ニューノーマルのサラリーマンの生き方指南

弱いつながりが転職で役立つ?Giverの精神で有益な人・情報を集めよう!

中堅以上の年代になってくると、いざ転職を検討しようと考えた時、周囲と比較して自分の価値が転職市場で低いと考えてしまう人は多いかもしれません。

また、自分の強み・弱みといった部分を現職の同僚・上司・部下などと比較しても、いま一つハッキリとした答えが出ず、悶々とする人もいるはずです。

そのような人は、今まで培ってきた人間関係を一度見直して、比較的「弱いつながり」を作ってみることをおすすめします。

趣味の情報を発信するSNS・自分の主張をぶつけるブログなど、インターネットを介して自分の考え・思いを発信したり、有益な情報を共有したリするツールは数多く存在しています。

人事に携わっている人ならご存じのことと思いますが、現代の転職市場においては、ハローワーク・求人サイト・転職エージェント経由での応募だけでなく、より確度の高い人材を集めるために様々な採用方法が導入されています。

人脈の構築という観点から例をあげると、社員の知り合いの中から新しい人材を紹介してもらう「リファラル採用」・SNSで自社の情報を発信してファンを作る「SNS採用」など、自社と何らかのつながりがある人を採用しようと試みる方法が、大手・中小問わず多くの企業で用いられているのです。

人間というものは、強いつながりを構築することで信頼感が生まれる一方、その信頼感を失わないようお互いが遠慮する傾向にあります。

もちろん、意見を交わした後もあっさりした関係を維持できるのが理想ではありますが、結婚相手・家族にさえ本音が言えないケースも決して珍しくありません。

弱いつながりだからこそ、相手に率直な意見を伝えやすく、様々な観点から情報を集めることも可能となります。

また、社内政治や規則にとらわれず、自分の持っている知識・経験を素直に提供しやすくなるため、いわゆる「Giver」として周囲に感謝される立場になることもあります。

この記事では、転職で役立つ「弱いつながり」について、過去の日系企業の傾向や人間関係について触れつつ、メリット・構築方法・転職への活用法などをお伝えします。

転職を志したはよいものの、自分の市場価値に不安を感じて最初の一歩が踏み出せない人は、ぜひ一度お読みください。

かつての日系企業で重要視されてきた「疑似家族」的なコミュニティの弊害

会社関係は「疑似家族」的だった

世代・年代にもよりますが、バブル以前の日系企業には、会社の人間関係を「疑似家族」的にとらえる風潮がありました。

結婚相手を社内で見つけるケースも多く、会社に対する信頼関係が事業の安定につながっていた部分は少なからず存在しており、各種問題発言などに対する許容範囲も現代よりは広かったはずです。

しかし、バブル崩壊→デフレ→リーマンショックといったように、国内の経済状況が年々悪化していく中で、既存の疑似家族形態も崩壊が始まります。

成果主義・新たな評価制度の導入・リストラなど、次第に会社の本質である「利益追求」が浮き彫りとなり、努力ができない・結果が足りないと判断された人材は、閑職に回るか退職するかの選択を迫られるようになりました。

また、セクハラ・パワハラのように、コミュニケーションを円滑にしようと試みた発言や行動が、社内に悪影響を及ぼしていたことも浮き彫りになっていきます。

やがて、会社の人間関係が希薄化して社員の感情も繊細になり、まっとうなことを発言したつもりが問題となる「ロジハラ」のようなケースも出てきています。

もちろん、それ自体は社会の健全化という点で考えれば、喜ばしい傾向と言えます。

一方で、そんな変化に順応できない人も一定数存在しており、一度過ちを犯せば社会人失格の烙印を押される厳しい時代になったとも言えます。

世代や居住環境など様々な要因によってメンタリティが異なるため、一口に日本人を分類することはできませんが、2021年現在の日本は「会社に強い信頼感を抱く人ほど生きにくい」国になろうとしているのかもしれません。

逆に、個人の副業等が推奨される企業が出てきたように、自社の社員に対する影響力が弱まっていること・新しいネットワークを構築する必要があることを自覚して行動を起こす企業も増えてきています。

