一昔前までは、メガバンクに入れば一生安泰といわれていました。
年功序列で給料が上がっていき、出向しても関連会社の重要ポストに就くことができるため生活設計も立てやすく恵まれた仕事であったといえるでしょう。
しかし、超低金利が続いていることやAIの普及によって、メガバンクの状況は激変しています。
今回は、現在のメガバンクの置かれている状況・行員の転職事情について説明をします。
メガバンクの状況は大きく変わろうとしています。
店舗数を削減することや人員整理を行う事は、大きく報道されたので皆さんご存知でしょう。
実際に現場レベルのメガバンクの状況については知らない方も多いのではないでしょうか?
この章では現在のメガバンクの状況について説明をします。
メガバンクは店舗の削減だけではなく軽量化を行っており、今後、数年の間に大部分が軽量店舗になる予定です。
軽量店舗とは、人員を最小限に抑え、現金などの取り扱いをしない店舗のことで、軽量店舗にすることによって人件費を大幅に削減することができます。
支店で発生する事務については事務専門部署を作っている銀行が多く、バックオフィスの行員を劇的に削減しようとしているのです。
管理職も減る傾向にあります。以前は各支店に、支店長、副支店長、営業課長、事務部長、事務課長がいたものです。
しかし、支店の事務は減り、支店の管理職は支店長と課長のみの店舗が増えています。
事務に関しては、事務専門部署で一括で管理するようになっていますので管理職が必要なくなりました。
圧倒的に管理職のコストを少なくすることによって人件費の抑制を図っているのです。
今後、数年で、この傾向はさらに強まるとみられていますので、管理職になることができない総合職が増えるとみられています。
既にメガバンクでは本来のライン課長は、同期全体の3~4割程度の席数と言われています。
メガバンクに勤める行員は転職についてどのように考えているのでしょうか?
メガバンクでは1000万円を超える給料がもらえます。
定年前の50歳代前半になると、メガバンクの行員は関連会社や外部の企業に転籍するのが一般的です。
出向してしまうと給与水準は大きく下がり、銀行員時代の6割程度の年収になってしまいます。
エリート意識が高い層の銀行員にとって、20代後半の社員水準の給与になるのいは厳しい現実です。
また、出向後の給与水準は今後は大きく落ちていくでしょう。
しかし、年収ベースで600万円以上をもらうことができ、世間一般の給与水準からすると十分な給与が確保されている事は長期的なライフプランを考える上で安心材料です。
銀行員が出世するのはますます大変になっています。
店舗数の削減や、管理職の削減などでポストに就くことがなかなかできないからです。
メガバンクでは、出世は20代で決まることがほとんどで、なかなか挽回することはできません。
俗にいう減点主義が残っていることが要因です。
減点は評価者の主観が反映される部分も多いので、上司のめぐり合わせも人生を大きく左右します。
20代で圧倒的な実績を残すか本部に移動することができなければ、その先大きく出世する事はまず不可能です。
支店長になりたいと銀行に入ってきた人にとって、出世ができないことは非常に辛いことでしょう。
出向先がある、つまり、職にあぶれる事がありません。
長い目で見て、仕事を確保するため銀行に残るメリットは大きいでしょう。
出世意欲が強い銀行員にとって厳しい状況とも言えますが、プライドを捨てることさえできればメガバンク本体に残れなくても、斡旋先のグループ会社・出向先にて仕事を確保するのは決して悪くない選択です。
退職金は減っているとはいっても一般の企業よりは多いです。
メガバンクであれば企業年金も非常に恵まれています。
銀行系列の仕事は、営業実績を厳しく求められ、細かい事務が多くストレスが多い職業なのは言うまでもありません。
しかし、出世できなくても、ある年齢まではお金の事を考えれば、銀行に頼る選択肢は決して間違いではないのです。
50歳代前半で実質早期退職になることは忘れないでください。
30代から40代前半に実質退職前の準備を進めて(それまではメガバンクの処遇を享受)、タイミングを見て転職するという選択肢はいかがでしょう。
銀行に依存した人生を疑いもなく送る銀行員も多いので、意識を少し高めれば、一歩も二歩も先んずる可能性があると思います。
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銀行に残る事は決して悪くはありませんが、多くの銀行員が現在転職をしています。
いったい彼らはどのような仕事に新しく就いているのでしょうか?
