かつてはごく一部の業種に限られていた「リモートワーク」。
新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から導入せざるを得なくなったこともあり、2020年以降、瞬く間に市民権を獲得しました。
リモートワークが物理的に不可能な業種もある中、デスクワークを主とする業種の多くでは、「柔軟な働き方」への関心の高まりとともに、社員が自宅で業務を行いやすくする体制作りに力を入れる企業が増えてきました。
そもそも、我々40代前後の世代が子どもの頃は、「サラリーマン人生=人生そのもの」という風潮がありました。
そのため、極端な例では、多忙すぎて我が子が小さかった頃の思い出があまりに少ないと後々嘆く声も聞かれたものです。
マイホームを購入したばかりで子どもを転校させたくないなどの様々な事情から、いざ転勤となれば単身赴任せざるを得ず、つきあいの飲み会や深夜残業、休日の接待ゴルフに至るまで、プライベートの時間を割いてまでも会社に「奉公」するのが当たり前。
それでこそが「仕事ができるサラリーマン」でした。
しかし2000年以降、業績不振により企業が大幅な人員削減に踏み切ることももはや珍しいことではなくなり、誰もが知っている大手企業が「リストラ」や「早期退職者」を募集するニュースを耳にするようになりました。
入社時にどんなに業績が好調だったとしても、世の中の状況や予期せぬ不祥事などで、それらは驚くほど脆く崩れ去ってしまうものだということを感じた人も多いはず。
もはや、年功序列・終身雇用の前提は崩れてしまったのです。
――人生を犠牲にしてまで会社に尽くすのは割に合わない。
このように、サラリーマンの人生観は大きく変化しつつあるのです。それに追い打ちをかけるようにして、コロナショックは私たちの働く環境を大きく変えたのです。
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「常識」は決して普遍的ではなく、時代の流れと共に変わりゆくもの。
かつてのサラリーマンの常識が当たり前ではなくなった2021年、「通勤して終業時刻までオフィスで働く」スタイルに固執していては、企業側にも不利益となることは否めません。なぜか?それは大きく2つの理由があります。
オフィスという「場所」に捕らわれない働き方であれば、営業のように移動時間が比較的長い職種などでも効率的に時間を使うことができるだけでなく、社員それぞれの家族構成やライフスタイルに合わせて働き方を自在に組み合わせられるようになります。
従来型の働き方に固執してしまっては、「平日9時~17時まで必ずオフィスで働ける」人材しか確保することができません。人材の多様性という点ではどうしても優れているとは言い難いでしょう。
自由な働き方への関心が高まっている背景から、働き手側も企業を選ぶ際に「リモートワークが可能な会社かどうか」をポイントにジャッジするということも珍しくありません。
誰もが柔軟な働き方のできる職場で働きたいと感じているので、それに対応していなければ、今後ますます優秀な人材は別の企業へと流れていってしまう恐れがあります。
さらに自由度が少ない「時代遅れ」な働き方しか望めないとなると、既に在籍している社員の心さえも離れていくことになります。
良い人材が集まらなくなれば、企業全体のパフォーマンスも低下します。
長期的な視点からみれば、新しい働き方を導入することは会社の業績にも影響が出てくるのです。
昔は仕事をすること=生活の糧を稼ぐことが主な目的でしたが、世の中が豊かになるにつれ、それだけではなく、仕事に「やりがい」を求める人も多くなってきています。
「やりがい」という観点では、働き方に柔軟性があるだけではなく、社員一人ひとりの努力が報われ評価される点も、企業側はより一層求められるようになってきています。
常にオフィスで仕事をしていれば、その働きぶりは他者からも目に見えて分かりますが、リモートワークではそうはいきません。そこで、労働時間そのものではなく「成果」を正当に評価する制度を導入する企業も増えてきています。
社員側にとっても、自分の成果が正当に評価される経験を積んでいくことで、短期的な結果だけでなく、より中長期的な視点で仕事にやりがいを持ち、成長実感を得ながらサラリーマンとしてスキルアップしていくことが可能となっていくでしょう。
リモートワークの普及によって、すでにさまざまなメリットを実感している人が増えていますが、彼らの話を聞くと下記のような回答が得られています。
一度柔軟な働き方を体験すると、もう従来の働き方に戻るのは難しい(というより戻りたくない)と感じている人も多いのではないでしょうか。
冒頭で述べたように、「場所・時間にとらわれない自由な働き方」の本格的な始まりはコロナ禍がきっかけでしたが、終息以降も加速していくのではないかと思われます。
かつてのサラリーマンの常識が当たり前ではなくなった現在、「せっかく仕事をするならば楽しんで取り組みたい」「仕事を通じて自分も成長していきたい」「日々の業務が評価されることで、次へのやる気につながる」など、働くことへのやりがいを見出しながら自由な働き方の流れに身を委ねてみるのも良いかもしれません。
とはいえ、「自由には責任がつきもの」というフレーズがあるように、働き方が自由になることで、かえって自身のスケジュール管理や業務のメリハリのつけ方にある程度苦労するということもあります。
また、オフィスで働いていた時にはどんなに些細なことでも周りにいる同僚や先輩にさっと質問や相談をすることが可能でしたが、リモートワークではそのようなことも難しくなるでしょう。
そのため、自由な働き方をスムーズに進める中で気をつけたいポイントを押さえておきましょう。
【リモートワークを進める上で大事なポイント】
・こまめな連絡で社内の情報を共有する
・コミュニケーションツールを積極的に活用
・タスク管理ツールを活用する
これらのポイントを念頭に置きつつ、自分なりの仕事と家庭・プライベートとのバランスを上手くコントロールしながら働くことができるようになれば、あなたのサラリーマン人生もまたひとつ、新たなステージを迎えることができるはずです。
環境に最も適したものが生き残り、適していないものは滅びる「適者生存」の法則。
自然の法則は人間の社会でも同じです
虎や狼は強い動物でも絶滅の危機に瀕しています。
ウサギや犬は強い動物と言えませんが、世界中で繁殖して増えています。
弱く見られても気にせず、環境に適して生き延びていきたいものです。