尊敬する人・敬愛する人がいると、自分の物事の見方・考え方に、少なからずその人物のエッセンスが含まれていきます。
そのエッセンスは、大抵の場合はよい方向へと自分の価値観を変化させてくれるものですが、選んだ人物によってはかえって悪影響となり、時に道を踏み外してしまうおそれさえあります。
自分あるいは他者に大きな影響力をもたらす可能性のある「尊敬する人」の存在は、しばしば面接など転職・採用活動の現場でも重視されます。
応募者に尊敬する人物はいるのか・具体的に尊敬する理由を説明できるか確認できれば、応募者の「仕事に対する姿勢・企業との相性が分かる」ものと考えている企業が一定数存在しているからです。
ただ、ご存じの方も多いと思いますが、企業側が尊敬する人について直接面接の場で応募者に質問することは、就職差別の観点から慎重な対応を必要とします。
そのため、転職活動を円滑に進める目的で尊敬する人を探す行為は、決して必須ではありません。
しかしながら、尊敬する人の存在は、転職活動のみならず人生を生きる上で大きな支えとなります。
そして、間接的に転職活動の助けになるメリットもあります。
この記事では、採用活動において尊敬する人を質問することがタブー視される理由と、応募者が面接・自己PRの場面で「特定の人物に対する尊敬の気持ち」を応用する方法についてご紹介します。
人事職に携わったことがある人なら常識ですが、面接においては「公正な採用選考」が求められるため、企業側が本人の適性・能力に直接関係しない質問を求職者に行うことはNGとされます。
ただ、尊敬する人についてたずねることは、採用する側にとって相応の魅力があることも事実です。
まずは、採用選考の観点から、尊敬する人を求職者にたずねることのメリット・リスクをまとめてみました。
求職者としては、以下の情報を頭に入れて、企業を選ぶ上での参考にして欲しいと思います。
厚生労働省では、採用のためのチェックポイントとして「公正な採用選考の基本」についてまとめています。
その中で、
の2点が基本的な考え方として紹介されています。
これらを実現するためには、応募者の適性や能力とは関係ない事柄で採否が決定されるような状況を防ぐ体制の構築が求められます。
具体的には、適性・能力に関係しない事柄を応募用紙に記入させたり、面接で質問したりしないようルールを決める必要があります。
仮に「適性・能力と直接関係しない質問を採用基準に含めない」と社内で定めていたとしても、把握した結果選考の過程において少なからず影響を与える可能性があるため、就職差別につながるおそれがあると考えられています。
また、障がい者・難病のある人・性的マイノリティなどに該当する特定の応募者を事前に排除するようなことは、特に避けなければなりません。
配慮すべき事項の例としては、主に以下のようなものがあげられます。
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
出典元:公正な採用選考の基本|厚生労働省
上記の通り、尊敬する人物に関することは、思想・信条に関わることとして分類されており、企業側が応募者に聞く場合、特別の配慮が求められます。
応募者としては、それを踏まえた上で、応募する会社のモラルを見定める必要があるでしょう。
面接官が尊敬する人について質問することがNGだと知っている応募者の中には、それを聞かれた段階で内定を断ろうと考えてしまう人もいるかもしれません。
質問の内容・方向性や面接官の態度によっては、その段階で「自分が就職差別を受けている」と判断する人物がいてもおかしくないからです。
分かりやすい例として、中途採用の面接で、面接官の質問に対して応募者が「両親」などと回答し、それを聞いて面接官が失笑したとします。
新卒の就活においては、身近に尊敬できる人がいないなどの理由から親をあげる人が多いため、面接官が「ありきたりな回答」・「親離れできていない」などの心象を持つケースは十分考えられます。
まして、一定の年齢を迎える中途採用者がそのような回答をするわけですから、先入観からその段階で不採用と判断してしまう未熟な面接官がいないとも限りません。
しかし、冷静に考えると、面接官側から尊敬する人を質問しておいて、詳しい理由を聞かずにネガティブな反応を見せるのは、人間性を疑われても仕方のない行為です。
