ニューノーマルのサラリーマンの生き方指南

あなたが市場価値の低い人かどうか、残酷なまでに見極めるリサーチ方法

転職して新しい仕事を探す際に、求職者が知っておきたいのが「転職市場における自分の市場価値」です。

製品・サービスなど、世にあるすべての商品には価値があり、何らかの形で需要と供給の関係が成立しています。

供給過多ならば値段は下がって買い手市場になりますし、逆に需要過多ならば値段は上がって売り手市場になることが予想されます。

転職市場においても例外ではなく、自分が応募する職種について、企業側の需要を満たせるスキル・経験があれば評価は高くなりますが、ありふれた能力しか持ち合わせていないと判断されれば市場価値の低い人として評価されるかもしれません。

特に気を付けたいのが、現職における自己評価と転職市場における評価の違いを理解しないまま、転職活動へと進んでしまうことです。

転職経験が少ない人は、自分のスキル・経験・役職などが転職市場でどのように分類・評価されるのかイメージできず、思うような結果が出ないまま途方に暮れてしまう可能性があるのです。

これを防ぐためには、現職における自己評価から離れて、自分が持つ一つひとつの能力・経験を掘り下げて分類し直す必要があります。

この記事では、現段階での自分の能力を見直すポイントと、自分の市場価値を見極めるための「転職の技法」についてご紹介します。

現職での評価は、必ずしも真実とは限らない

現在働いている職場である程度の地位を確保し、周囲の人間関係において大きな衝突なく仕事ができていたとしても、それはあくまでも「現在の職場に限った話」である可能性が高いため、転職活動中にギャップを感じてしまう人は少なくありません。

転職市場では、求職者は自己評価よりも低い評価を受けるケースが多いため、そこで現実を知って転職をあきらめる人も珍しくないのです。

ただ、そのことを十分に理解した上で転職活動を進められるなら、自分を客観的に見つめる能力がある人材として評価されるでしょう。

現職に大きな不満はないものの、ステップアップを目的に転職したいと考えている人は、あえて一度厳しい現実に目を向ける勇気が求められます。

会社の人間関係は、そのほとんどが「かりそめ」である

勤続年数が長くなるにつれて、職場によってはある程度人間関係が固定化されます。

すると、次第に自分の働き方にも変化が少なくなり、当たり前の日常として仕事をこなす日々が長く続きます。

部署によっては、朝礼から終業まで、ほぼノートラブルで仕事が進んでいくこともあるでしょう。

順当に役職に就けば、仕事は部下に任せる場面が増えていきますから、気が付いたら社内でもそれなりの権威を持っていた、という人は少なくないはずです。

そうなると、部下や取引先からも、本音はともかくうわべだけは周囲からちやほやされる場面が多くなるはずです。

自分の仕事内容を正しく理解して、相応の評価を下してくれる人は、ひょっとしたら自分の近くにはほとんどいないかもしれません。

自信の根拠が現在の環境に依存するものだとしたら、それは自分の客観的な評価とは言えません。

ステップアップ目的の転職を目指すなら、社内における自分の立場・スキルにつき、一度転職市場のフィルターを通して判断する必要があります。

分かりやすい方法としては、転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談する・近い業種で働いている友人や知人に自分のキャリアを判断してもらうなど、他人の意見を聞くことがあげられます。

自分一人でスキルを分析しようと思っても、なかなか客観的な視点を保つのは難しいため、転職を検討する前に客観的な評価をできるだけ集めておきましょう。

社内ルールへの精通≠市場価値

一つの職場にとどまっていた時間が長く、転職の経験そのものが少ない人は、転職市場で価値のある能力・経験について誤解していることも珍しくありません。

代表的なものの一つに「社内ルールへの精通」があげられます。

社内ルールとは、一言でいうと「その会社の中でしか適用されないルール」のことで、就業規則や作業マニュアル・使用するソフトウェアの運用方法などが該当します。

大企業になると、自社専用のシステム・ソフトウェアを使って仕事をする場面が多く、その環境を当たり前のように思ってしまう人は少なくありません。

しかし、長年培ってきた技術がすべて「現職の社内ルール」にのっとったものだとすると、それを新しい環境で矯正するのはかなり時間がかかるものと予想されます。

そのため、現職で培ったスキルが、他の企業で通用するかどうか知らないまま転職活動を始めると、スタートからつまずいてしまうおそれがあります。

まずは、現在自分が取り組んでいる仕事の作業環境が、他の職場とどう違うのかを把握しておきたいところです。

利用しているソフトウェアが自社独自のものかどうか・現職を離れても応用できる要素はあるかどうかなど、一つひとつ目の前の当たり前を疑うことから始めてみてください。

資格と経験だけでは通れない壁もある

勤め先を問わず重宝される条件としては、資格・実務経験などがあげられます。

これらは確かに多くの企業における採用試験において有効であり、一定の資格・実務経験がなければ応募さえできないケースも珍しくありません。

在職中に何とか時間を捻出して、様々な資格を取得したという人もいるでしょう。

しかし、転職は資格と経験だけがすべてではなく、年齢によっても評価が分かれてしまう一面は否めません。

持っている資格の種類や数・実務経験に文句がなかったとしても、年齢相応のキャリアを積んでいないことが分かった場合、そこがネックになるかもしれないのです。

40~50代で、プロジェクトに「参加」したことは多くても、プロジェクトを「主導」する立場は未経験だったとしたら、応募できる条件はその分だけ少なくなります。

やはり、企業は年齢相応の椅子を求職者に用意しようと考えているため、単純な営業経験・事務経験だけで比較するのであれば、より若い年代を欲しがることでしょう。

市場価値が高いか・それとも低いかを分ける要素には、残念ながら「年齢相応」という条件が加わります。

そして、現職におけるキャリアが年齢相応のものかどうかは、転職先が求める条件に応じて変わってきます。

ある企業では必要十分と判断されるかもしれませんが、別の企業では不十分なキャリアと評価されるかもしれません。

転職活動を続ける中で、転職市場が求める能力と、自分が持つスキル・経験との間に差が生じている場合、応募先を今一度考え直す必要がありそうです。

「自分の市場価値は低い?」と感じた場合の心構え

転職エージェントなどに登録して、自分の能力を客観的に評価していくうち、自分の能力に不安を覚えるケースは珍しくありません。

自分の市場価値の低さを、まざまざと見せつけられてしまうと、落ち込むのは無理もありません。

しかし、自分の能力について、現職で培ったキャリア以外の側面からもとらえ直してみると、意外と新しい道が見えてくるものです。

転職をあきらめる前に、以下のポイントを踏まえつつ、再度転職先を探してみてください。

あなたの当たり前は、誰にとっても当たり前ではない

人はよく「そんなの当たり前」とか「ウチでは当たり前のことだから」などと、当たり前という言葉を気軽に用います。

しかし、実際のところ本当にそれが当たり前かどうかは、地域や環境に大きく左右されます。

例えば「ビジネスマンなら時間を守ることが当たり前」というコンセンサスは、あまり疑われることはありませんが、具体的な時間の感覚は人それぞれです。

会議室に17:00集合というルールがあったとして、16:50までに到着しているのが当たり前だと考えている人もいれば、17:00ちょうどに集まるのが当たり前だと考えている人もいます。

地域によっては、30分程度遅れていても問題ないと考えるところもあるかもしれません。

自分のキャリアにおいても同様で、今まで総務しか担当したことがないからといって、これからも総務職として働くのが当たり前とは限りません。

自分の能力を活かせる環境があるなら、総務職というフィールドにとらわれず、新しい職場を探すことは十分可能です。

あなたの得意は、他の人の不得意かもしれない

今までの自分とは異なるキャリアを模索する場合、仕事として続けてきたことだけにとらわれず、自分が得意とすることをメインに転職をイメージしてみましょう。

「あなたの得意なことは、他の人の不得意かもしれない」という視点から、自分の能力を掘り下げて考えていきます。

例えば、これまでにマニュアル車の運転を長年続けていて、クラッチやシフト操作に抵抗なく運転できるスキルがあるなら、大型免許を取得してトラックドライバーを目指すという方向性もあります。

