人生100年時代といわれ、日本人の平均余命は延び続けています。65歳時点の平均余命は男性で約20年、女性で約25年ですから、85歳~90歳まで生きる人が平均的な世の中になっているのです(厚生労働省「令和元年簡易生命表」より)
と、なると、心配になってくるのが、長い老後人生を過ごすための「老後資金」です。一説には2000万円以上必要とされる老後資金。貯蓄や投資に励んでいる人も多いと思いますが、はたして、本当にそんなにも貯める必要があるのでしょうか?
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近年、話題になった「老後2000年問題」は、あくまでも統計をもとにした試算であり、すべての人が2000万円の資金不足であるとは言えません。必要額は人によって大きく異なります。
貯蓄が大事であることは間違いありません。しかし、思ったほど貯めなくてもいいという場合も多いと思われます。その理由を紹介しましょう。
会社員・公務員は、厚生年金に加入しており、65歳以降には、国民年金からすべての人が受け取れる老齢基礎年金に加えて、厚生年金から老齢厚生年金を受け取ることができます。
現在、老齢基礎年金は、満額で年あたり約78万円。月額約6万5,000円です。
これに上乗せされる老齢厚生年金の額は人によって異なりますが、平均すると月あたり約14万6,000円が給付されているようです(令和元年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況」より)。
合わせて、年間253万円ほどの年金収入があることになります。現役時代に比べて高収入とは言えませんが、これがまったくの不労収入として、毎年給付され続けると考えれば、かなり気が楽にならないでしょうか。
加えて、企業によっては企業年金が受け取れたり、退職時にまとまった退職金が支給されます。
企業年金や退職金は制度がない会社もありますし、年金制度も今後どう変わっていくかわかりません。しかし、老後の収入について、ある程度の社会保障が準備されており、会社員の場合、それが手厚いということは知っておいてもいいでしょう。
かつて定年は55歳でした。それが段階的に引き上げられ、現在は、希望者は65歳までの雇用を確保することが、企業に義務付けられています。
IT環境の発達やリモート勤務の一般化もあり、いくつになっても働いて収入を得られる環境が整ってきたと言えます。
これを、「高齢になっても働かなくてはならない」ととらえるとネガティブに感じられますが、考え方によってはポジティブに見ることもできます。
年金収入が基本の生活になった後も、好きな時間に少しだけ働いて収入を得る、といったライフスタイルも可能だからです。
「老後資金が不足するかもしれない不安」とは、現役時代に貯められるだけ貯めたお金が、働けなくなった後に不足することが不安なのですから、いつでもまた働いてお金を得られるとなれば、この不安が減るのではないでしょうか。
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現役時代にマイホーム(自宅不動産)を購入した人は、老後に向けて、有益な資産を手に入れたと言えます。
地域や購入のタイミングによっては、大きく資産価値が上昇し、老後を迎えたタイミングで売却することでまとまった資金に換えることができます。ここ10年以内に都市部でマンションを購入した人などは、このチャンスが大きいかもしれません。
自身で住宅を購入していなくても、親から相続した自宅物件が、それなりの資産価値を持っていたというケースもあることでしょう。
持ち家を所有していれば、老後に、住み続けたまま、まとまった資金を借り入れできるリバースモーゲージや、売却して売却益を受け取ったうえで、賃貸として居住を継続するリースバックなど、多様な方法で資金調達ができます。
関連記事:自宅を有効活用して老後の生活資金を確保【リバースモゲージも紹介】
老後には、現役時代より収入が下がってしまうことはおそらく間違いないでしょう。しかしその一方で、支出も減ると考えられます。
収入が下がったとしても、支出も下がっているなら、収支のバランスは崩れず、問題ないことになります。
どのようなライフスタイルを過ごすかにもよりますが、若いときほど、レジャーや交際にお金をかけることはなくなる可能性も高いです。たとえば、マイカーを手放せば車に関連する出費はすべてなくなります。
また、子どもが独立すれば、教育や子育てにかかっていた多額の費用もかかりません。扶養の責任が軽くなれば生命保険や医療保険を見直してもいいでしょう。さまざまな面で、現役時代とは必要な費用が変わっていくはずです。
半面、医療費などが増えるおそれもありますが、そうしたものは公的保険制度による保障があるため、思ったほどかからないケースも多いのです。
固定費削減の記事をまとめました。合わせてお読みください。
・プロバイダ料金
・電気代
・ガス代
・医療保険
子ども世代にお金を残したい、もし、そのように考えているなら、少し立ち止まって考え直してみましょう。
自分が亡くなった後、お金を残す必要がなければ、今あるお金を使い切ってもいいことになり、これだけでお金の不安はかなり軽くなります。
よかれと思ってお金を残しても、相続財産の分割をめぐってトラブルが起こり、禍根を残すようなことになっては本末転倒です。特に、自宅不動産などは分割しにくいため、相続した子どもが処分に苦労する「負の遺産」になってしまうケースも少なくありません。
そもそも子どものいない夫婦や、配偶者も子どももいない「おひとりさま」であれば、むしろ積極的に「お金を不必要に残さず、使い切る計画」を立てたほうがよさそうです。
残すお金は葬式代程度と割り切り、自分のお金は自分が使い切るつもりでいれば、やみくもに貯めるだけが正義ではないと思えるはずです。
そもそもお金はなんのためにあるのでしょうか。いろいろな考え方ができますが、ひとつには、自分と家族が充実した人生を送るためです。
老後資金もその一環ではありますが、それなら必要額を想定して準備しておきましょう。
特に計画なく、ただ貯めることを目的化するのはおすすめできません。「今」使うことができるお金が減ってしまうからです。
お金を貯める・増やすこと自体を目的にすると、無茶な投資に挑戦して失敗したり、過度な節約でストレスを感じることにもなりがちです。
それよりも、ある程度を貯蓄に回したら、後は、有益なことに使ったほうがいいのではないでしょうか。
こうした使い方は、貯蓄を続けながら行うのであれば、決してムダではなく、人生をよりゆたかにするための「生きたお金の使い方」です。
遠い未来の老後のために貯めておくのもいいですが、今を楽しむためにお金を使うことも忘れないでほしいと思います。
老後のためにお金を貯めることについて、考えてみました。
老後資金の準備は大切ですが、必要額は人によって異なるため、正しく把握することが必要です。
公的保障などでなんとかなる部分も大きいため、やみくもに貯めることだけを目的にするのではなく、今現在のためにお金を使うことも考えていきましょう。
お金との付き合い方は難しいものです。
使いきれない程にお金を貯め込むのはナンセンス、必要な時に使って価値は最大化できます。
人生の後半を充実させるため「貯蓄」だけでなく、「使い方」もしっかりと考えたいものです。
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