また、両親を尊敬するだけの圧倒的な・説得力のある理由があるとしても、その反応を見た段階で応募者は熱意を失ってしまい説明を拒否する可能性があります。
何より、SNSが普及した現代において、企業側の応募者に対する対応ミスは致命的なものになるおそれがあります。
こういった一連の流れをSNSで発信され、企業名を出され、あげくの果てに録音した内容まで公開されたら、イメージダウンは必至です。
訴訟を検討したとしても、まっとうな理由があれば、ダメージを補てんするだけの賠償金を得ることは難しいでしょう。
むしろ、この場合は配慮が不足しているのが企業側ですから、圧倒的に分が悪い状況と言えます。
ここまで幼稚な例はまれだと思いますが、応募者に尊敬する人を聞く行為に対して、多くの企業は少なからずこのようなリスクを負っていることを自覚しています。
よって、尊敬する人について直接聞かれるケースは、今後どんどん少なくなっていくことでしょう。
先にお伝えした諸々の事情から、尊敬する人を直接応募者に聞くことは、今後少なくなっていくことが予想されます。
しかし、応募者の「尊敬する人」が分かれば、企業側は応募者のパーソナリティーをより細かく理解することができます。
人が誰かの名前を尊敬する人としてあげる場合、そこには人として生きる上での憧れ・思い入れ・影響などが隠れています。
具体的には、坂本龍馬を尊敬しているなら「鎖国時に世界を見据えていたスケールの大きさ」・ヘレンケラーを尊敬しているなら「視覚・聴覚が不自由な中でもあきらめずに世界を動かした行動力」といったように、人は自分の理想像を尊敬する人に投影している場合が多いものです。
そこで知る応募者の価値観から、自社の社風に合う人材かどうか・採用を予定している部署で好印象を得られるかどうかなど、細かいパーソナリティーを把握・推測できます。
尊敬するに至ったエピソードが魅力的なら、その表現力も評価対象となるでしょう。
特定のビジネスパーソンを尊敬していると応募者が回答した場合、自分がまだたどり着いていない境地・将来的に到達したいイメージ像など、応募者の自己分析が深いレベルで行われているかどうかの判断基準として質問を用いることもできます。
こういった点から、採用活動において「応募者の尊敬する人」に含まれる情報量は多いため、面接官は十分配慮しつつも本音は聞き出したいと考えているのです。
応募者が尊敬する人の情報は企業側から聞きにくいものですが、応募者側から積極的に開示することも認められていない、というわけではありません。
あくまでも、企業側から積極的に回答を求める姿勢が就職差別につながるおそれがあるというだけで、自己PRの中に自分が尊敬する人の情報を混ぜて発信することは問題ありません。
企業側の事情を踏まえた上で、あえて戦略的に「自分の理想像としての尊敬する人」を頭に思い浮かべておけば、面接でのやり取りがスムーズになる可能性があります。
以下に、転職活動の戦略の一つとして「尊敬する人」を設定する場合のポイントをお伝えします。
心底尊敬している人についてまとめようと試みる場合、その思い入れの強さから面接官に共感してもらえるかどうか判断がつかない・もしくは明らかに共感してもらえないであろう内容まで、面接時に話してしまうおそれがあります。
これに対して、セルフイメージを分かりやすく伝えるため、便宜上尊敬する人を設定した場合、それがよい意味でペルソナの共有につながります。
設定した人物が広く知られている人であればあるほど、共感を得られる可能性は高まります。
可能であれば、業種・職種・ターゲット企業の社風などに即した人物の情報を頭に入れて、自己PRを練りたいところです。
具体的にターゲットとなる人を設定する場合、なるべく企業に対して好印象となる人物が望ましいでしょう。
現代で活躍する人物はもちろん、歴史上の人物・故人をあげても構いません。
注意点としては、評価が二分されるような人物・日本中もしくは世界中で悪人として認知されている人物を選ばないことです。
ヒトラー、スターリン、ポル・ポトなどは論外として、チェ・ゲバラのようにすべての人が評価するとは限らない人物も対象となります。
他には、各国の大統領・新興宗教の教祖なども、思想面をチェックされるおそれがあるため好ましくありません。