企業によって待遇・条件は様々ですが、年齢不問という条件を掲げているところも多いため、比較的採用枠は広いものと推察されます。

犬の散歩をしたり、猫の世話をしたりするのが好きな人なら、ペットにまつわる業界への転職を検討するのも一つの選択肢です。

もちろん、自分のキャリアの中で特に得意だと感じた仕事に絞って、転職先を探すのもよいでしょう。

重要なことは、客観的な分析に傾倒するあまり、自分の市場価値にこだわり過ぎないようにすることです。

現職と同じ業種・職種において、自分が思っていたより市場価値が低いと分かった場合であっても、過度に落ち込むことなく別の道を探る柔軟性を持つことが大切です。

自らのキャリアに「専門性」をプラスするための戦略を練る

自分の市場価値を高めるもう一つのアプローチとしては、自らのキャリアに何らかの形で「専門性」をプラスできるような戦略を練る方向性が考えられます。

現職に関連する上位資格の取得・投資による収益増・ボランティアなどへの参加に伴う特殊な経験の蓄積など、休日を利用して在職中にできることを試していくようなスタンスです。

在職中にできないことを無理にする必要はなく、あくまでも自分にできる範囲でキャリアを補強していくイメージです。

会計事務所に転職するケースを例にとると、日商簿記2級のみ取得している人材と、日商簿記1級に加えて税理士科目合格している人材とでは、後者の方が圧倒的に魅力的です。

人事として働くかたわら、ホームレスの自立支援や就職支援に携わった経験があれば、SDGsの取り組みに積極的な企業からラブコールを受けるかもしれません。

今のキャリアに不満や不安が生まれる結果になったなら、それを今からカバーできる方法はないか、考え続けることが未来につながります。

自分の市場価値を見つけ出すための「転職の技法」

ここまで、在職中に自分の客観的な市場価値を知ることの難しさ・自分の市場価値が低いと感じた場合の心構えについて、いくつかお伝えしてきました。

しかし、自分の得意分野を転職にからめて考えようと思っても、転職市場でそれらがどのようなスキルに分類されるのかイメージできず、自信を持って応募書類に書けないと考えてしまう人も多いと思います。

そこで今回は、著書・独学大全の中で紹介されている「シネクドキ探索」という方法を応用した、スキルの市場価値を判断する方法をご紹介します。

参考文献:独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法 

この転職の技法を用いることで、自分のスキルが転職市場においてどの位置にいるのか・応用できる分野は他にないのか、ある程度当たりをつけて戦略を練ることができるようになります。

参考情報として、図説や役に立つサービスも一緒にお伝えしていきます。

使いこなすのに時間がかかるかもしれませんが、希望する職種に合わせて自分の売り込み方を考える手間が省ける分、合理的な方法と言えるかもしれません。

知りたいスキルについて「○○は何の一種か?」「○○は何に属するのか?」と、自問自答しながら掘り下げていく

※出典元:リサーチ・ナビ 国立国会図書館

仮に、求職者が営業職として長年仕事をしてきたのであれば、営業のスキルがどういったものに含まれているのか・何とつながりがある分野なのかを洗い出していくと、様々な要素が見えてきます。

国立国会図書館のリサーチ・ナビというサービスを使えば、営業に関連するキーワードを紐解いて紹介してくれますから、自分の営業活動はどういった分野の要素が強いのかを見出す参考になります。

役職者として法務実習などに携わった経験があるなら、商法・民事法の分野で少なからずキャリアを積んでいることになりますから、転職にあたりそこを強化する方向性で考えることができます。

ターゲットの絞り込みやプロモーションにまで携わっているなら、マーケティング分野のスキルとしてアピールできるものはないかを探っていくことになるでしょう。

これらは自分の役職・資格に関しても言えることで、リサーチ・ナビで気になる分野が出てきたら、そこをスキルとして掘り下げて、自分がどう貢献できるかを考えていきます。

極端な話、スキルの種類はどんなものでもよく、趣味や特技など自分がビジネススキルとして認識していないものであっても、まずは可能性として掘り下げます。

掘り下げたスキルについて、さらに「○○は何の一種か?」「○○は何に属するのか?」と自問自答を繰り返していく

※出典元:リサーチ・ナビ 国立国会図書館

  

先の手順において、マーケティングの部分を掘り下げてみようと考えた時、求職者はこれらのどの分野にフォーカスして考えるべきか頭を悩ませると思います。

上記の図説においてイメージしやすいのは「調査・ビジネススキル・学習」の分野ですが、これ以上のポイントを具体的に掘り下げていくためには、別途自力でスキルを掘り下げる必要がありそうです。

※出典元:リサーチ・ナビ 国立国会図書館

  