 

転職を決めた時「強固なつながり」は重たくなるだけ

強固なつながりは意外に役に立たない

会社というコミュニティの考え方に変化が生じたならば、自ずとコミュニティに存在する個人の考え方にも変化が生じます。

自分が現在働いている会社が、自分にとって不利な決断を下す可能性が高いなら、いっそのこと違う環境で自分を試そうと考えるのは当然のことです。

しかし、いざ転職を思い立った時に考えるのは「現在同じ部署で働いている仲間の顔」という人は多いでしょう。

同じフロアで席を並べて働き、社員旅行で同じ釜の飯を食べて過ごし、時には思いのたけを同期などにぶちまけた経験もある人にとって、会社を離れるのは人生を左右する重大な決断になるはずです。

逆に、周囲の社員がまったく信用できないものの、社内イベント・人間関係を重視する社風から、なかなか抜け出せないでいるケースもあるでしょう。

いずれの場合であっても、自分との関係が深い「強固なつながり」を持っている人は、どうしても転職にネガティブな気持ちを抱いてしまいがちです。

ただ、筆者も数多くの転職を経験していますが、当時一生懸命私を慰留しようと試みていた人たちと、今はまったく連絡を取っていない状況です。

複数の転職を経験している人ほど、辞めた後はあっさりしたような状況という人は、意外と多いのではないでしょうか。

結局のところ、新しい道に進もうとしている人には、新しい関係が必要です。

そして、新しい人間関係がスタートする時、それぞれの関係性は非常に弱いつながりから始まっていきます。
 

弱いつながりから生まれる新たなネットワーク

弱いつながりの強さ

強固な関係の中からは、新しい発見をするのはなかなか難しいものです。

お互いの気心も、暮らしも、仕事環境も似通っている人との間には、強い信頼関係こそ結ばれているかもしれませんが、一方で共有する情報は似通ったものばかりになりがちです。

一方、弱いつながりの中では、その中で共有できている情報がごくわずかです。

そのため、当人同士のコミュニケーション次第では、新たな情報を効率的に収集できます。

比較的多くの人間と接する仕事上の人間関係だけに絞って考えても、社内で得られる人間関係・情報の幅は限定的であり、時々新しい得意先と話をしてみると何もかもが新鮮に感じられるものです。

仕事上の発展性を考えた場合、こういった弱いつながり・新しいつながりが大きな発見につながることは珍しくなく、異業種交流会などが定期的に開かれているのも、参加者にとって一定のメリットがあるからだと推察されます。

また、何かを始めようと思った時、会社を巻き込むと稟議や決裁という壁が立ちふさがりますが、一人でやろうと思ったら何もかもが自由です。

例えば副業を始めようとした場合、クラウドソーシングサイトに気軽に個人情報や得意なスキルを登録するだけなら、そこまで金銭的・精神的な負担は感じないはずです。

SNSで趣味や勉強・ダイエットなどの情報を発信していると、全国各地・世界中の人からリアクションが返ってきます。

非常に有効な情報を無償で教えてくれるユーザーもいるため、深い付き合いにならなくても、自分のプラスになる情報交換ができる可能性が高いのです。

SNSやクラウドソーシングで発信・提供する内容を精査して、リアクションを分析するうちに、自分が何を得意としていて何が不得意なのか、あらためて理解する機会を設けられるでしょう。

そこから、うまくいっていることに絞って技術を磨けば、転職どころか独立という選択肢さえ生まれるかもしれません。

プロフィールに興味を持った企業側からオファーを受けることもあれば、自分から積極的に発信しなくても誰かのフォロワーになってご縁が生まれることもあります。

また、関係性がゆるく構築される中で、自分が人と人との間をつなぐ立場になることも十分考えられます。

世界中の距離が近くなった現代では、親しい間柄だけでなく、弱いつながりを大切にすることが未来につながります。

発信と受信を繰り返すことで、人々を結ぶキーマンになれれば、新たなネットワークの中で「現職のポジション以上の事を成せる」時代がやって来ているのです。

 

