少子高齢化が進む日本では、生産年齢人口も年々減少しています。
経産省の資料における将来人口予測では、2050年の総人口は1億人となり、生産年齢人口比率は50%台前半になるものと予想されています。
引用元:2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について(経済産業省)
このような事情から、転職市場は売り手市場の状況が続いており、今まで以上にシニア層の活用を考える企業が増えてきています。
また、もともと実力次第で転職者を広く受け入れる文化のある外資系企業では、年齢がハンデにならないケースも往々にして存在しています。
一方で、何度応募書類を送っても、何回面接を受けても、不採用通知が届いてしまう残念な求職者は少なくありません。
業種・職種によっては、年齢に応じたポストを用意できないなどの理由も考えられますが、成功者が一定数存在している以上、やはり相応の理由があるものと推察されます。
特に、40代を過ぎると転職活動がうまくいかないと感じている人は多く、年齢での門前払い・書類選考段階での不採用など、苦戦しているケースも多いようです。
そこで、この記事では、シニア層の転職にスポットを当て、シニア層の転職市場・不採用となってしまう理由・転職成功者に共通する点などをご紹介します。
2020年は、新型コロナウイルスの影響もあり、採用を控える企業は少なくありませんでした。
しかし、2019年の段階にさかのぼって有効求人倍率をチェックしてみると、10月の時点で全国平均が1.58倍となっていました。
引用元:職業紹介-都道府県別有効求人倍率(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
これは、転職したい人に対して、およそ1.58件の求人が存在していることを意味します。
また、各種転職サービスが算出した転職求人倍率を見てみると、中には2.5倍を超えるケースも見られます。
もちろん、転職を成功させるには、年齢だけでなくスキルや経験・職種なども無視できませんが、これらのファクターがうまくマッチングすれば、誰にでも転職のチャンスはあると言えます。
その一方で、ミドル層・シニア層の転職は、すべての企業・すべての職種で歓迎されているとは限りません。
仮に、役職者候補として採用を決定したとしても、現在働いている社員の中には「どうして自分が役職に就けず、外部から候補者が採用されるんだ」と斜に構える人物もいるはずです。
そういった人材を惹きつけるものを持っていないと、なかなか新しい環境で才能を花開かせるのは難しいでしょう。
企業の側も、採用者へのケア・サポートが不十分だと、せっかく内定通知を送った人材が離れてしまうかもしれないリスクを抱えています。
各社が40代・50代の採用を本格化させようと試みても、採用した人材は自社では「新入社員」なわけですから、やはり20代を採用したケースとは異なる教育・マネジメントが必要です。
オンボーディングなど、中途採用者に対する教育を丁寧に行う仕組みを用意している会社もありますが、入社初日から即戦力扱いしている会社はまだまだ多いはずです。
まとめると、企業の側はミドル・シニア層の採用枠を増やしたいと考えているものの、求職者側と企業側のマッチングには課題がある状況です。
求職者は、そのような現状を踏まえた上で、不採用になったケース・採用を決めたケースを分析し、転職に役立てる必要があります。
一定の年齢を超えてから転職を成功させるには、成功例を踏襲する以上に「失敗例を分析して同じ轍を踏まない」ことを心がける必要があります。
キャリア・経験は十分なシニア層の場合、注意すべきことは「年齢相応の考え方が身についているかどうか」です。
この点に問題があると、残念ながらいつまでたっても採用に手は届かないでしょう。
40代・50代が他社に転職する理由を考えた時、誰しも20代の時分で考えたような理由ではないはずですし、採用する企業もそのようにとらえています。
人事担当者は「年齢相応の経験を積んでいてしかるべき」だと考えることから、それをいかに書類・面接でアピールできるかが重要になります。
アピールポイントは十分過ぎるほどあるのに、自分の言葉でうまく伝えられない場合は、転職エージェントなどプロに聞きながら伝え方を訓練すれば、いずれ採用を勝ち取れるでしょう。
しかし、そもそもの思考が年齢と比較して幼い場合は、どんなに努力しても採用にはつながりません。
一例として、志望動機と転職回数について考えてみましょう。
求職者Aは会社都合により複数回の退職を経験しており、家庭の事情から職を離れたこともあります。
一方で、税理士試験に合格した有資格者であり、会計事務所でのキャリアもありますが、なぜか採用に結びつきません。