戦国時代の武将であれば、知名度もありドラマなどにもなっているので、尊敬すべきエピソードがあるなら問題ないでしょう。
経営者・芸能人・著名人などを設定する場合も同様で、総じて好感度が高い・評価されやすい人物を選ぶことが肝心です。
尖った意見を求める社風だとリサーチできている場合を除いては、世間で高い評価を得ている人物・十分な実績のある人物・取り組みが素晴らしい人物にフォーカスすることをおすすめします。
家族や友人を尊敬する人にあげる場合は、自己PRの難易度が上がるものと考えておきましょう。
というのも、面接官は応募者の家族・友人の情報について知らないことがほとんどですから、その点をあらためて説明する必要に迫られるからです。
新卒の場合ならともかく、社会人として十分に経験を積んでから転職を試みる中途採用者が、あえて身近な人物を尊敬する理由を面接官は知りたがります。
そこで「今まで自分を育ててくれたことに、この年齢になってあらためて感謝した」などと回答すれば、残念ながら面接官に人生経験を軽く見積もられても文句は言えません。
尊敬する人物を自己アピールに用いる場合、最低でも以下の要素はまとめておきたいところです。
これに加えて、身近な人物の場合は、
上記についても要求されます。
こういった事情から、身近な人物・気軽に会える人物を尊敬の対象とするのは、控えた方が賢明と言えるかもしれません。
ここまでお伝えしてきた通り、尊敬する人の存在を明らかにすることは、企業側・応募者側にとって必ずしもプラスに働くとは限りません。
応募者にとって尊敬する人の話をすることがタブーでないなら、企業とのかみ合いがうまくいくかもしれませんが、逆効果になるケースも十分考えられます。
しかし、個人の人生を充実させる上で、尊敬する人がいること自体はとても幸せなことです。
なぜなら、自分の理想に近い人生をすでに叶えている人物に巡り合えれば、より効率的な目標達成に向けた行動を実現できますし、行き詰まった時に解決策を考える上で参考情報を集めやすくなるからです。
自分の人生をより充実させるために、誰かに対する尊敬の念を持つことは有意義と言えますし、転職活動など人生の様々な活動時に心の支えとなってくれることでしょう。
以下に、その理由を紐解いてお伝えします。
人間は、空気や水から自然に生成される存在ではありません。
人間同士の営みの中で生まれ育ち、社会を構成する一員として暮らします。
わたしたちが歴史として認識していることは、当時を生きていた人々の生活の結果であり、わたしたちもまた壮大な歴史の一部として存在しています。
家計図を自作したことがある人なら分かると思いますが、先祖は父方・母方それぞれに存在していて、集計するとねずみ算式に増えていきます。
代をさかのぼるにつれて人口が増えていき、20代前ともなると104万8576人もの人が自分の祖先になります。
政令指定都市の人口に近い人数が、自分の命のルーツになっているわけです。
先祖に関係の近しい他人まで集計すると、もはや天文学的な数値になるわけですが、わたしたちが「自分が見たことのない数多くの人」とのつながりによって生まれたことは、疑いようのない事実です。
ひょっとしたら、過去の歴史的偉人と自分との間に、先祖が何らかのつながりを持っていたことも十分考えられます。
時にわたしたちの尊敬の対象となる有名人・芸能人・スポーツ選手も、ある面で「自分と近しい部分を持っている」と感じることがあるのは、先祖の人口を考えると十分納得できる話です。
だからこそ、わたしたちは心に壁を作ることなく敬愛すべき人物を探した方が、人生を生きやすくなるのだろうと推察されます。
企業の人材育成や、転職活動のサポートなど、諸々の場面で「メンター」について知る機会が増えてきました。
メンター(mentor)という単語は「経験豊富な指導者・助言者」などの意味を持ち、仕事に限らず人生を生き抜く上で指導や助言を与えてくれる人をそのように呼びます。
転職を例に話を進めると、転職エージェントでカウンセリングなどを行ってくれるキャリアアドバイザーが、メンターの位置に近い職種と言えます。
優秀なキャリアアドバイザーは、転職に関する豊富な経験と知識・企業とのパイプなど、広い転職市場で不安な求職者の心に寄り添いながら、転職成功に向けてサポートをしてくれます。
