毎月の給料から自動的に天引きされている「雇用保険料」。
雇用保険と聞くと、皆さんは何をイメージしますか?
育児や介護に伴う休業給付もありますが、まずは失業保険をイメージする人が多いのではないでしょうか。
しかし、雇用保険は休業や退職をした時にしか利用できないわけではありません。
実は在職中でも利用することができる制度があるのです。
そこで今回は、「意外と知られていない雇用保険の上手な使い方」についてご紹介します。
“新卒で入社したらこの先は安泰。定年までずっと同じ会社で働き続けることができる。”
誰もが疑うことのなかった終身雇用制度は、もはや日本社会の常識では無くなりつつあります。
さらに新型コロナウイルスの感染拡大により、順調だったはずの業界が思わぬ大打撃を受けたり、「毎日出社する」という働き方さえも変化を余儀なくされたりと、事業や働き方のあり方が多様化せざるを得ない状況となりました。
どんな業界や企業にも絶対の安定などありえない状況の中、もしかすると自分が勤めている会社も予期せぬ不祥事で業績が急に悪化したり、経営トップの入れ替えで大幅な人員削減がある日突然行われたり……。
あなたにも「望まない未来」が待っているかもしれないのです。
そのような未来に備えて今すぐできること、それはズバリ「転職力をつけること」!
転職力とは、すなわち「労働市場での自分の価値を上げること」です。
転職力があれば、いざ会社に残ることが難しくなってしまった時も渋々しがみつかなければならないということにならずに済むでしょう。
または、今の会社にいられなくなったとしても、次のステップへとポジティブに進んでいくことも十分可能となります。
もちろん今の会社で担当している業務を精一杯こなすだけでも成長することはできますが、転職力をつける上では今の仕事を一生懸命にこなすだけでは不十分なことがあります。
なぜかというと、今の会社で取り組んでいることは「今の会社の中でしか通用しないスキル」にすぎない場合もあるためです。
つまり、転職力をつけるという点では今の会社の中だけではなく、どんな企業、部署、職種にでも活かすことのできるスキル、いわゆる「ポータブルスキル」を高めておく必要があるということです。
ポータブルスキルを具体的に挙げると、「コミュニケーション能力」、「論理的思考力」、「交渉技術」、「プレゼンテーションスキル」などがあります。
ビジネスマンであれば誰もが持っておくべき基礎的なビジネススキルということができます。
しかし、誰もが最初から持ち合わせているわけではありません。また、漫然とサラリーマン生活を送っているだけでも得られません。
ポータブルスキルをアップさせるためには、やはり自ら手に入れることに尽きます。
まるでロールプレイングゲームの主人公のように、経験値を上げながらあらゆるスキルやアイテムをゲットしていくことに非常に似ているのです。
私たちも転職力を高めるためには、RPGのキャラクターさながらにストーリーを展開させながら経験値を積んでいくしかないのです。
ポータブルスキルをアップさせるためには、やはり日々の地道な自己研鑽は欠かせません。
そこで雇用保険料を支払っているすべてのサラリーマンにおすすめしたいのが、雇用保険の「一般教育訓練給付金」という制度を活用して学ぶことです。
一般教育訓練給付金は、会社員が働きながらビジネス系の資格取得や検定試験のために利用した講座等の受講費の一部を、国が負担してくれる制度です。
上限を10万円とし、かかった費用の20%の金額が支給されます。支給額が4千円以下の場合は支給されません。
被雇用者が自らスキルアップに取り組むことは国全体としての雇用の安定にもつながることから、ビジネス関連の資格や各種検定など、かなり多くの講座を支給対象としています。
具体的には、英会話教室の受講費やTOEIC対策講座、簿記検定、宅建、税理士、FP関連の資格など、その種類は実にさまざまです。
通学タイプだけでなく、オンライン講座も対象とされているため、自身の生活スタイルに合わせて仕事と両立しやすい学び方を選ぶことも可能となっています。
ただし、講座であれば何でも支給される訳ではなく、厚生労働大臣の指定を受けたものでないと対象とはなりませんので注意が必要です。
学びたい分野が定まっている場合は、厚生労働省が提供している検索システムから直接支給対象の講座を検索してみるとよいでしょう。