このようなケースにおいて、求職者Aは転職回数をネックに考えることが多いものですが、問題はそこではありません。
中途採用という以上、企業側も何度かの転職経験があることは想定した上で採用を検討しているわけですから、そもそも転職回数を基準にするのは理にかなっていません。
それでは、企業側が重視するのはどの部分かというと、求職者側の「スタンス」です。
具体的には、なぜ転職したのか・どうして自社に転職しようと思うのか、その背景にある思考を知りたいのです。
転職する理由を明確にした上で、自分を採用するメリットを企業側に伝えられたなら、採否は企業側とのマッチングの問題だけです。
しかし、転職理由が他責的だと、仮に事実であっても企業側は評価しません。
求職者Aが、転職の理由に家庭や会社の都合を持ち出すのは一見まっとうに思えますが、心の襞(ひだ)を読める採用担当者なら「転職は自分のせいではないことをしきりにアピールしている」と解釈するでしょう。
どんな決断も自分の意志で行い、その結果を自分で受け入れる。
そのようなスタンスを踏まえた志望動機の構成・自己アピールができるかどうかが、採否の分かれ目となるのです。
転職に失敗し続けるシニアに共通する特徴があるように、転職を成功させたシニアにも一定の共通点があります。
転職活動にあたり、必ずしもすべてを満たす必要はありませんが、現在の自分が以下にあげた点を満たせていないと感じたら、転職に向けたプランを再検討することをおすすめします。
シニア層が転職時に要求されるのは、職種・業種における十分な実績と、無駄なプライドを持たない柔軟な人間性です。
一定の事業規模で専門性を磨いてきた経験だけでなく、それらを新しい環境で柔軟に解釈して当てはめる能力も問われます。
大手企業で管理職として働いていた経験があると、どうしても過去のキャリアが邪魔をして、謙虚な姿勢を忘れがちです。
こういったポイントを自覚し、「周囲に配慮しつつ提案ができた過去のエピソード」を面接で話せるような人材は、採用する側に安心感を与えられます。
転職にあたり十分なキャリアがあっても、それが転職市場のニーズとマッチしていなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。
例えば「経理職を長年経験しているから、次回の転職も経理職でキャリアアップを目指そう」と考えた場合、どうしても選択肢は限られてしまいます。
しかし、会計事務所や労務事務など、経理職として得たスキルを活かすフィールドは、解釈次第で複数存在しています。
転職を成功させているシニアは、キャリアパスだけを基準にして物事を考えず、様々な可能性を視野に入れた上で転職先を探しているのです。
市場価値の把握について、下の記事「転職市場での市場価値の計り方」もぜひご覧ください。
キャリアが豊富なシニア層の中には、経歴や実績を数多く伝えることに集中してしまい、肝心の「応募企業が自分に何を求めているのか」を踏まえたアピールが抜け落ちてしまう人がいます。
その点、転職を成功させたシニアは、、応募企業が聞きたいことに焦点を当てて書類・アピールを構成しているため、なぜか「聞き上手」という印象を企業側に与えます。
求職者にとって、面接は自分のことを知ってもらう重要な場ですが、一方で企業側の知りたいことを伝える場でもあります。
企業側のニーズを理解して、経験・エピソード・提案などを適宜伝えられる人材であることが、豊富なキャリア・人生経験を持つシニアには求められています。
すべての企業に当てはまる話ではありませんが、日本では労働人口の低下傾向が見られ、それゆえにシニア層の経験値が求められるフィールドも存在しています。
ただ、広大な転職市場の中で、自分がマッチする企業を探し出すためには、転職活動の方法・心持ちを見直す必要に迫られることもあります。
書類選考・面接でキャリアを魅力的にアピールするためには、企業側が欲する経験やスキルを読み取る・聞き取る能力が求められます。
自分のスタンスが認められ、面接にまでたどり着けば、採用のチャンスは年齢に関係なく十分あります。
求人情報にくまなく目を通し、転職エージェントとプランを相談したら、自分が理想とするキャリアにこだわらず、能力を活かせる環境に幅広くアプローチしましょう。
実際の転職理由はどうあれ、前向きに自分のキャリアをとらえてアピールすることが大切です。
自分の行動に責任を持つ姿勢が、良縁を呼び込むはずです。
参考:
2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について(経済産業省)
職業紹介-都道府県別有効求人倍率(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
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