銀行でのキャリアにもよりますが、個人営業が主なキャリアの銀行員は、保険会社にスカウトされることがあります。
銀行員時代に担当した顧客の情報を利用する事は違反ですが、正直多くの転職した銀行員は前に担当した顧客に営業をかけています。
保険会社に比べ、銀行員が担当している顧客は富裕層が多いので、うまく営業活動を行うことができれば莫大なお金を稼ぐことができるでしょう。
銀行の個人営業から保険業界への転職の事例で成功は決して容易ではありません。
なぜならば、営業スタイルと企業文化に合わないケースも多いからです。銀行では既に多数保有した顧客情報(預金残高、決済情報、住宅ローン、勤務先情報など)と前任者の顧客を引継ぎながら営業を推進。この点が情報が限られた保険業界の営業とはスタイルが大きく異なります。
受身的営業スタイルでも顧客層に恵まれたり、上司や部下依存で成績を上げた人は長続き出来ないでしょう。
日系の保険会社でも企業文化は銀行とは大きく異なります(逆に、保険業界の成功者も銀行での保険業務では必ずしも成功しません。似て非なるビジネスモデルの世界だからです。機会があれば、実例も交えてお話ししますよ!)安易に考えるのではなく、自分自身の強みを活かす転職をじっくり準備することが重要です。
人生後半を支える術として、「何を」「いつ」決断するのか、じっくり考え、そして行動しましょう。
その他、個人営業を主に行ってきた人はIFAになる人も多くなっているようです。
IFAとは、独立した証券営業マンのようなものになります。
会社からのノルマがないので真に顧客に寄り添った営業をすることができることが魅力です。
法人でのキャリアが主な銀行員の場合はどうでしょうか?
多いのは、担当した会社の幹部として転職することです。
経理部長や、担当役員として迎えられることが多いのでそれなりの年収を稼ぐことができるでしょう。
その他、M&Aやストラクチャーファイナンスなど専門分野にいた方の場合は、外資系の金融機関に転職するケースが多いです。
しかし、すべての人が転職をしてうまくいくとは限りません。
転職をした後に後悔しても元に戻ることができないため、転職をする際は慎重に検討をすべきでしょう。
転職を、実行する前に行うべき事は2つです。
1つは転職エージェントに登録することです。転職エージェントに登録することによって自分の市場価値を客観的に見ることができます。
銀行員はプライドが高い人が多いので、あまりの市場価値の低さに愕然とする人もいるかもしれません。
しかし、銀行を辞めてしまった後では手遅れです。転職を決断する前に必ず転職エージェントに登録するようにしてください。
2つ目は、副業をしてみることです。最近、みずほ銀行でも副業が解禁になったように今後、多くの銀行で副業ができるようになるでしょう。
自分が、転職をして行いたい内容の副業をすることによって転職したら成功するかしないかある程度目安をつけることができます。
もちろん、自分が希望する内容の副業ができるかどうかは銀行によって異なりますが、もし認められているのであれば積極的に副業を行うようにしましょう。
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今回は、銀行員の転職事情について説明をしました。
銀行は斜陽産業であるといわれてはいますが、まだまだ年収面などで恵まれている面はたくさんあります。
しかし、今後、銀行を取り巻く環境はさらに厳しくなることが確実視されており、転職をせざる得ない銀行員も増えてくるでしょう。
そのような状態になったときに慌てないためにも今から準備しておくことが大切です。
今後、銀行業界はビジネスモデルが大きく変貌します。
付加価値が低い業務がAIに替わられるのは他業界と同じです。自身の付加価値を高めて攻めていくしかないのです。銀行内で生産性が高い業務への従事を勝ち取るか、副業・複業で自分の可能性を高めるか、いずれかの選択肢ではないでしょうか。でなければ、いずれ真っ先に淘汰され、50歳代から以降は銀行にすがるしかないかも知れません。
何のスキルがなくても、銀行員というだけで、ある程度恵まれた第二の人生の職場が用意されていたのは、昭和60年頃までの入行者だと思います。銀行も、外部企業も大らかな時代でしたし、銀行に資金を依存する関係でしたから。時代は大きく変わっています。「銀行員の古き良き時代」と言われています。
(平成入行の元メガバンカーの独り言です。。。。最近、後輩からの相談が増えてきました。このテーマは語りつくせないので、一旦ここでオシマイとしますね)