広く人生に目を向けると、世の中にはたくさんのメンターがいることが分かります。
それは仲のよい友達であったり、自分に日々アドバイスをくれる両親であったり、時に辛辣な意見を伝えてくれる配偶者であったりします。
こうした他者の意見は、独りよがりになりがちな自己評価を正すのに有効です。
自己分析の偏りを減らし、長所・短所を客観的に把握するための材料となります。
こういったメンターとの関係を大切にすることが、成功への道につながっていきます。
残念ながら、身近に自分が挑戦する人生の先達に巡り合えなかった人は、書籍に答えを求めるのも一つの方法です。
世の中には、自分が逆立ちしても勝てない・届きそうにない人が一定数存在しており、歴史に名を残す偉人たちはその代表格です。
現代よりもはるかに生き抜くのが難しい時代において、叡智によって問題を解決し、後世に光を残した人々の考えや意見は、大いに参考になります。
そして、書籍はそのような偉人のエッセンスを吸収する、もっとも手軽なツールと言えます。
書籍に書かれた内容は、筆者が故人である場合、もはや筆者当人によって書き換えられることはありません。
その時代・その瞬間の情報・体感・風景が切り取られた形で存在しているため、もちろんそのままの状態で応用することは難しいでしょう。
しかし、人間の思考に関することであれば、今なお誰でも歴史に学ぶことができます。
日本の礎を築いてきた歴史的宰相の一人・田中角栄さんは
戦争を知っている俺たちの世代が政治の第一線にいる間は大丈夫だと思う。しかしそうでない世代になったときの日本の政治がどうなるか、心配だな
引用元: 戦争体験を持つ政治家の群像。田中角栄、中曽根康弘の言葉をつなぐ
と、戦争が愚行であることを体感した人材の重要性を秘書に伝えていました。
この言葉は、秘書官の心だけにとどまることなく、心ある人たちの書籍化・文章化によって、わたしたちにも広く行き届いています。
より古い時代にまでさかのぼれば、聖書を読めばイエス・キリストを、論語を読めば孔子に触れることで、人生の格言・箴言を学ぶことができるでしょう。
経営者の心の内を知りたければ、稲盛和夫さん・松下幸之助さん・本田宗一郎さんなど、魅力的な人々の書籍に目を通すことで、モチベーションの回復につながるはずです。
尊敬する人を見つけることが、転職活動・人生においてメリットとなることをお伝えしたところで、続いては、尊敬する人の存在を探し、活かすための具体的な方法をお伝えします。
こちらの方法は、読書猿さんの著書・独学大全の「私淑」をアレンジしたもので、活用できれば様々な分野で自分の生き方や考え方を見つめ直す指針となるはずです。
私淑とは、直接教えは受けられないものの、尊敬する人を模範に学ぶこと・つまり自分が会えない人物を師と仰ぐことを言います。
偉人や有名人・作家だけでなく、架空の人物さえも私淑の対象となり得ます。
そのため、いきなりよく知らない人を私淑するのは、行動としては可能ですが具体性に乏しく、自分にとってメリットのある結果になるとは限りません。
そこで、自分の生き方や考え方の模範となる人物かどうか、情報を集める必要があります。
転職という分野に特化するならば、企業研究の内容と組み合わせてリサーチし、同じ業種・職種で大きな実績を残した人物を掘り下げましょう。
人生を生きる上で心の支えになった人物がいるなら、その人の情報を優先して集めていきます。
尊敬する人についての具体的な情報の集め方は、書籍・動画・記事などたくさんありますが、できれば書籍を選んだ方が情報は多いでしょう。
以下のような枠組みで書籍を集めて情報を整理すると、より対象人物のイメージをつかみやすくなります。
人物について | 作品について | |
---|---|---|
本人が書いた | 自伝 | 作品 全集、著作集 (書誌) |
他の人が書いた | 年譜 伝記 作家論 | 作品論 (研究書誌) |
ただ、転職をベースに、経営者や優秀な人材の情報を分析する場合、先の方法では十分に情報を集められない可能性もあります。
ビジネスパーソンの場合、転職にかける時間も限られているため、時間短縮と効率的な情報収集を実現するには、以下のような枠組みも有効です。
