昨今、「副業解禁」の波に乗って後押しする企業が増えつつある中、リモートワークやシェアオフィスの活用といった働き方の多様化が進んでいます。
今や副業は特別なことではなくなりましたが、それでも躊躇している人も少なくありません。
【その主な理由として……】
本心では副業に興味はあるものの、上記のような理由から具体的なアクションに踏み出せないのが現実だと思われます。
このような場合、「Something New(=新しい何か)」にチャレンジすることは諦めるしかないでしょうか?今のキャリアを退職まで貫くしか道は残されていないのでしょうか?
いいえ!
そんなモヤモヤしている人こそ、一度「パラレルキャリア」を検討してみるのがおすすめです。
今回は、「副業はちょっとハードルが高い」と考えている方にこそ知っていただきたい「パラレルキャリア」についてご紹介いたします。
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「パラレルキャリア」とは、その名の通り本業とパラレル(=平行)して、もう1つ別のキャリアをもつことです。
副業もパラレルキャリアの一部であるといえますが、その定義は様々です。
必ずしも本業の他に何らかの収入を得られる仕事である必要はありません。
具体的には、
①地域の自治会活動、
②ボランティア活動、
③NPO活動、
④友人と立ち上げた自主的な勉強会、
などのような社会活動や、
⑤資格取得やキャリアアップのための通学、
⑥趣味が高じて知人に何かのレッスンを開いたりする、
などといった例が挙げられます。
社会活動・勉強・趣味のように、本業と平行して何か熱心に取り組んでいるものがあれば、収入の有無に関わらずそれは立派な「パラレルキャリア」といえます。
パラレルキャリアは、収入を得ることを目的としていないため(※ 結果的に収入を得ている人はいます)、副業をするのは荷が重いと感じる人だけでなく、そもそも会社で副業を禁じられている人でも気軽に始めることができるのがメリットです。
その他おすすめの理由は以下となります。
「複数のキャリアを平行して持つ」と聞くと、
元々能力の高い、ごく一部の人にしかできないのでは?
専門性の高いスキルが必要では?
時間的・経済的に余裕がある人しかできないのでは?
多くの人はそう思いがちですが、このような心配は無用です!
パラレルキャリアは、決してごく限られた特別な人だけのものではありません。
必要なのは、むしろ「小さな一歩」。
最初のアクションさえ起こせれば、実は誰にでも始められるのです。
情報伝達技術が著しく発展した現在、インターネット環境さえ整っていれば、世界中の人達といつでもどこでも簡単にコミュニケーションをはかることができます。
また、かつてのような時間や労力をかけることなく、スキルアップのための情報や知識を簡単に得たりすることが可能です。
自分の興味のあることを日頃の生活環境の許す範囲内で取り組めば良く、スキルアップのための勉強なら平日の夜間や休日にスクールに通ってゆっくり時間をかけて学ぶだけでなく、より気軽に「自宅でオンライン講座を受講」するという選択肢もあります。
つまり、休日や本業の合間のスキマ時間を効率的に活用することで、現在のライフスタイルを大きく変えることなく自分のペースで誰もが活動を始められるのです。
パラレルキャリアの魅力は、「自己研鑽」という範囲のみにとどまりません。
例えば、ボランティアなどのような社会貢献要素の強い活動に取り組むことで、助けを必要としている誰かの役に立つことも可能です。
例えば、地域の清掃活動や子ども達への学習支援、国際交流活動のボランティア要員などを自治体が募っていることもあれば、幅広くボランティアを募集している検索サイトも多数存在しています。
まずは、子どもの学校のPTA活動や、地域の自治体活動への参加など、スモールステップから踏み出し、コミュニティの活性化に貢献してみるところから始めてみても良いかもしれません。
社会活動を通じて、困っている誰かのために今の自分の等身大のスキルを活かすことができたと感じることができれば、それだけで日頃の業務では味わえないようなやりがいを得ることができるはずです。
日々の業務に追われ、いつのまにか組織で成功することだけが生き甲斐になっていませんか?