こちらのサイトから「分野・資格名」または「スクール・キーワード」をもとに検索することができますので、学びたいものがボンヤリとしている場合でも、支給講座にどんなものがあるのか具体的にイメージすることができます。
教育制度の利用例① 英会話
オンライン英会話スクール「グローバル・コミュニケーションズ」 自宅やオフィスなどにいながら、通学する必要なくパソコンや電話を使って英会話を学ぶことができます。今年で22年目を迎えた歴史のあるスクールです。
一般教育訓練給付金に加え、より専門的な職業を目指す講座や専門職学位を取得するための大学院進学などを対象にした「専門実践教育訓練給付金」という制度もあります。
雇用保険法の改正により、平成26年10月より従来の教育訓練給付金(教育訓練経費の20%(上限額10万円)、訓練期間:最長1年間)に加え、新たに中長期的なキャリア形成を支援するために「専門実践教育訓練」が創設されました。
引用元: 専門実践教育訓練給付金に関するよくあるご質問 (厚生労働省)
厚生労働大臣が指定した専門実践教育訓練の講座を受講し、一定の要件を満たす場合は、教育訓練施設に支払った教育訓練経費の最大で70%(最長3年間の訓練期間で上限額は168万円)を支給します。
一般教育訓練給付金は雇用保険の被保険者であれば誰でも受給することができるものの、「同じ会社に3年以上雇用されている」ことが受給条件となります。(ただし、初めて受給する場合は1年以上で受給可能)
以前、一般教育訓練給付金を利用した場合でも、前回の利用から3年以上経過すれば再度利用することができます。
さらに転職をしている場合は、雇用保険の空白期間が1年以内であれば転職前と転職後の会社での雇用期間を通算することもできるなど、被雇用者にとって比較的利用しやすい制度でもあります。
教育制度の利用例② エンジニアコース
【DIVE INTO CODE】 本気の大人のためのエンジニアスクール(教育訓練講座名:機械学習エンジニアコースでは、一定の要件を満たす場合に最大56万円のキャッシュバックが受けられます。)
給付金を受けるには、教育訓練講座を受講後に本人がハローワークへ直接領収書や証明書類(講座を受けた教育機関から発行される)を提出し申請する必要があります。ただし、場合によっては郵送で手続きを行うことも可能です。
申請期間は「講座の受講終了日翌日から1ヶ月以内」と短く設定されていますので、あらかじめ手続きの心づもりをしておく必要があります。
具体的な手続きについては、講座を受講する前に厚生労働省が発行している以下のリーフレットやサイトを参照しておくことをおすすめします。
教育制度の利用例③ 電気工事士
株式会社翔泳社アカデミー (教育訓練講座名:第二種電気工事士 短期合格特別講座、総合コース<筆記対策・技能対策>税抜55,000円・技能コース<技能対策>税抜36,000円)
失業保険や育児・介護休業給付と異なり、一般教育訓練給付金制度は会社側から積極的にアナウンスされる機会が少ないのが実情です。
サラリーマン生活が長いにも関わらず、一度も利用したことがない人が多いようです。
しかし毎月保険料を支払っているのですから、雇用保険を失業保険でしか使わないのはもったいないもの。
前回の利用から3年以上経過すれば、再度利用することもできるのです。
計画的に利用すれば、継続的に自分のスキルアップに活用することができることをぜひ知っていただきたいと思います。
誰もが先の見えない未来。
このように漠然とした不安を抱えてしまうことは当たり前です。
ポータブルスキルを向上させ、少しでも転職力を高めておけば、未来への不安感をいくらか和らげることはできるはずです。
そして、どうせなら自分自身をRPGのキャラに見立て「最強キャラ」になるべく、日々の研鑽をしてみてはいかがでしょうか?
転職力アップへの道のりが、もっと楽しくなるはずです。
あなたもぜひ雇用保険を活用して、「転職力アップへの第一歩」を踏み出してみてくださいね。
毎月の給料から自動的に天引きされている「雇用保険料」、内容を知らないままに全く利用したことが無い方が多いものです。
他の保険と同じように見直すして、「失業時の給付」以外の使い方も検討してみてはいかがでしょうか?
教育に時間をかけて自分に投資すると、本当の意味でのセーフティネットを得られることがあります。