そこで、新たに図説を作成し、今度は求職者が営業として働く中でマーケティングに携わった分野を細かく分けていくことにします。

すると、過去に用いた調査方法・ビジネススキルとして現場で実践できたことを、大まかな形で分けることができました。

今回の例で求職者が特筆すべきポイントとして、YouTubeやInstagramでのマーケティング経験をあげています。

現職で実験的に行ったマーケティングの一つで、会社の「中の人」として商品レビューを行っていた経験を掘り下げた形です。

ただ、これらの調査・ビジネススキルによって得られた成果は、別の企業も同様に再現できるものとは限らないため、まずはこれらの経験が転職市場においてニーズがあるのかをチェックすることが第一です。

 調査によって把握できた自分のスキルについて、その上位概念・下位概念を洗い出していく

※出典元:リサーチ・ナビ 国立国会図書館

  

今まで掘り下げてきたスキルについて、図説の通り気になるポイントを掘り下げていくと、それぞれの上位概念・下位概念と言うべきものが見えてきます。

その流れを矢印でまとめると、マーケティングは調査・ビジネススキルの上位概念と言え、オフライン調査は調査の、企画はビジネススキルの下位概念と言えます。

ここまで掘り下げて考えるのは、もちろん何が上位で何が下位かを単純に仕分けるためではなく、求人条件をより詳細にチェックするためです。

具体的には、求人情報の中に書かれている業務内容・組織構成・理想の人材像などをチェックして、自分が得た上位概念・下位概念に当てはまりそうなものはないか、チェックを入れていきます。

もし、自分が望む待遇・条件を満たす複数の求人情報の中に、共通の概念が含まれているなら、応募資格があるものと判断できるでしょう。

逆に、求人情報を見る限り、自分のスキルやそれに類似する概念を見出せそうにないなら、自分とは距離が遠い求人と推察できます。

おそらく、営業職として転職先を検討する場合、

  • 販売する商品
     
  • 対象となる顧客(BtoCなのかBtoBなのか)
     
  • 営業スタイル(ルート営業等)
     
  • 管理職なら要求されるマネジメント経験年数

これらの条件をベースに、転職先を決める人が多いのではないでしょうか。

シネクドキ探索を活用できれば、上記以外の「自分だけの強み」を活かした選考基準を設けて、複数の求人情報をチェックできます。

例えば、SNSやYouTubeのコンテンツを通じた企画営業など、よりニッチな分野への方向性を模索することもできます。

Googleなどの検索エンジンで「YouTube 営業 マーケティング 転職」などと検索すれば、そのキーワードを満たす求人が見つかります。

例えば、マンガコンテンツの発信による広告などに携わる場合、年齢問わず応募できる可能性もあります。

このように、応募する企業や職種の幅を広げる意味で、シネクドキ探索はとても役立ちます。

求人サイトから求人をチェックする場合は、特にこの方法が有効ですから、ぜひ試してみて欲しいと思います。
 

おわりに

以上、自分の市場価値を詳細に判断するための「転職の技法」についてお伝えしてきました。

カルテ・クセジュを用いた自己分析が、どちらかというと転職全体の方向性を考えるものであるのに対し、シネクドキ探索は自分のスキルや経験が転職市場でニーズがあるかどうかをチェックするための方法と言えそうです。

より直接的に、自分のスキルと転職市場のニーズを結びつける方法のため、掘り下げて考えれば考えるほど可能性は多く見つかるものと思います。

待遇や条件ありきで求人情報を見ていると、いつしか「自分ができること」を飛び越えて高望みしたり、逆にどこかで無理をする覚悟を決めてしまったりします。

しかし、長い目で見た時に、いつかその決断を後悔する日がやってくることでしょう。

自分の納得のいく転職を成功させたいなら、自分の中にあるリソースに目を向けて、戦略を立てることが第一です。

今回お伝えした技法が、読者の皆さまの成功につながれば幸いです。

自分にとって重要性の低い技術が、実は他の人にとって貴重であるケースは十分考えられます。
 
年齢によっては、パソコンを触れるだけでもプラスに働くところもありますから、使えるスキルは何でもアピールしておきましょう!


  

この記事を書いた人
オンラインスキルマーケット「Coconala(ココナラ)」にて各種ライティングに携わる。会員登録後半年で確定申告を検討するほど収入が増え、1年後には個人事業主として登録。経理職として幅広い業種への転職経験があり、人事系コラムの執筆も行っている。

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