自分の強みを正しく理解して、相手を動かすGiverになろう

相手を動かすのはギバー

転職に際してネットワークを活用し、有益な情報を得ようとすることはよいのですが、ただ得ようとする人間(Taker)になってはいけません。

最終的に自分だけが得をしようと考えるのは、つまるところ自分勝手な考え方であって、情報を広く共有するネットワーク上では「いけないこと」だという自覚が必要です。

一つの企業で長く働いている人は、自分が与えられるものが少ないと考えてしまうあまり、どうしても受け身になりがちです。

すると、自分にその気がなくても「あの人は自分から何かを提供しようとしない」と周囲から評価され、結果的にネットワークから省かれてしまうおそれがあるのです。

ネットワークの効果を最大限に活かしたいのなら、多様なつながりを構築しつつ、自分から相手に尽くす行動を起こすことが大切です。

先に結果ありき・メリットありきで相手とつながろうとする姿勢をただした上で、自分が利他的に行動を起こせるようマインドを修正しましょう。

この時に気を付けたいのは、決して背伸びをしない・自分の意に沿わぬ努力を続けないことです。

自分の身の丈を超えた努力・頑張りは、いたずらに自分を消耗させるだけですから、長い目で見て努力を継続させるのが難しくなります。

利他的な行動と利己的な考えは、必ずしも相反するものではありません。

著名なアーティストのように、自分が得意なこと・やりたいことを行った結果、自分がGiverとなり周囲の人も幸せになる例は数多く存在します。

そのような現実を作り出すためには、自分の得意分野・無理なく貢献できる分野を理解した上で、周囲に情報を発信することが重要です。

自己分析の手法はたくさんありますが、論理的に自分を深く掘り下げる経験が少ない人にとって、ハードルが高いことも事実です。

そこでおすすめしたいのが、脳内知識の棚卸しを行う「カルテ・クセジュ」という手法です。

この手法が知られるようになった理由の一つとして、読書猿さんが執筆した「独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法 」があげられます。

本来は独学向けの手法ではありますが、自分自身の持っている知識・スキルを掘り下げるのにも役立ちます。

以下に、やり方の順番を引用するとともに、転職において自分の得意分野を探して伸ばすための応用方法についてもお伝えします。

 

カルテ・クセジュ(脳内知識の棚卸し)を転職に応用する方法

脳内知識の棚卸を転職に応用

① 取り組もうとしている分野や課題について、何でも思いつく限り順不同で書き出す

今回の場合は転職になりますから、自分が転職の際に提供できるリソース・スキルについて、思いつく限り書き出していきます(カルテを作る)。

用紙については、A4紙やカレンダーの裏など、紙面が白くてスペースを取れるものがよいでしょう。

② 書き尽くしたら、読み返しながら、まずは知っていることを四角で囲む

紙に書き出した後は、それぞれのリソース・スキルについて、自分がどこまで知っていて、どこまで活用できるのかを考えていきます。

その上で、現段階で他社に移動した際に提供できそうなものを四角で囲みます。

③四角で囲んだものの中から気になる/大事そうなものを選んで調べる。調べたものはさらに四角で囲む(四角い二重囲みになる)

今度は、四角で囲んだものを掘り下げて思い返し、ネットリサーチのレベルで構わないので市場調査も行います。

転職市場において自分のスキルにどのようなニーズがあるのかを把握したり、リソースに希少性があるかどうか探ったりします。

その過程で思い出したスキル等があれば、それらも紙に書き出していきます。

最終的に、現段階で自分がそのスキル等にどんな感情を抱いているにせよ、「使い物になる」と判断したものは四角い二重囲みにします。

ただ、無理なく新天地でスキルを活用することを考えた場合、この四角い二重囲みの内容を活用するのは、現職の二の舞になるおそれもあります。

そこで、四角い二重囲みから一歩飛び越えることを意識して、自分のスキルを掘り下げていきます。

④いくつか調べた後で、再び全体を読み返しながら、項目同士で関係がありそうなものを線で結んでいく

リサーチを一通り終えたら、再度全容を把握する意味で読み返し、似たような項目・本質的には同じ能力を思われる項目を線で結びます。

必ずしも四角で囲んだものだけを結ぶ必要はなく、省かれたものとも結んでいき、結ばれたものは再度リサーチをかけてもよいでしょう。

ちなみに、筆者は主にライティングで生計を立てていますが、副業としてやっていた当時は「妻に心のこもった手紙をかける」程度のあいまいなレベルのスキルに過ぎませんでした。