人物(会社)につい | 実績について | |
---|---|---|
人物(会社)が運営するWebサイトの情報 会社概要 | 会社概要 自己紹介 | 各種記事の確認 社史 (ポートフォリオチェック) |
他者のWebサイトによる分析 | Wikipedia 社員のブログ ポータルサイト記事 など | 左記に加えて、SNS上での評判 Youtubeによる動画配信 など |
これらの枠組みを用いて様々な情報を集めていく中で、自分が尊敬するに値する条件を揃えている人物に出会ったら、次のステップに進みましょう。
ちなみに、この方法は「素晴らしい実績を残しているが世間的にはマイナーな人物 」を掘り下げる上でも有効です。
尊敬する人についての情報が集まり、私淑の対象となったら、転職活動や人生の行動において壁が生じた時「その人ならどうするのか」を考えながら解決策を講じます。
問いを重ねていくうちに、自ずとその人に近い思考回路が生まれ、つらいときや困った時に答えがアドバイスのように浮かんでくるはずです。
例えば、経歴やスキルなどをまとめているうちに、ふと自信が弱まってしまう場面に遭遇したとします。
そんな時、ウィンストン・チャーチルを尊敬している人なら「できない理由を探す必要はない 」と不安を一蹴することができるかもしれません。
参考記事:【ウィンストン・チャーチル】あなたには必要な資質も資源も全て与えられている。「できない理由」を探す必要はない|偉人が残した名言集
また、思うような成果が出ず落ち込んでいる時は、美輪明宏さんの「正負の法則 」を思い出し、マイナスのあとにはプラスがあると気持ちを持ち直すこともできます。
参考記事:「人生には悩みがつきもの」美輪明宏が語る “正負の法則”(FRaU編集部)
このように、尊敬する人の考え方を学び、何らかの形で実践していけば、自分ひとりで黙々と考え続けているよりも安心して課題に取り組めるはずです。
以上、尊敬する人を見つけて、面接や自己PR・ひいては自分の人生を生きることに役立てる方法・考え方についてご紹介してきました。
最後に、筆者が私淑する人物についてお伝えしたいと思います。
筆者が私淑する人物は、作家の「村上龍」さんです。
影響を受けた著書は多数ありますが、その中でも「13歳のハローワーク」は、今なお自分の人生を支えてくれている一冊です。
参考書籍:新13歳のハローワーク [ 村上龍 ]
公式サイト:13歳のハローワーク公式サイト -中高生のための…未来のヒントに出会う場所。-
13歳のハローワークの中で、村上さんは「人にできる最後の仕事」として、作家という職業を紹介しています。
このような過激な表現をした背景には、高校の屋上をバリケード封鎖したり、米軍基地の町で退廃的な生活を送ったり、美大を卒業できそうにないという理由から「しょうがなく」小説を書いて芥川賞を受賞したりと、そんな村上さんの破天荒な生き様があったのだろうと著者は理解しています。
もう一つ、著者の人生を勇気づけたのが「お前はサラリーマンになれない」という言葉です。
学校や社会に馴染めない性質を持つ村上さんに、親や教師がかけた言葉だったそうです。
本を買った当初は、何となく読み流しながらも、どこか自分にも当てはまる部分があると思いながら生きてきました。
後々、周囲の要求・期待もあって公務員として働きましたが、結果的に自分には集団行動が向いていないことに気付くきっかけとなりました。
民間企業で働いても同じで、会社の命令通りに生きることに疎外感・違和感を覚えながら転職を重ねるうち、いつしか「一人で仕事をする」環境に強く惹かれていたのです。
結果的に、自分も「サラリーマンになれない」人種だったことに遅ればせながら気付くことができ、30代後半にして新たな人生を歩み始める後押しをしてくれました。
20代で書籍に目を通してから10年以上の歳月が流れていたにもかかわらず、村上さんの言葉は自分の心の根本的な部分を支えてくれていると感じます。
この記事の読者の皆さんが、そんな人に出会えることを強く願っています。
誰かを私淑する時間は、一人で尊敬する人と向き合う大切な時間です。
できれば、転職に限った話ではなく、これからの人生を生きる上で必要なアドバイスをくれる人を選んで欲しいと思います。
◎参考書籍: