事も計画通り・100%物事が進むようなケースは非常にまれです。
ダイエットで体重が自分の思い通りに落ちずに腹が立ったり、旅行中に交通渋滞に巻き込まれたりしてイライラしたりする状況は、多くの人が経験していると思います。
人間には、確証バイアスという傾向があり、ある結論(理想)に対してそれに合致する情報だけを集めてしまうため、それゆえに不都合な情報を省いてしまうのです。
このような事態を防ぐためには、あらかじめ「失敗・挫折」することを想定して、計画を立てることが肝心です。
よって、諸々の段取りを組む際は、先に「それが失敗したらどうするのか」を計画に盛り込んでいきます。
こういったネガティブな要素も計画内容に含めることで、真の意味での計画ができあがります。
自分の理想だけでなく、現実も踏まえた計画設定が、防衛的ペシミストに有効です。
楽観的な要素が強い戦略的オプティミストの場合、防衛的ペシミストとは逆のアプローチで転職活動を進めた方がよいでしょう。
日本人では少数派といわれますが、潜在的にこの要素を持っている人は、少なからず存在していると思います。
普段の生活や仕事の中で、計画をあまり細かく立てず、行動しながら軌道修正をかける人がいます。
こういった人は、行動の中で次の課題をイメージする傾向があるため、かえって入念な計画が発想の邪魔になってしまうおそれがあります。
この傾向を持っている人・あるいは潜在的にそのような要素があると考えられる人は、まず「見る前に跳べ」を意識して行動するのがベターです。
もともと、今までの自分をそれなりに肯定的にとらえることができていると思うなら、そのまま転職活動に進んでしまった方が性格には合っています。
最初は悩みながらのスタートでも、同じことを繰り返す中で抵抗感が薄れていき、次第により良い自分になれるイメージができあがるはずです。
よって、失敗しながら次に向けて戦略を練り、最終的に理想を勝ち取るスタンスが向いています。
ちなみに、著者は十数回の転職を経験した後、最終的に独立しています。
その間、徹底的に計画を練って行動してきたとは言い難い時期もあり、その場の成り行きに任せて行動していたことも少なからずあったように思います。
ただ、振り返ってみると、すべての経験が現在に活きているという実感があります。
今こうして転職に関する記事を書かせていただいているのも、過去の転職経験があってのことです。
また、過去の自分は「公務員志向」の家族に育てられたため、その生き方が至上だと信じて疑わなかった時代がありました。
残念ながら、人生を生きる中で「公務員は自分に合わない生き方」だということに気付いてしまいましたが、それはそれでよい経験だったと思っています。
自分のメンタリティーに合わない生き方を続けていると、それ自体が不幸になります。
「防衛的ペシミストのメンタリティーが自分に当てはまらないのではないか」と感じた人は、いったん生き方を戦略的オプティミスト側に振ってみることをおすすめします。
防衛的ペシミスト・戦略的オプティミスト、どちらのメンタリティーをベースにして行動する場合であっても、注意しなければならない点があります。
それは、できるだけ確証バイアスを省いて行動することです。
あまりに前向き過ぎると失敗から学ぶことができませんし、逆に後ろ向き過ぎると最初の一歩が踏み出せません。
完璧なイメージが先にあると、そこから外れた時に不安やあきらめる気持ちが生まれやすくなりますから、なるべく客観的な視点で計画を立てることが肝心です。
そのために有効な方法が、転職エージェントなど、転職のプロから意見を聞きながら行動することです。
転職エージェントでは、転職市場の事情に精通しているキャリアアドバイザーが、会員の悩みに寄り添ってアドバイスをしてくれます。
また、自分の経歴や適性に合った転職先をピックアップしてくれたり、推薦状などを用意してくれたりと、キャリアアドバイザーは転職のハードルを下げてくれる役割も担っています。
まずは、転職エージェントの会員登録を行い、それからコンサルタントとの面談・情報収集を経て、実際に出願・面接という流れをスムーズに進めていくのが理想です。
しかし、このスタートの段階から行動をためらってしまう人は、行動の難易度を下げる必要があります。
続いては、動こうという意思はあっても、なかなか行動を起こせない人のために、書籍「独学大全」の中から有効な技法を転職向けにアレンジしてご紹介します。
参考文献:独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法
諸々の理由から、行動を起こすのが難しい・計画をどう立てればよいか分からないと考えている人は、まずは以下の方法を試して欲しいと思います。
あらゆる計画に言えることですが、転職活動ではやるべきことを明確にして、具体的な行動に落とし込む必要があります。
ただ、その過程で理想だけが大きくふくらんでしまうと、現実とのギャップに打ちのめされることをおそれて、なかなか足を踏み出すのが難しくなります。
そこで、まずは未来のミニチュアとして、実現したいことを目標に変換していきます。
ここでのゴールは「自分が理想とする会社への転職」とし、そのために進めなければならない段階を細かく分けていきます。
あくまでも一例ですが、最終的に退職を完了する時期を2021年9月30日とした上で、最初はこのような流れで計画を立てていきます。
ただ、計画がこの通り進んでいくとは限らず、人によって転職活動の中でウエイトが大きくなるであろうポイントが変わってきます。
応募企業がそもそも定まらなかったり、書類選考で通らなかったりして、予定がずれ込んでしまうおそれがあります。
そこで、うまくいかなかったポイントが生まれたら、そこで目標を細かくしていきます。
自分がチャレンジできる範囲で、目標を小さくして数値化するのです。
一例として、応募企業が多すぎて選べない場合は、このようにスケジュールを細分化します。
ここで、毎日最低3件の求人情報に目を通すのが難しい場合は、1日1件として全体の予定を延ばす方法も考えられます。
すると、以下のようなリスケが検討できます。
このように、自分が予定内に消化するのが難しい問題が生じたら、それを「自分が可能な範囲まで」小さくするのが、1/100プランニングです。
もともとの目標が大きすぎると感じたら、それを可能な限り小さくして、目標に手が届くところまで近づける技法と言えます。
どのような行動も、まずは着手しなければ始まりません。
せっかく時間をかけて計画を練っても、その計画を実行するために行動できなければ意味がありません。
しかし、わたしたち人間は、0から1へのスタートを切るのが難しい反面、一度始めたことを途中で放り出すのも難しいという傾向を持っています。
これは「オヴシアンキーナー効果」と呼ばれ、人間は未完成で中断した作業を(なんのインセンティブがない場合でさえ)やりたくなってしまう傾向があるのです。
この傾向をうまく利用した方法が、2ミニッツ・スターターです。
具体的な進め方として、求人情報のチェックを例にとり説明していきます。
タイマーが鳴って作業を終えたら、以下の3つの選択肢を用意しておき、いずれか好きな方を「2秒」で選択します。
この時、多くの場合は①を選択することになるため、一度何かを始めればその後の流れはそう難しくなくなります。
逆に、②・③を選ぶようなことがあれば、それはよほど疲れているか、他に重要と思う課題がある可能性があるため、無理をせず軌道修正をかけるのが望ましいでしょう。
少なくとも、2分は前向きな行動を起こすことができたわけですし、その中で今後の作業の進め方を見直すことにもつながります。
始めることに戸惑いや気後れがある人は、まずは2分間のチャレンジから始めてみてください。
わたしたちが行動を起こす時、それを気分や雰囲気に任せていると、いつまでたってもスタートダッシュを切れないまま過ごしてしまうことが多いものです。
実際のところ、効率的に行動するには「人間の行動の傾向」をつかみ、その通りに動いた方が楽になります。
メンタリティーの違いを踏まえつつ、自分に合う形で計画を立てていき、フィードバックを受けながら先に進んでいく。
それは、勉強や仕事と同じく、転職活動にも言えることです。
動けない自分を動かすためには、どうやって自分を動かすべきか、その方法を理解して活用することが大切です。
まずは小さく始め、自分が「行動を起こせたこと」を自信として、少しずつ前に進んでいきましょう。
動ける人と動けない人の差は、たった2分間しかなかったとしたら、今すぐにでも自分を変えられそうな気がしませんか?
不安な気持ちを毎日押し殺して働くくらいなら、一度きりの人生のうち2分間を、自分の未来に充ててみてはいかがでしょうか。