それでも「良い文章を書ける」という観点から掘り下げてみると、メールやビジネス文書の書き方・履歴書や職務経歴書の書き方など、実に様々な得意分野が後から紐付けされていきました。

このように、社会人としてのキャリア・学生時代のキャリア・さらには幼少期の嗜好にまでさかのぼって考えていくと、たくさんの「知っていること」が思い出され、やがて一つの大きなジャンルにつながっていくはずです。

⑤調査と結び付け(③・④の作業)を繰り返し、項目を結び付けたカルテの変化と成長が落ち着いたら、今度はもっと知りたいと思うものを、いくつか○で囲んでいく

手順④までの流れで分析が進んだら、今度は「これを知っていれば転職で有利」・「これを学んでみたい」などと考えたものを〇で囲んでいきます。


現段階ではよく知らないことでも、自分の欲求として○で囲んでおけば、今は転職する勇気がわかなかったとしても「これをクリアしたら転職に踏み切る」と決意できるはずです。

また、自分はすでに難なくできることで、これまで転職や仕事に活かしたことはない分野についても○で囲んでおきます。

こちらについては、実際に転職先で活用すること・それを踏まえた上で転職先を決めることに役立てる意味で、赤などに色分けして○をつけましょう

⑥カルテを見返しながら、○をつけた項目の中から、最も知りたいものを一つ選びもう一重、○で囲む(◎の囲みになる)。これがあなたの学習/研究のテーマに、少なくともそのコアになる

最終的に内容がまとまっていくと、いくつかの○が紙面に書かれている状態になると思います。

そこから、新天地で自分が無理なく活かせると思うことにつき、手順⑤で色分けした色で○を付けます。

もし、色分けして◎が付けられないなら、それはまだ自分の分析が甘いかもしれません。

逆に、色分けした◎が複数付いているなら、それを活かす形で転職活動を始めます

⑦カルテ・クセジュを学習/研究が進む度に改定していく

転職は、誰もが一度のアプローチで成功するとは限りません。

失敗した場合は、どうして失敗したのかを分析した結果を、手順①~⑥を通して作り上げたカルテ・クセジュに反映させます。

転職エージェントなどを頼り、フィードバックを逐一もらえれば、より効率的に転職活動を進められるでしょう。

誰もが自分のことはよく分からないものですから、できるだけ客観的な情報を反映させることが大切です。

上記のやり方は、独学大全の中で紹介されているカルテ・クセジュの作り方につき、転職という観点を加え応用した方法です。

参考情報としてご活用いただければ幸いです。

おわりに

価値観の違う相手との対話は、時に強いストレスを生むことがあります。

しかし、お互いが少し歩み寄れた時・共通の価値観を分かち合えた時、弱いつながりが少しずつ自分にとって意味のあるものになっていきます。

利他的な立場を忘れずにコミュニケーションを図り、自分もまた新しい人と出会い情報を集められれば、win-winの関係が築けます。

現職の中で培われた関係性だけを頼らず、絶えず新しい関係性の中に自分を置くことができる人には、たくさんの出会いと有益な情報がやって来ることでしょう。

自分の人生において、もっとも大事にしなければならないのは「自分」です。
誰かのために生きたいと思うなら、まずは自分が幸せになることを決意しましょう!


参考書籍:

この記事を書いた人
オンラインスキルマーケット「Coconala(ココナラ)」にて各種ライティングに携わる。会員登録後半年で確定申告を検討するほど収入が増え、1年後には個人事業主として登録。経理職として幅広い業種への転職経験があり、人事系コラムの執筆も行っている。

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