「会社の常識=自分の常識」となり、知らず知らずのうちに狭い価値観にとらわれていることに気づかない場合があります。そんな時こそ、会社関係や家族以外の多様な人たちと関わる機会を持つことが大切です。
アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグは自身の著書「The Great Good Place」にて、現代社会においては第三の場所が必要であることを論じていますが、まさにパラレルキャリアは「The Third Place(=第三の場所)」といえます。
新しい友人を見つけたり、素直に他者と対話することを楽しんだり、自分の価値観を柔軟に広げたりと、居心地の良い場所でより創造的な交流が生まれています。
こういう場に自分の身を置くことも、長い人生では大いに意味があります。
サラリーマンである以上、上司から頼まれれば正直やりたくない仕事でも我慢して引き受けなければならない場面はあります。
一方、パラレルキャリアはそもそも収入のためではないため、我慢して続けなくてはならないようなものではなく、自分が「興味がある」「やってみたい」と思って主体的に取り組むものです。
誰かに強制されて取り組むものではないので、純粋に「楽しい」という気持ちを感じやすいという魅力があります。
様々なしがらみにとらわれることなく、自分がやってみたいと思うことにチャレンジしてみることで、ただ楽しいというだけではなく、経験を重ねていくうちに本業では感じられなくなっている「成長実感」を得ることができる、というのも魅力です。
会社の人間関係や役職だけにとらわれていると、無意識に視野が狭くなってしまいがちです。
そして極端な例では、仕事での失敗=人生の失敗と感じてしまうほどに追い詰められてしまうことも珍しくありません。
しかし多様な人と関わりを持つことで、「会社だけが人生のすべてではない」「世界はより広いものだ」ということを知るようになると、精神的にも大らかでいられるようになります。
また、本業ではできて当たり前だとされていたスキルや能力も、パラレルキャリアとしての活動を通して、「実は大きな価値を持っていることに気がつく」ということもあります。
仕事に行き詰り感を覚えて自信を見失っている時に、意図せずパラレルキャリアが自分の価値を再確認するきっかけを与えてくれる、ということもあるのです。
さらに、本業の気分転換のような位置づけで始めたパラレルキャリアで得た経験や学びが、かえって本業に活かされる、という場合もあります。
パラレルキャリアによって自分の世界を少し広げてみることで、将来のキャリアの選択肢が広がっていくという可能性もゼロではない、ということです。
実務的な面においても、パラレルキャリアは大きな学びの場となり得ることがあります。
本業に近い領域の活動であれば、現在の知識やスキルをより深く向上させることができ、本業とは異なる領域の活動に取り組む場合は、普段であればなかなか得ることのできないスキルを身につけることができます。
さらに異業種の人と接点を持つことで、自分の所属する会社以外に人脈を広げることができます。
普段はなかなか接する機会のなかった人との出会いから多くの刺激を受けることで、本業へのモチベーションが向上や、新たなビジネスチャンスを広げたりすることができる可能性もあるのです。
かつて日本のサラリーマンは、新卒で入社した会社に定年まで長く勤めるというのが一般的でした。
そして、定年退職後はそれまで仕事に費やしてきた時間を取り戻すかのように、悠々自適なセカンドライフを送ることこそ<理想的な老後の在り方>だと考えられてきました。
しかし、医療技術の進歩によって健康寿命が延び、人が元気に働ける期間は以前よりも長くなってきています。定年も後ろ倒しになり、または定年自体を設けていない会社も存在するようになっています。
もはや、私たちの人生はすごろくのように「定年まで同じ会社で働いて終わり」ではありません。
その先の自分自身のキャリアや生き方も自分で考えて構築していかなくてはならなくなっています。
まだまだ続く長い人生を考え、自分の定年を所属する会社任せにするのではなく、「何歳まで働きたい」「退職後はこんなことに取り組みたい」といったように、自発的に将来設計を立てていくべき社会に変容しつつあります。
つまり、退職後の将来設計を逆算して、動けるうちから個人のスキルを高め、多様な人々とのかかわりを築いていくことこそが今後ますます必要となってくるのです。
目の前の忙しさのみに追われて、「会社」という1つの組織に依存した生き方を送っていると、いざ定年を迎えた時に特に挑戦したいことも無く、やりがいも感じられない日々をぼんやりと過ごす、なんてことになりかねません。
どんなに規模の大きい会社に勤めていたとしても、本業で関わる人には限りがあるもので、業種によっては取引先など社外の人と関わる機会もない人や、社内の顔なじみのメンバーのみとしか接する機会がない人もいるかと思います。
また、会社ごとに独自のカラーがあるので、社内経験が長くなればなるほど社内の常識にとらわれた視点で物事を考える習慣がしみつくものです。
こういう世界に長く身を置けば置く程、一歩「外界」に出た時にその習慣がいかに通用しないかを知ることにもなります。
しかし、それこそが「長い人生をより豊かに楽しむためのカンフル剤」です。
パラレルキャリアとは、社会とのつながりを通じて、自分自身が今までとは違った外界に行き、あなた自身の世界を押し広げること。
しかも、あなた自身で能動的に選択することです。
パラレルキャリアによって、これまでの会社人生では出会えなかった人と意見を交わし、何かしらの活動を共にすることで、新たな物の見方や発見を得られたり、人脈を広げたり、自身のスキルを広げたりすることができるかもしれません。
人は何歳になっても、自分が成長している実感を得られることができれば、生き生きと過ごしていくことができます。
そして誰かから必要とされることで、やりがいを感じ、生きる活力を見出すことができます。
パラレルキャリアを始めるのに、決して早すぎることも遅すぎることもありません。
しかし定年を迎えてから始めようとするよりは、やはり早い段階から会社以外の世界とのかかわりを築いておいた方が良いでしょう。
そういう意味でも、「2枚目の名刺づくり」の始めの一歩は、本当に些細なことから始めてみると良いかもしれません。
今の仕事以外に自分に何ができるのか思いつかない人は、まずは少しでも楽しいと思えることを洗いざらい書き出してみることから始めてみてはいかがでしょうか?
インターネットで「パラレルキャリア」と検索してみるだけでも、ヒントになるきっかけを見つけることができるかも!
何か熱心に学んでみたいことや取り組んでみたい領域などを見つけることができれば、しめたものです。
すべては、人生100年時代をより自分らしく、生き生きとキャリアや余暇を楽しむ可能性を拡げていくためです。
その手段の一つがパラレルキャリアです。
あなたもぜひ、今のうちから少しずつ等身大の自分でできることから土壌づくりをしてください。
手始めに、何かを始めたら、もう1枚の名刺をつくってみましょう。
その1枚が、新たな外界との懸け橋になるはずです。
利害関係のない友人はかけがえのない財産です。
会社を離れて新たな外界とつながってみて下さい。
新らしい世界が大きく広がります!!
◎参考書籍